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INTERVIEW

Japanese

ジュースごくごく倶楽部

2024年07月号掲載

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Member:愛コーラ(Vo) あたし(Key)

Interviewer:山口 哲生

吉本興業所属のお笑い芸人によるバンド、ジュースごくごく倶楽部。堂前タオル(堂前 透/ロングコートダディ)と、辻クラシック(辻 晧平/ニッポンの社長)を中心に結成されたこのバンドは、ポイズン反町(山本プロ野球/シカゴ実業)、ジンジャエール阪本(阪本/マユリカ)、あたし(さすけ/滝音)、愛コーラ(山﨑おしるこ/ムームー大陸)の6人編成。今年3月には、豊洲PITで主催イベント"ジュースお笑い倶楽部~5959祭り24'~"も開催した。7月には"DAIENKAI 2024"への出演や、キュウソネコカミ、THEラブ人間、ヤバイTシャツ屋さんを招いた、"ごっくんロールフェス2024~ヤバイ人間のネコカミ倶楽部~"の開催など、大きなイベントも控えているなか、2ndアルバム『ぎろりエンタイトル』をリリース。ロカビリーやブルースなど、オーセンティックなロックンロールを土台にしたバンド・サウンドはそのままに、よりポップに、パワフルに進化を遂げた1枚になった。作詞作曲もすべてバンドで行い、ガチで作り上げた本作についてはもちろん、バンドの成り立ちも含めて、ヴォーカルの愛コーラとキーボードのあたしに話を訊いた。


副業っていう感じでバンドはしたくない


-愛コーラさんの到着が遅れているのですが、先にあたしさんにいろいろお話をお訊きしていこうと思います。まず、バンドの結成についてですが、堂前タオルさんと辻クラシックさんがオリジナル・メンバーとのことで。

あたし:最初は堂前さん(堂前タオル)が、遊びというか、カラオケとかバッティングセンターに行くぐらいの感じで、"スタジオ入ってみたいな"って言ってたみたいなんですけど、辻さんは最初にそれを聞いたときに、本気でやると思ったらしいです。そのあとにドラム(ポイズン反町)と、当時のヴォーカルが入ってある程度バンドとして形になって、初めてライヴをするっていうときに、あたしはビスケットブラザーズのきんさんとふたりで、お客さんとして観に行ったんです。

-どんなライヴでしたか?

あたし:そのときは、吉本の芸人がやっているバンドって言わずに、名前も伏せていたんで、お客さんはほんまに8人ぐらいしかいなくて。曲も当時はまだオリジナルが1、2曲ぐらいしかなくてあとはカバーで全部で5、6曲ぐらいやったと思うんですけど、おもろいのが新しいなって思いました。"Interesting"じゃなくて"Funny"のほうで。今もそうですけど、特に最初期の頃って音楽のベタをほんまにみんな知らんかったから、1曲やったらMCじゃなくて、ほぼトークみたいな感じでしゃべっていたんです(笑)。

-ははははは(笑)。

あたし:普通、ミュージシャンとかバンドマンって、1曲終わったら"サンキュー!"って言って、次の曲に行ったりするじゃないですか。"ありがとうございます"みたいな感じで、ちょっとだけ盛り下げて次の曲に行く感じやったから、なんなんこれみたいな(笑)。でも、ベタじゃないっていうのがおもろかったですね。

-最初はお客さんだったところから、どう加入されたんです?

あたし:そのライヴを観に行く前に、"ちょっとスタジオに入ってんねん"って話を辻(Gt)さんから聞いてたんですけど、そのときたまたま"さよならドビュッシー"(中山七里)という小説を読んでたんですよ。ピアノの描写がめっちゃあるんですけど、昔ピアノをやっていたので、もう1回やりたいなと思っていて。それで辻さんに、"即戦力としては無理やから、今から1年ぐらい練習してからちょっとだけやってみていい?"って聞いたら、"いや、そんなんええからスタジオ来たらええやん。回りくどいし"と。そこから体験入部みたいな期間が2回ぐらいあって、"入ったらええんちゃう"みたいな感じでしたね。

-あたしさんとしては、小説のエピソードもありつつ、メンバーのみなさんとも仲が良かったし、楽しそうだなと思ったところもあって。

あたし:そうですね。メンバーとは仲が良かったけど、ヴォーカルのジンジャエール阪本とは劇場で会ったときに挨拶するぐらいで、ほぼしゃべったことがなくて。あたしはちゃんと覚えていないんですけど、初めてライヴを観に行ったあと、ほぼしゃべったことないのに"あなたの歌い方はカラオケね!"って言ったらしいんですよ(苦笑)。

-(笑)いきなりのダメ出し。

あたし:"こいつなんなん?"って思ったらしいんですけど、たしかにその当時は辻さんと一番仲が良くて、かわいがってくれていたので、"辻さんがやっているバンド"ぐらいの認識でしたね。ちょっと行ってみたいなっていうぐらいで──

愛コーラ:(※床につきそうなぐらい深々と頭を下げて)おはようございます!! すみません!! ごめんなさい!!

