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INTERVIEW

Japanese

majiko

 

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前作『世界一幸せなひとりぼっち』(2020年)から約2年、メジャー以降3作目となるフル・アルバム『愛編む』が完成した。エモーショナルで、変幻自在なヴォーカリゼーションで曲を描き、無二の色彩を放つ音楽で広くアジアでもファン・ベースを築くmajiko。その音楽世界は『愛編む』でより進化を遂げて、majikoの等身大でありながら飛び込めば無限に広がる奥行きにまたワクワクが止まらなくなる、ディープで、オルタナティヴな魅力を放つものとなった。まずはリード曲「Princess」から触れてみてほしい。そのポップ性をエキセントリックに磨いた曲を皮切りに、13の曲が心と身体を揺さぶりながら様々な音楽体験をさせてくれる。マジカルで、同時に素朴な温もりも湛えたアルバムだ。

-今年7月に恵比寿ザ・ガーデンホールで1年半ぶりのワンマン[majiko one man Live 2022 "愛わかる" at The Garden Hall]が開催されました。振り返ってみて、久々のワンマン・ライヴはどうでしたか。

すごく楽しかったですね。1年半ぶりということでめちゃくちゃ緊張しましたし、しっかり歌を聴かせられるように努力しようって思ってました。その前の豊洲(豊洲PIT)でのワンマン([majiko ONE MAN LIVE "世界一幸せなひとりぼっち達"])のときはコロナ禍真っ只中だったこともあって、お客さんも緊張状態で。しかも換気もしていたので寒くて、ライヴ中お客さんがどんどんダウンを着ていく様を見ていると、不安もあったんです。それまでライヴをやってきてやっと、ライヴはお客さんと一緒に作っていくものなんだっていう感覚を掴みかけていたけど、コロナ禍になってその感覚がまた失われてしまって。だけど恵比寿では、みんながノってくれたり、不意に漏れてしまう声もあったりして、"良かった、ちゃんと届いてるな。ここには私だけじゃないんだ"って思えたので。

-ライヴのタイトルが"愛わかる"で、今回のアルバム『愛編む』への下地ではないですが、予感させるようなものがありましたが、majikoさん自身アルバムへの構想はどの段階くらいからあったのでしょう。

「白い蝉」が出たあたりからだから、1年くらい前かな。そこからチームで、どんなテーマで、どんなふうに作っていこうかということは軽く話しながら作っていきました。

-そこで大きなテーマになりそうなもの、象徴的だったものというと?

チームで話し合ったときにひとつ共有認識としてあったのは"救い"でした。それはチームの人からだったんですけど、"majikoには救いみたいなものを歌ってほしい"と言ってくださったので、"了解です!"っていう(笑)。大きなテーマでの"救い"だったらありだなと思いましたし、自由に作れたなと思います。

-すぐそばにある日常的な世界から空想的な世界、深い心の世界など描かれるシーンや心情も様々で、また何より音でどんなところにも遊びに行けるような、サウンドの飛躍感がとても面白いアルバムになりましたね。サウンド的にはだいぶ新たなmajiko像にチャレンジしている感じがあります。

ありがとうございます。いろいろとやりましたね。特に「Princess」は、最初は遊びで作ってみましたっていう感じだったんです。アルバムの制作では序盤から中盤のほうでできた曲だったんですけど、それまで、"救い"というものにとらわれすぎてしまって。一度全部リセットをして、救いは踏まえつつも、"こういう曲も作ってみましたけど......みんな嫌いですよね?"って感じで「Princess」を出したんです(笑)。やっぱりチームのみんなは明るい曲が好きだと思うし、暗めの曲はアレルギー反応あるのかなと思っていたんですけど、"めっちゃいいじゃん"ってなって"え、いいんだ!?"って。それで、あれよあれよとリード曲になってしまったんです。

-たしかに「Princess」はこれまでのイメージをぶち壊す感覚でびっくりしました。リード曲が「Princess」にというのはmajikoさんも驚きだったんですか。

これ、ありなんだって自分の中では驚きというか。

-とはいえ、自分がもともと持っていた世界ではあるんですよね。

そうですね。暗い曲は大好きなので、濃厚な一発が出たみたいな。ずっと我慢してきたぶんの一発が出たなっていう曲ができましたね。

-サウンドだけでもワクワクしますが、曲の入り口こそファンタジー、童話的な世界が始まるぞというところから、一転してゴシックでヘヴィな世界へと堕ちていく感覚で。聴いているほうは毒林檎を渡されちゃったようなイメージの曲ですよね。

