Overseas
65DAYSOFSTATIC
2009.08.07 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 榎山 朝彦
イギリスはシェフィールドからやって来た、インストゥルメンタル・ポスト・ロック・バンド、65DAYSOFSTATIC。耳も張り裂けんばかりのギター・サウンドと、哀しげなピアノの旋律、そして高速ブレイクビーツが一体となって押し寄せる様は、「MOGWAI meets APHEX TWIN」なんて形容もされているらしい。この言葉をそのまま借りるなら、SONIC STAGE初日のコンセプト、思いっきりど真ん中に位置するバンドということになる。さすがのブッキングである。
不気味な声のSEから始まったステージ。「65」という言葉が交じっていたように聴こえたが、気のせいだろうか?けたたましいドラミングとともに爆発する、ハナからテンションMAXの演奏。BPM160は超えようかという、ドラムンベースばりの高速ビートに乗って、ギターもベースも弦を殴りつけるように弾き倒す。そのパワフル極まりないサウンドに、いきなり全身ごと持っていかれた。
実は数年前のSUMMER SONICでも、65DAYSOFSTATICのライヴを観る機会があったのだが、当時はPAとサウンドの折り合いが悪く、轟音が鳴っているのに体で感じられない、という歯痒い思いをしたことがある。だが今年は音がクリアーで、その轟音によって創り出される世界観を存分に味わうことができた。
65DAYSOFSTATICのサウンドは、とにかくエモーショナルである。あらゆるエクストリームなサウンドを総動員して、人間の容量からはみ出るほどの感情を導き出そうとしている。それは昨今のポスト・ロック・バンドが表現しようとしているような、微細な心の動きではなく、むしろエモ・バンドに顕著な、切なさのバロメーターが振り切れるような感情に近い。65DAYSOFSTATICが特異なのは、その感情を、ヴォーカルという表現方法を用いずに導き出そうとしているところだ。どんな絶叫もかき消されるほどの轟音が、声にならない感情を音像化してくれるのだ。
感情の波に突き動かされるように、激しく体を動かす人達を続出させた、圧倒のライヴ。ラストに披露していた、「Radio Protector」は名演だった。
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