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INTERVIEW

Japanese

cadode

2024年04月号掲載

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Member:eba(Music Producer)

Interviewer:山口 哲生

一生来ないとわかっているけど、やっている。その虚しさとか侘しさみたいなものも、なんかいいんですよね


-ワクワクするところだったら「感嘆符」とか?

まさにです。ワクワク感とか、冒険感とか、好奇心みたいなものをテーマにしたのが「感嘆符」ですね。楽しさとか、そういったものは「旅に立ってまで」だし、虚しさや寂しさは「波止場にて」とか。「波止場にて」は、北海道編を切り取ったんですけど、アイヌの民族楽器でムックリっていうのがあって。そういう土着的な要素を入れたりもしました。

-ムックリはアウトロで結構しっかり聴こえますよね。民族楽器ってすごく耳に残るというか。

そうなんですよ。いい意味で違和感があるというか、あまり予期しない音だったりするので。ああいう楽器は結構好きなんですけど、なかなか使いづらいですよね。例えば劇伴だったら、そこに入れる意味を持たせて入れたりすることもできるけど、あんまり耳に残りすぎてしまうのも良くないので。そこは今回の"自分たちの好きにやっていい"っていうところの強みなのかなと思いますね。

-これも本作に限った話ではないんですが、cadodeの曲ってkoshiさん以外の人の声をよく入れていますよね。子供の声とか、ヴォーカル・チョップしたものとか。声を使うという意図みたいなものはあったりするんですか?

シンプルに好きだからというのもあるんですけど、特に子供の声を使うのは......なんか、子供の声って純粋なんですよね。他意がないというか。笑い声も、絶対に心の底から気持ちが動いて笑っている感じがするし、愛想笑いじゃないというか。特に、まだ言葉をしゃべれないぐらいの子供って感情でしか動いてないし、嘘がないから、いいなと思っちゃう。あと、打ち込みが主体なので、どうしても電子楽器がメインになってくるから、ああいったものが楽器として入ってくると、命が吹き込まれるじゃないけど、有機的なものになっていく感じがあって。それで入れているところも、もしかしたらあるかもしれないです。

-なるほど。「旅に立ってまで」は楽しさを切り取ったとのことでしたけども。

虚しさや寂しさばかりにしてしまうと、「波止場にて」とか「カモレの夏」みたいな、じっくり聴くような曲ばかりになってしまうし、全曲それだとEPとしては成立しない気もするので、ああいう曲を作ろうかなって。ライヴでも盛り上がりそうですし。

-お話にあった通り、ライヴの画がすごく見えますよね。そこは、コラボではあるんだけど、自分たちのライヴという面も含めながら作っていると。

そうですね。セットリストに入れたときにわかりやすいというか。cadodeを始めたばかりの頃は、矢印が自分たちにしか向いていないようなライヴをよくしていたんです。ステージ上にディスプレイを置いているんだけど後ろの人が見えないとか。それはそれで良かったし、いいライヴだったなと思うんですけど、ただこれじゃ伝わらないなと考えたりもして。そこは昔と変わってきたところのひとつかもしれないです。

-歌詞は全曲koshiさんが書かれていますけど、こういうイメージで作った、みたいなことを伝えたりされているんですか?

最初の頃はしてましたけど、最近はもう全然伝えてないです。ちょっと前までは、曲と一緒に画像を渡してたんですけど、今回は"カモレの夏"があるので。曲だけ渡して、そこから読み取ってみたいな感じで、特にオーダーはしてないですね。

-伝えなくなった理由というと?

もう安心して任せられるし、変に言わないほうが僕もびっくりするというか。僕にはない発想が結構出てくるし、そこが面白いんですよ。例えば「波止場にて」とか、めちゃめちゃ渋いタイトルですけど、この発想は僕にはないし、好きだなって。普通は止めると思うんですけどね。"「波止場にて」って演歌か!"みたいな。でも、めちゃくちゃいいなと思うし、僕にはないけどグっとくるようなワードや発想が出てくるので。

-そして、5月8日には渋谷Star loungeにて"カモレの夏 EP 発売企画ライブイベント 『カモレの夏 [追慕譚]』"を開催されますが、どんなライヴになりそうですか?

さっきも言ったような、自分たちだけに矢印が向きすぎていないような、でもちゃんとコアな部分もあるっていうライヴにできたらいいなと思ってます。ちゃんと"カモレの夏"を感じられるんだけど、身体でも音楽を楽しめるライヴにできたらなと思ってます。

-お話にあった"矢印の矛先"以外にも、変化してきている部分ってあったりします?

最初の頃は、誰に何を言われようが100パーセント自分たちの好きなことしか絶対にやらないっていう感覚でやっていて。そこから、やっぱりタイアップが大きかったんですけど、ライヴに来てくれるお客さんがだいぶ増えたときに、人生で初めてライヴに行くのが僕らのライヴだっていう人が結構多かったんですよね。だから、ライヴに行きたいんだけど、ちょっと怖くて行きづらいみたいな意見もあったりして。そういう人たちのことを今まで一切考えてなかったんです。だから、初めてライヴに来た人が、来て良かったなと思えるもの、嫌だったなとか思わないようなライヴをするのも大事だなってちょっと思ったりして。

-なるほど。

それこそさっきのディスプレイの話でいうと、前の人はわかるけど、後ろの人は見えないから、あれってなんなんだろうって、音楽よりもそっちに気が行っちゃうじゃないですか。そうやって純粋に音楽を楽しむことから気を逸らせるようなライヴをたまにしていて。そういうのは、自分たちは気持ちいいんですけど、観ている人がモヤっとしちゃうなと思ったんですよ。だから、もっと純粋に楽しめるようなライヴにしたほうが、トータルでいいんじゃないかって思ったことがきっかけで変わっていきましたね。

-変化はありつつも、自分たちの好きなものをしっかりと作るというのは基礎としてあると思うんですけど。それを踏まえたうえで、今後こういう活動をしてみたい、こういうものを作ってみたいという話を、みなさんでされたりします?

コラボはやっていきたいなと思っています。他者との関わりをもう少し増やしていってもいいのかもなって。cadodeだけではできないものができるし、それをモチベーションにまた曲を作ったりもできるので。やっぱりワクワクするようなことが増えるのは大事なので。

-ちなみに、"青春をやり直そうとするユニット"として、自分たちは青春をやり直せたと思える瞬間があったとしたら、それはどうなったときだと思います?

それはタイムスリップできたときじゃないですかね。だから一生来ないですよ(笑)。一生来ないとわかっているけど、やっているというか。その虚しさとか侘しさみたいなものも、なんかいいんですよね。わかっているんだけどやっているっていう。けど音楽に没頭していると時々本当に戻れる気がしたり、戻れているような感覚に陥ることがあるんですよね。それは音楽をやっているときにしか感じない不思議な感覚だなと思います。

-絶対的に抗えない状況ではあるんだけれども......。

うん。それでもやるっていうのがいいじゃないですか。そういうのって人生において大事な気がする。そういうものって生きていくうえで必要なものではないんだろうけど、それがあるとないとでは、人生の楽しさというか、死ぬときに生きていて良かったなと思える度合いが全然違うと思うので。それをやれているなと思いますね。