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INTERVIEW

Japanese

Wisteria

2024年06月号掲載

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Member:ミイ(Vo) 龍星(Gt) コウメ(Ba) リョウ(Dr)

Interviewer:フジジュン

歌詞は全曲、実体験。恥ずかしいけど、共感してもらえたら嬉しい


-では1曲ずつ、楽曲について聞きたいんですが、さっきからお話に出てきている1曲目「スイム」は、初のタッグとなるKAZUKI(LAID BACK OCEAN/ex-JELLY→/Gt)さんのプロデュース曲なんですね。

コウメ:そうなんです。勉強させていただくことがすごく多くて、日々勉強会という感じで。事前に用意したフレーズもあるけど、レコーディング中に"こういうフレーズ入れてみよう"とか、"もっとテンション上げていこう"みたいなアドバイスをくれながら、良いほうに導いてくれましたし、自分たちもアイディアをいろいろ出せたので、等身大の自分たちを出せたところがありました。

龍星:今回、KAZUKIさんを含めた3人のアレンジャーさんにやっていただいたんですが、それぞれ得意な楽器が違うので、"人によってギターの入れ方がこんなに変わるんだ!"って驚きと発見があって。KAZUKIさんはギタリスト目線で、なるべくトラック数を少なくしてガツンといく感じだったし、大島さんは"こんなに重ねていいんだ"ってくらい、すごい数のギターを重ねていったし、いろんな発見がありました。ただ、レコーディングは14時間くらいギターを弾き続けたりして、かなり大変でした(笑)。

-「スイム」ができた経緯についても聞かせてください。

ミイ:「スイム」ができたのは去年の夏だったんですが。真夜中にふと海を見に行ったとき、私は泳げないんですけど、"この海を泳げたらめっちゃいいな"と思って作った曲で。もともとディズニーが好きで、"リトル・マーメイド"が大好きで。小さいときから"リトル・マーメイド"の影響を受けすぎて、嫌なことがあっても"自分では戦えない敵もいるし、しょうがないよな"と思ってきたんですけど、広い海を見ていたら、"「やってみよう!」と思うことぐらいいいかも知れない"って前向きな気持ちになれて。そんな気分を書きたいと思って、「スイム」を書きました。

リョウ:そのあと、ミイちゃんから歌だけのデータが送られてきて。歌詞を見てイメージしたのが、"ものすごくキラキラした景色が眼の前にあるんだけど、心の中にある不安に阻まれて飛び込めない"みたいな気持ちで。目の前に広がるキラキラの景色を表現したいなと思ってピアノのサウンドを入れて、コード感もそうですけど、爽やかな曲を作りたいなと。ミイちゃんの世界観からサウンドを作り込んで、歌と合わせて聴いたときにそれが想像できる曲になったので、すごく嬉しかったですね。今まで人からメロディを貰って、曲を作ることがなかったので。最初はハーフ・テンポでやってみたり、オケを作るのは結構、時間がかかっちゃったりもしたんですけど、そのおかげで自分の中から引き出されたものもあって、この曲ができたことですごく成長できました。

龍星:アレンジは原曲がすごく良かったので、原曲の良さを生かしながら、KAZUKIさんの細かいアイディアも貰って進めていって。"なるほど、ギタリスト目線だと、この曲のギターってこうなるんだ!"みたいな発見がたくさんあったし、今まで自分の中で縛られていた固定観念がまたひとつ消えた感じがして、それは今後も生かしていけると思います。

-そして、コウメさんも大好きな「ハレノヒ」です。

コウメ:はい(笑)。ミイちゃんが歌詞を書いてる段階で、コンセプトが固まっていった曲だと思うんですけど。龍星が原曲を出してくれてアレンジしていって、アレンジャーのGAKUさんが"生スクラッチを入れよう"ってアイディアをくれて、ド肝を抜かれたんです。でもスクラッチが入ったことで、聴いたことのないサウンドになったと思うので、それも込みで楽曲に華が咲いたと感じます。あと、私はとにかくこの曲の歌詞が好きで、遠征先の楽屋でミイちゃんが歌詞を書いてる様子も見てて。いつも以上に赤裸々に書いてるから、"わ~っ!"って叫んでるんですよ(笑)。歌詞ができあがってから、"この部分は実際こういうことがあって"って実体験を教えてくれたんですけど、心の中を覗いたというか、深淵を覗けた気分ですごく嬉しかったし、より好きになりました。

