Overseas
THE PRODIGY WARRIOR'S DANCE FEST
2009.09.20 @幕張メッセ
Writer 佐々木 健治
2009年、KITSUNEが放った期待の大型新人、AUTOKRATZ。シンセ使いの巧みさと80’sのムードを備えた、どこかナイーヴで、ロマンティックなメロディが魅力の彼ら。80’s、ニューウェーヴが様々な形で再評価され、2009年のキーワードの一つとなっているが、彼らはそれを90’sのダンス・ミュージックと掛け合わせ、王道のエレクトロへと落とし込んでいる。アルバム『Animal』も発表し、その期待も最高潮に達したタイミングで実現したのが、今回のステージだ。
ステージには、アルバム・ジャケットが拡大されて飾られている以外は、何の装飾もないシンプルなもの。
正直、この日を通して思ったけれど、演出の面でもう少し何かできたんじゃないのかなというところが残念だった。フロアに巨大なミラーボールの一個でも取り付ければいいし、何より、ライティングでもっとやれることはあったはずだ。
話が逸れてしまった。ライヴに話を戻そう。「Always More」でスタート。耳なじみのよいメロディ・ラインに会場が揺れる。
序盤は肝心のシンセの音量が小さく、ビートばかりが目立ってしまい、音作りがうまくいっていない印象だったが、ライヴが進むにつれ、徐々にその武器であるシンセがしっかりと響きだす。
そのメロディ・センスと、流麗でありながらクセもしっかりとあるシンセ音にこそ、彼らのロマンティックな空気感が詰まっていることを実感しながら、安定感のあるビートと、上音の心地よさに、気持ちよくステップを踏む。
ラストはアルバムでもハイライトとも言える「Stay The Same」からPRIMAL SCREAM「Swastika Eyes」のカヴァーという磐石の流れで会場を沸かせて締め。「Swastika Eyes」では、これまで後ろで座っていた人が前方へ駆け出して行く光景も見られた。
原曲に忠実なこのカヴァーで注目を高めたとは言え、やっぱり自分達の曲で締めて欲しかったとも思うが、それでもやはりこのカヴァーの完成度の高さは流石だった。
丁度よい按配のエレクトロに纏め上げるセンスは彼らの魅力でもあると思うのだが、どこか優等生的な感じは否めない。今、これだけ個性的なアーティストが溢れている状況で、バランス感覚に優れた彼等の音のインパクトはどこか薄い。それを乗り越える圧倒的な説得力が出てくれば、さらに面白くなるに違いない。そういう意味では、そのセンスの高さを見せ付けた『Animal』の次の一手が楽しみだ。
- 1
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号