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INTERVIEW

Japanese

トゲナシトゲアリ

2024年08月号掲載

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Member:理名(井芹 仁菜/Vo) 夕莉(河原木 桃香/Gt) 朱李(ルパ/Ba)

Interviewer:宮﨑 大樹
©東映アニメーション

東映アニメーション×agehasprings×ユニバーサル ミュージック、3社合同の大型プロジェクトとして発足したTVアニメ"ガールズバンドクライ"。最先端の映像で表現された極めてエモーショナルなアニメのストーリーや、シーン屈指の難度を誇りつつ聴き手の胸を刺す楽曲と、全方面での高品質なクリエイティヴで話題沸騰中の存在だ。そんな本作の劇中に登場するガールズ・バンド"トゲナシトゲアリ"の声優も務めるメンバーによって構成された同名のリアル・バンドが、2ndアルバムを引っ提げ本誌インタビューに初登場。バンドの成り立ちから音楽性、アルバムについて等、たっぷりと訊いた。

-Skream!初登場です。トゲナシトゲアリのことを知らない読者へ向けて、バンドのことを教えていただけますか。

理名:トゲナシトゲアリは、川崎を舞台にしたアニメ"ガールズバンドクライ"の劇中に登場するガールズ・バンドです。その声優を担当している私たちもリアルでバンド活動をしていて、メンバーの5人は2021年に行われた"Girl's Rock Audition"というオーディションから選出されて活動しています。

-アニメで演じているキャラクターと自分自身で似ている部分はありますか。

夕莉:私が演じている河原木桃香は、サバサバしていて男っぽいというか、頼れる先輩的なキャラクターなんです。なので、最初にキャラデザと設定を見たときには、見た目はめちゃくちゃ好きだったんですけど、"ちょっと私とは違うかもしれないな"と思って、最初の頃のインタビューでは"共通点はないですね"と言っていました。ただ、演じるなかで頼れる面もありつつ意外とポンコツなところがあることを知って、そういうところにすごく親近感が湧きました。私はリアルのトゲトゲ(トゲナシトゲアリ)の中で最年長なんですけど、ちょっとみんなからナメられているというか......(笑)。

理名&朱李:ナメてない(笑)!

夕莉:(笑)"一番年上だからしっかりしている"というわけではないので、そういうところは実は似ているのかもしれないなと気づきました。

理名:私は今高校2年生で17歳になる年なんですけど、私が演じている井芹仁菜も学校に行っていたら高3なので年齢が近いんです。それに、私は広島から東京に出てきていて、仁菜も熊本から出てきているので、都会が未知というか、"分からないことだらけだ"という感覚はすごく近いものを持っているんじゃないかなと思います。なので、演じるときも都会に出てきた不安は表現しやすかったです。ただ、仁菜は感情を表に出しやすいというか、相手に直接言葉で伝えるタイプなんですけど、私は自分の意見を人前で言うことがものすごく苦手で、人と話すことも得意ではなかったので、そこは正反対な性格でした。それでも、仁菜を演じるなかで自分も以前より意見を言えるようになったので、影響を受けた存在でもあります。

朱李:私が演じているルパはミステリアスというか、ずっと笑顔なんですけど、どこか壁を感じるキャラクターなんです。自分のことを話さないし、"誰に対しても敬語"という不思議なキャラクターで。私はルパほどおとなしくはない性格なので、真逆なのかなと自分では思っていたんですけど、ルパはお酒や喧嘩が絡むとテンションがすごく高くなるので、そういうギャップがあるところは似ていると言われます(笑)。私は最近SNSではっちゃけ始めたら、周りから"ぶっ飛んでいるんじゃないか"と言われ始めていて(笑)。そういうところがルパと近いんじゃないのかと言われるようになりました。

-トゲトゲのキャラクターは、それぞれが異なる悩みや暗い過去を抱えているところが特徴的ですが、そういった部分でも共通というか、共感できる部分はありますか。

夕莉:桃香は、挫折を味わって、夢を諦めて地元に帰ろうとしていたところで仁菜と出会ったんです。私はもともと音楽でプロを目指そうと決めていたわけではなく、趣味でギターをやっていたんですけど、このオーディションでお声掛けいただいたときは大学生で、就活をしていたんですね。そのとき、自分がなりたいものややりたいことでも、周囲に認めてもらえないと実現しないことを痛感していたので、そういう面では現実の難しさを知っている桃香の悩みは自分に刺さりました。それに、桃香は仁菜と出会ったことで"また音楽を始めよう"という気持ちになったんですね。私もこのオーディションに合格して、メンバーのみんなと出会って音楽の道に進んで周囲に認めてもらえたので、桃香にとっての仁菜みたいに、私にとってメンバーと出会えたことが人生が変わるきっかけになりました。そういうところもリンクしているのかなと思います。

