Overseas
MERCURY REV
2009.08.07 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 榎山 朝彦
サイケデリック。60年代の後半から、この言葉は幾度も、ロックンロールをはじめとしたあらゆる音楽と密接に繋がってきた。最近ではMGMT、ANIMAL COLLECTIVEなど、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するバンドの多くが、サイケデリックと形容され、時代を更新しようとしている。
最近になって再評価の気運が高まっている、90年代のサイケデリック・ロックにおいて、MERCURY REVは間違いなく代表格のひとつである。95年に発売されたアルバムのタイトル『See You On The Other Side』 が象徴するように、誰よりも「あちら側」へと突き抜けたサイケデリック・サウンドを生み出したのだ。とはいえ、84年に結成しながら、90年代末にようやく正当な一般的評価を受け始めた歴史があるため、00年代における活動の方が印象的かもしれない。伝説でありながら現役感の薄れない、希有なバンドなのである。
VJのスクリーンをバックに立つ、オリジナル・メンバー3人+2人。キャリアを感じさせずにはいられない確かな演奏に続いて、ヴォーカルのJonathan Donahueが語りかけるように歌い出す。時折、バンドのグルーヴを掬い上げるような仕草を見せるJonathanは、まるでオーケストラを率いる指揮者のようだ。一曲一曲がかなりの長尺揃いなのだが、見ていて飽きないどころか、壮大なシンフォニーを体験しているような興奮が漲ってくる。
中盤に差し掛かって披露されたカヴァーは、NICOの「Evening Of Light」!60年代のニューヨーク、街中のアスファルトから反射した鈍い光を捉えたようなこの曲で、バンドはサイケデリアの深淵にさらなる接近を図る。
VJと演奏のリンクも寸分違わぬ正確さで、コンセプチュアルなステージングが緊張と興奮を高める。クライマックスはラストに披露された新曲「Sence Of Fire」で、高揚感溢れるグルーヴがこれまでの緊張を解き放ち、一気に場内の熱を引き上げた。
宗教的、と表現してためらいを感じないほどのステージ。MERCURY REVは、音楽という宗教の伝道者だった。そのサイケデリック・サウンドに導かれ、新たな道へと歩み出す者は後を絶たないだろう。
- 1
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号