あたし:全然、全然。あとでブチギレるだけやから。

愛コーラ:一番怖いやつ......(苦笑)! すみません......!

あたし:ははははは(笑)。まだ全然、(愛コーラが)入る前の話してた。原始の頃の話。

-後ほど愛コーラさんにもゆっくりお聞きしますね。あたしさんはピアノを弾いていたとのことでしたけど、どれぐらいされていたんですか?

あたし:小学1年から小6までの6年間しかやってなかったですね。ピアノ教室に週1ぐらいで通っていたんですけど、むちゃくちゃ抜けてます。楽譜を見て、"これはド"みたいにゆっくり弾くのはできるけど、そんなパパパッ! と弾けないので、ごくごく(ジュースごくごく倶楽部)の曲と、練習がてらに弾くぐらいの曲しか弾けないです。

-始めたきっかけはご両親に言われてとか?

あたし:そうですね。特に嫌いなわけではなかったですけど、最初は半分やらされた感じでした。両指使えたほうがいいからって、そろばんを習わされるような感じでやってましたけど、強制的に習わされてるわけでもなかったですね。やってみたら? ぐらいの感じでした。

-そして、愛コーラさんが加入されたのが、2022年6月。

あたし:え、もう2年おる?

愛コーラ:"まだ2年"とかですか?

あたし:いやいや(笑)。てことは、バンド自体はもう5年ぐらいやってるのか。

-いただいた資料では2020年4月結成になってますね。

あたし:あたしらは2019年の9月ぐらいからなんとなくやっていたけど、ちゃんとは4月なんですね。で、愛コーラが入ったのが2022年6月か。

-3代目のヴォーカリストになるわけですけど、加入のきっかけは?

愛コーラ:もともとは前のコンビの相方が入っていたんですけど、お休みすることになって。ある日、寝てたら"急遽ちょっと今日のライヴに出てくれへん?"ってあたしさんから電話が掛かってきて、"今日ですか!?"って。昼過ぎぐらいだったんですけど、とりあえず急いで行ったら、"歌詞を見ながらでいいから歌ってくれ"と。

あたし:そうそう。助っ人で来てもらって、iPadかなんか見ながら歌ってたもんな。でも、その次のライヴのときにはもう入ってて。

愛コーラ:"入ってくれ"って辻さんに言われて。

あたし:逆に申し訳ないなと思ったんですよ。助っ人で呼ぶのは失礼やから、"もし愛コーラが嫌じゃなかったら入ってくれへん?"って。

愛コーラ:(当時の)相方が入っていたのもあって、ジュースごくごく倶楽部も好きで応援していたし、ライヴを観に行ったり曲も聴いてたりしたんです。そういう話になるなんて想像もしてなかったんですけど、入らせていただきました。

-最初にあたしさんから電話が来たときってどんな心境だったんですか? 驚きとか嬉しさとか。

愛コーラ:ちょうどその時期に(コンビの)解散とかもあって、いろいろ心配事というか、私も責任も感じていて、全部ヤケクソ状態だったというか。

あたし:ヤケクソ(笑)?

愛コーラ:そのときは相方が空けた仕事には全部私が行っていたので、これも"もちろんやります......!"みたいな感じで。

あたし:じゃあ嬉しさは0で、ヤケクソだけ。

愛コーラ:そうです、そうです。

あたし:それ大丈夫(笑)? ヤケクソから冷静になって、今は大丈夫なの?

愛コーラ:大丈夫です(笑)。今もヤケクソが続いているとかじゃないです。それで2年も続かないです(笑)。電話が来た日はそうだっただけで。

-活動を続けていくなかで楽しくなっていったんですね。

愛コーラ:そうですね。そんなヤケクソ状態だとお客さんにも申し訳ないですし、もちろんごくごくのサウンドも好きで楽しいので。私がどうにかできることはないかって考えてたんですけど、みなさん大先輩でそこまで絡みもなかったので、めちゃくちゃ緊張してましたし、仲良くなるのに2年ぐらいかかりました。

あたし:ほんまにそれぐらいかかったよな。芸歴で言ったら10年ぐらいは空いてるもんな?