理名:仁菜は高校でいじめられて、不登校になって学校をやめたバックグラウンドがあるんです。私も中学のときに学校に対して前向きではなかったというか、マイナスな感情があったタイプでしたし、感じるものや受け取るものに対しての捉え方も似ている部分があって。仁菜が歌うときに感情を露にして歌うように、私も歌に気持ちをぶつけていくタイプなので、私と仁菜はすごく運命的な出会いだったのかなと思います。

朱李:ルパは両親を亡くしたことがわかっているんですけど、詳細はまだ描かれていないんです。

-そうですよね。ルパについては今後どこかで背景が明らかになった際に改めてお話を聞かせてください。アニメの舞台は神奈川県の川崎で、皆さんも実際に川崎でライヴをしていますが、そうなるとやはり"川崎"という街に親近感は湧きますか。

夕莉:湧きますね。アニメでは川崎のいろいろな場所がリアルに描かれているんです。聖地巡礼に行くと、自分たちがそこで暮らしているわけじゃないのに、すごく親近感というか、自分たちもそこにいろいろな思い出があるような気持ちになります。

理名:そうだね。初めて行った場所でも行ったことがあるような感じがしています。

-聖地巡礼では、物語で重要な場所である牛丼の吉野家にも行かれましたか。

理名:はい! メンバー5人で行って、仁菜たちが座っていたところに座って写真を撮ったりしました。

-今では多くのファンも聖地巡礼をしていそうですね。

朱李:そうですね。前に川崎でイベントをやった後に、ファンの方々も川崎の吉野家に聖地巡礼してくれたみたいで、お店に行列ができていたらしいです。

-中指の代わりに小指を立てるジェスチャーが劇中で印象的でしたが、最近"小指を立てたい"と思ったエピソードはありますか。

朱李:なんだろう......暑い!

夕莉:たしかに。暑いから小指は毎日立てたい。

理名:天に向かってこうやって(※小指を立てる)。ほかにはなんだろう、最近は平和に生きてるからなぁ。

夕莉:リアルなトゲトゲはみんな穏やかだから、あんまりバトルとかないんです(笑)。

理名:うん。なるべく穏便に済ませたい(笑)。

-なるべく穏便に済ませたい人なのに、あんなトゲトゲな歌声が出るんですか(笑)。

理名:本当は穏便に済ませたいんですよぉ......(笑)。

-(笑)ここからはトゲトゲの音楽について伺いたいんですが、トゲトゲの音楽の特徴は、改めてどんなものだと思いますか。

理名:一言で言うなら"トゲ"という言葉が相応しいと思います。"トゲナシトゲアリ"というバンド名の通り、トゲで攻撃するだけではなくて、訴え掛ける、叫ぶような感情が歌詞や曲調に出ていて。速いテンポだったり、いろんな楽器がものすごいスピードで速弾きされていたり、連打されていたりと、密度が高い楽曲が多いです。その分、歌も楽器も難度がとても高くて、みんな苦しめられています(笑)。でも、音が詰め込まれている分、聴く人に与えられる情報や感情が大きいんじゃないかなと思います。

-難度は本当に高いですよね。歌では"これを人が歌うの?"と感じさせる、ボカロ曲のようなメロディと言葉の量だと思うんです。理名さんはもともと"歌ってみた"動画でボカロ曲を歌っていたそうですが、それにしても"これを歌うのか"といった衝撃は大きかったのではないでしょうか。

理名:ものすごく大きかったです(笑)。オーディションの最初の課題曲が、私たちのデビュー曲「名もなき何もかも」(2023年7月リリースの1stシングル表題曲)という曲だったんです。この曲をいただいたときに、最初からアカペラで、あの速さで、あの言葉の詰め込まれ方で、あの音程の高さと移動の大変さで、聴いて1秒で"これはマズいんじゃないか"と思いました(笑)。本当に難しかったです。