ミイ:この曲はパッと見たら、恋人同士に見える歌詞なんですけど、私の中では家族で起きた出来事で。ちっちゃい頃に家族で出掛けた思い出や、中高生になって一緒に出掛けることが少なくなっても、"一緒にいる時間がすごく楽しいし好きだよ"って気持ちを、親への感謝も込めて書こうと思ったら結構、赤裸々になっちゃいました。

-友達にも話せないようなことを歌詞にするのは勇気がいったと思うんですが、一歩踏み込む覚悟を決めるきっかけはあったんですか?

ミイ:ギリギリまでこの歌詞じゃなくて、抽象的な歌詞だったんですけど、もっと内容を具体的にしたいなと思ったとき、対象を決めてしまおうと思って。"だったら具体的にやるしかない"と思って気合を入れたら、全然違う歌詞になりました。"いつも胸に太陽を"っていうのは、家の中で家族で言い合ってる家訓みたいなもので、それは絶対入れたかったんです。

-では、「ハレノヒ」には音楽的ルーツだけでなく、ミイさんの人柄を作った家族というルーツも込められているんですね。「HELLO ANTIWORLD」はどんな曲になりましたか?

龍星:この曲はとにかく攻めようと思って書いた曲でした。"これはギターの曲だ!"と思ったから、イントロから作ったんですけど、手癖まみれのイントロやギター・ソロを入れて。アレンジはKAZUKIさんから新鮮なアイディアもいただいて、さらに楽曲の伸びしろが広がっていきました。ベーシックは"男のギター! パワー!"って曲なんで、頭空っぽにして暴れてくれたら最高かな? って思います。

ミイ:私は原曲を聴いたときに、"攻めてる曲だな"って感じて。今までのロックな部分とピースフルな要素を合わせて、ライヴでお客さんと一緒に楽しめる曲にしたいと思って作ったんです。"遊び心を大事にしていきたいよね"ってメッセージを入れたかったので、トゲトゲしいことも言ってるけど、みんな感じてることだと思うし、"楽しんだもん勝ちだから、周りなんか気にしないで楽しんじゃおうよ"って気持ちを書きました。

リョウ:この曲はみんな無邪気にやれてるよね(笑)。最初から遊んでいいような雰囲気の曲だったので、かなり素に近い感じでやれて。こういうところで自分の好きな部分を出していきたいなと思って、ぶっつけ本番でバスドラ連打を入れたら曲とマッチして、"これいいじゃん、決定"みたいな感じになったり。好きを詰め込んで形になったので、以前出したEP『NEW FRONTIER』(2021年リリース)とかの音楽性が好きだった人も喜んでくれると思うし、今作で僕らを知る人も、楽器隊にも注目して聴いてほしいです。

-みんなのびのび演奏できるであろう、ライヴも楽しみな曲ですね。続いては初期楽曲を再アレンジ&初音源化した「No way」です。この曲ができたときのことは覚えてますか?

ミイ:この曲は深夜にスタジオ入って、龍星と一緒にメロディを作っていったんだよね?

龍星:そう。僕が"No way"って単語が好きで、"No way!"というフレーズだけ浮かんで、そこから作り始めた曲でした。

コウメ:「No way」は掴みとして、ライヴの序盤に入ることが多くて。"前へ前へ前へ"ってフレーズとか、"go way!"のシンガロングとか、1曲目とかにやったときに"こういうバンドなんだ"って思わせる力があると考えてて、明るくて大好きな曲です。

龍星:みんなで楽しめる部分が多い曲なので、音源になって知ってくれる人が増えて、ライヴでももっといろんな人が一緒に楽しめる曲になると嬉しいです。

-同じくライヴではお馴染みの曲「シグナス」はどんな経緯でできた曲ですか?