愛コーラ:堂前さんと辻さんはそうですね。阪本さんとも7年ぐらい空いてると思います。

-となると、最初は緊張しますよね。

愛コーラ:はい。そこは自分の性格もあるんですけど、

-今はみなさんのことをどう見ていらっしゃいます? バンド・メンバーなのか、それでもやっぱり先輩なのか。

愛コーラ:舞台もそんなに一緒にならないので、バンド・メンバーとして過ごすことが半分を占めているかもしれないです。

あたし:あんまり芸人の先輩っていう感覚じゃないよな?

愛コーラ:そうですね。なんか、変な感じというか。劇場とかで会っても、親戚のお兄ちゃんに会ったみたいな、ちょっと身内感があるというか。嬉しさがありますね。

あたし:仲間みたいになってるかもな、ニュアンスは。

-愛コーラさんは楽しくなっていったとのことでしたけど、バンド全体として、ここまで活動を続けてきて変わったことや、逆に変わっていないものはありますか?

あたし:ほんまに初期の頃から言ってたんですけど、音楽をちゃんとやらなかったら、対バンで一緒になる人とか、他のバンドマンに失礼やから、そこは絶対にちゃんとしようって話してたんですよ。だからそこで揉めたりすることはなかったし、お笑い的に全員ネタ書きなのもあって、みんな家とかで(練習を)ちゃんとやっていて。宿題をちゃんとやる感じというか。例えば、"ここをミスったらサブいからちゃんとせな"みたいなことが、お笑いだけじゃなくて、音楽にもあるんかなって思いますね。ここはちゃんとしなきゃいけないってところを、みんなちゃんと持っているというか。

-なるほど。

あたし:最近よくあるのが、朝イチで"ラヴィット!"があるときは、朝6時台には(TBSに)入らないといけないんですけど、前日の夜中2時ぐらいまでスタジオに入ったりしてるんですよ。それってスケジュール的にはしんどいけど、息抜きになるから全然しんどくないんですよね。堂前さんもよく"ベース触っとかなしんどいわ"って言ってて。だから、ちゃんと仕事としてやってはいるけど、趣味みたいな感覚もあるのかもしれないです。"これがないとしんどいわ"っていう。あと、副業っていう感じでバンドはしたくないともずっと言ってましたね。お笑いもちゃんとするし、バンドもちゃんとやろうっていう。でも、趣味的に息抜きになるのがバンドでもある、みたいな感覚でみんないる気がしますね。

愛コーラ:そうですね。辻さんも言ってました。

-愛コーラさんもそういう感覚あります?

愛コーラ:私は私で、お笑いを軸にしていますけど、絵本を描いたりハンドメイドしたりマルチでいろいろやるのが好きなので、大事な柱の内のひとつという感覚ですね。でも、全部繋がっていて。私もジャケットのイラストを描かせてもらったりしているんですけど、それを見た人が、私個人に仕事を依頼してくれて......みたいな感じで、全部繋がっていてありがたい場所です。

-それぞれが完全に独立しているわけじゃなく、影響し合って、いい方向に進んでいる。

愛コーラ:そうですね。辻さんや堂前さんが主催ライヴを打ったときに呼んでくださるとか、お笑いのほうでも関わりが広がってきて。やっていることはそれぞれ違うんですけど、常にマルチタスク状態みたいな。

あたし:バンドを観て、お笑いを観に来る人もおるもんな?

愛コーラ:いますね。

-いいことですね。ちなみに、愛コーラさんって過去に音楽経験があったりするんですか?

愛コーラ:6~7歳ぐらいから中学3年までエレクトーンをやっていて、小6から高2まで合唱団に入っていました。あと、趣味でベースと、大学でギターをやっていたぐらいですね。

-"ぐらい"というか結構されてますね。

愛コーラ:いや、ギターとかは趣味なので。

あたし:電子琴とかもやってるやん。

愛コーラ:それも趣味で買って、遊びでやっているぐらいです。

-もともと音楽が好きだったんですね。

愛コーラ:そうですね。でも、楽器よりも合唱とか、歌うことのほうが好きでした。

-では、ここからは今回リリースされる『ぎろりエンタイトル』についてお聞きしていこうと思います。2枚目のアルバムになるわけですが、こんな作品にしたいというお話はされていたりしましたか?

あたし:特にしてなかったですけど、前回のアルバム(2023年リリースの『ジュースごくごく倶楽部の1杯目』)を出してから、"ルーツ・ロックをどんどんやっていこう"という話をしていた期間がわりと長かったので、わりかしそういう系が多い気がしますね。

愛コーラ:たしかに。