そう、まさに毒林檎ですね。今、筋トレをしてるんですけど──

-唐突に(笑)。

今回のアルバムは筋トレなくしてはできなかったアルバムだなと思っているんです。すべて筋トレしながらアイディアが浮かんだ曲なので。「Princess」も、私が筋トレのときに聴きたい曲を作ったという感じの曲でもあるので。

-この音の感じを聴く限りだとだいぶいじめ抜くような筋トレですね。

そうですね(笑)。重たいものを上げるときとかに最高だなって思いました。

-筋トレをしていて最初に浮かんだのって、「Princess」ではどういうところだったんですか。

何かが明確に浮かぶというよりは、こんなアレンジをしてみようとか、こんな音を入れてみようとか、そういうものの気がします。抽象的な何かやニュアンスみたいなものが筋トレをしていると湧いてくるんですよ。

-それぞれの曲が筋トレと結びついているんですね。

切っても切れない関係ですね。今のマインドも筋トレのおかげというか。抗不安薬じゃないですけど、俯瞰で自分を見つめることができる儀式みたいなものがあるので、本当にお世話になりました。

-フィジカルを鍛えることで自分自身を見つめ直す、メンタルを見つめる時間がある。

そういうことですね。元気になるんですよ。

-身体を鍛えようというのは何がきっかけだったんですか。

最初はダイエット感覚だったんですけど、やっていたら元気になるなっていうのがわかって。そこからは元気になるための行為という感じで今も続けてます。もともと幼少期に水泳を習っていて、身体を動かすこと自体は好きだったんです。身体を動かしたい気持ちはあったんですけど、独学だとどうしても筋肉に入っていかなかったので、今はパーソナル・トレーナーをつけて、しっかり筋肉にぶち込んでいく作業をしているんですけど、やっぱり素晴らしいですね──って筋トレの話になっちゃいましたけど(笑)。

-何か自分の生活等々においても理に適っているというのがあるんですね(笑)。

時間の使い方的にも筋トレをやってから何かをするというルーティーンができたので、ありがたいですね。

-まさかそんなヘルシーな環境から、この「Princess」の濃厚な、そしてどこか歪さすらも感じる曲ができていたとは。

たしかに(笑)。なんでできたんだろう。でも、自分の中にたぶんあったものだと思います。好きなものだったので、快便を出させてくれた感じというか。そこに筋トレがあったのかなと。

-何か解放されるものがあった、扉が開いた感じがあったんでしょうね。アレンジ面でこだわりを感じますが、最初のインスピレーションからどう詰めていったんですか。

この曲もそうなんですけど、だいたいアレンジも含めて進めていっちゃうので、出したタイミングではほぼそのままの感じだったんです。リファレンスは何曲もあって、そのいいとこ取りをしながら自分のフィルターから通したっていう感じで。とりあえず筋トレで聴きたい曲という感覚で作っていましたね。

-歌の世界は、ものすごくピュアなものとしても受け取れるし、その究極の愛の形が怖いくらいに歪んだものにも感じる。サウンドと相まって様々に想像をかき立てるものになりました。

こういう世界観は嫌いじゃないので。暗い曲にどんなふうに救いか、そういうものを感じさせようかと思ったときに、狂愛にしてしまおうというのがありました。イメージでは、プリンセスと王子様がいて、それを見ているモブの歌みたいな感じですね。そんな反逆的な曲というか、ひねくれた感じで書いてます。それすらも美しいと定義してしまおうみたいな。これは作っていて楽しかったですね。またこういう曲を作りたいなって思いました。

-これがひとつ突破口になって音楽の世界がまた広がった感覚ですね。しかもアルバムの幕が開けて、まずこの曲が待っているという(笑)。

このジャケからいきなり「Princess」になるっていう(笑)。聴き手をおちょくる感じは好きですね。

-まずはこのアルバムの入り口をどうか味わってほしいという感じですね。次に来る「TENGIC」もサウンド的な面白さが追求されていて、アルバムの冒頭からいろんな場所に飛んでいけるような並びになっています。

「TENGIC」では中華っぽい曲が作ってみたかったんです。なおかつロックっぽい曲もあってもいいんじゃないかなと思ったので、中華とロックを融合して作ってみたんですけど、これはすごく楽しかったですね。メロディだけを聴いたら和メロなんですけど、メロがいいと覚醒して歌詞がわーって書けちゃうんですよね。

-気持ちのいいアンサンブルと抑揚のあるメロディに乗って、どんどん景色が変わっていく感覚で、その風が歌詞にも織り込まれてる。

だからどうやって自分が書いたのか今じゃ思い出せないんです。覚醒状態ってすげぇっていう。風景の見える曲になって良かったです。

-そうやって音が呼ぶものっていうのがあるんですね。

めちゃくちゃありますね。侮れないなって今回はまた勉強になりました。