ミイ:「シグナス」は龍星が歌詞もガッツリ作ってくれてたんですが、"自分なりに書き換えてもいい?"ってわがまま言って、ガラッと歌詞を書き換えました。

龍星:よく明け方に曲作りをしてるんですけど、つらいこととかやっぱりあって、それを思い出して。そこから逃げ出したいと思ったとき、"何も考えず、海が見える街に行きたいな"ってシンプルに思って書いたんですけど。もっとこうしたいという部分をミイちゃんが汲み取ってくれて、僕も嬉しかったし、すごく満足のいく仕上がりになりました。

-「No way」と「シグナス」は"作曲:Wisteria"になってますが、この頃と現在とでは、曲の作り方も変わってきているんですか?

龍星:最初は一緒に集まって、がむしゃらに作ってたんですけど、現在はお互いの得意なことを理解して、分担して作れているので、曲を作るペースもどんどん早くなってます。

ミイ:作詞は自分で書いたほうが何が言いたいのかわかるし、絶対共感できるから、一番歌いやすくて。"書きたい!"ってわがまま言って、みんなにも相談しながら書かせてもらってるんですけど、今回曲が揃ってみて、連発するワードってあるんだなと思いましたね。私はやっぱり海が好きなんだなってことに気づきました(笑)。

-さっきも話しましたけど、海繋がりで5曲目「シグナス」から1曲目の「スイム」に繋がっているというのは、曲を順番に並べたときに"あれ?"となった?

ミイ:"曲順とタイトルの候補を出させてほしい"って私が考えたんですけど、"絶対に「スイム」と「シグナス」は繋がってたほうがいいよなぁ"という気持ちがあったんです。"だったら、「スイム」から始まって、「シグナス」で終わるってロマンない?"とメンバーが言ってくれて、"それがいい!"って、この曲順になりました。

コウメ:思いついたとき、天才かと思ったよね。"めっちゃロマンあるじゃん!"って(笑)。

-1曲目から5曲目まで繋ぐ、太い芯や軸が1本ある感じもあって。そこにWisteriaがバンドや作品を通して伝えたいこともある気がしました。今作を完成させて見えた課題、次に挑戦したいこともありましたか?

ミイ:よりジャンルの幅を広げていきたいなというのは、いろいろ作ったなかで思いました。

リョウ:今作がバンドの自信に確実になったよね。

龍星:僕は今回ギターを弾きすぎたし、もっと自由でいいんだと思えたんで、ギターを弾かない曲を作ってて(笑)。僕は作曲するだけで、ギターを弾かない曲もいずれやってみたいなと思ってます。

-今作を経て、また想像もしなかったWisteriaの未来が待ってるかも知れないですね。

ミイ:はい。だから、これからどうなるのか? 私たちが一番楽しみなんです!

-そして6月29日吉祥寺SHUFFLEから"「Come Here!」release tour『太陽の道』"も始まります。最後にツアーへの意気込みを聞かせてください。

龍星:最初はなかなか踏み出せないけど、最後の曲では踏み出すどころか空飛んじゃってるんで(笑)。今回のミニ・アルバムで一歩前に進みたいけど、なかなか勇気が出ないって人を"僕だったらやれるんじゃねぇの?"という気持ちにさせられたら嬉しいなと思っています。リリース・ツアーは東名阪ですけど、僕ら東名阪でツアーを回るのが初めてで、僕らも新しいスタートだし、冒険の始まりなので、ミニ・アルバムもツアーも"僕たちと一緒に一歩前に踏み出したらいいじゃん!"ってコンセプトで、"太陽の道"を一緒に踏み出せたらいいなと。

ミイ:私は自分の書く曲は自分を鼓舞する、自分への応援歌が多いんですけど、「No way」に"嫌なことが手を振って待ってる/それでも、そんな明日も越えられそうだ 飛び込め!"って歌詞があって、これは自分というより、周りの人に言いたいと思って作ったフレーズで。"不安なことはあるけど行こう!"って気持ちになってほしいし、寝たら忘れるくらいの日常の小さな不安は"ま、いっか"と思ってほしいし、そのきっかけがWisteriaだったらいいなと思っているんです。"明日笑えるっていうより、今笑ってたらそれでいいんじゃない?"と思って歌っているので、東名阪でいろんな人たちに向けてそれを伝えたいし、Wisteriaの伝えたいことをいろんな場所でいろんな人に聴いてもらって、"ま、いっか"って一緒に笑える毎日を過ごせたらいいなと考えています。