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INTERVIEW

Japanese

緑黄色社会

2022年02月号掲載

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Member:長屋 晴子(Vo/Gt) 小林 壱誓(Gt) peppe(Key) 穴見 真吾(Ba)

Interviewer:秦 理絵

人生はハッピーエンドだけじゃない。そこに絶望しながらも
自分次第で変えていけるよっていう未来も提示したかったんです


-そういえば、2017年に『Nice To Meet You??』(1stミニ・アルバム)でインタビュー(※2017年1月号掲載)させてもらったときに、長屋さんは"表現者として素直になりたい"って言ってたんですよ。

長屋:へぇ、意外と人間って変わらないんですね(笑)。

-今は素直に歌えるようになってきたと思いますか?

長屋:うーん......当初よりはできてるけど。まだ自分が理想とする素直さには行けてないなと思います。でも、そんな気持ちでいたいっていうのは変わらないんです。「揺れる」は自分の中で出てくるものを恥ずかしがらずに、本当はこれ書いちゃいけないんじゃないかな、みたいなことを怖がらずに出していった感じなんですよ。最初はアルバムに入れるかも決めてなくて。メンバーに聴かせるだけなら、そういう気持ちを吐き出していいかなと思ってるから。そこがないとつらくなっちゃうかもしれないですね。

-話を訊いていると、今はいろいろな場所で緑黄色社会の音楽が求められるようになっていくなかで、いかに自分たちがバンドを楽しみながらやり続けられるか、自分を見失わないでいられるかも、自分たちの中で課題だったのかもしれないですね。

小林:そうですね。僕らの音楽を聴いた人がどう思うかって本当に人それぞれだと思うんですよ。中には"なんだこのイキり陽キャバンドは"みたいに思う人もいて......。

-イキり陽キャバンドですか......。

長屋:よく言われるんですよ、陽キャって。

-ちゃんと聴くと、それだけじゃないってわかると思いますけどね。

小林:まぁ、それもしょうがないと思うんです。僕らは自分たちの音楽を聴いてくれる人の気持ちを救いたいとか、その人生に寄り添いたいと思うし、そういう気持ちで曲も書いてる。聴いてくれる人たちの母数が増えていっても、最初からやることは何も変わってないんですね。さっき長屋が言ってた表現者としての素直さの話もそうですけど、音楽を楽しむとか、そういうところはブレずにいたいなと思ってます。

-なるほど。あと何曲か収録曲について聞かせてください。「アラモードにワルツ」はピアノが優雅ですね。作曲はpeppeさん、作詞は長屋さんという女子コンビの楽曲です。

peppe:バンドを始めてから、それまでやってたクラシックから遠ざかってたんです。それを自分の強みにはしてなかったんですけど、去年ぐらいからやっぱり原点はここだなって思い始めて。クラシックを弾いてるときが一番気持ちいいんですよ。そういうところから、それこそさっきの長屋の「揺れる」みたいな感じで、タイアップと関係なしに自然体でふらっと作った曲です。最近リョクシャカで3拍子をやってなかったのもあって、ワルツっていうワードがふっと浮かんで。ヨーロッパの洋館みたいなイメージですね。もとのタイトルが"ワルツとクマ"だったんです(笑)。

穴見:最初にこの曲を聴いたときはびっくりしました。

小林:やるじゃんって思ったよね(笑)。

穴見:みんなミュージカルも好きだし、このアルバムの雰囲気にも合ってるなっていうのもあったし。何よりも女子ふたりの組み合わせを久しぶりに聴いたなって。

-「恋って」(2017年8月リリースの2ndミニ・アルバム『ADORE』収録曲)とか「Bitter」(2018年リリースの3rdミニ・アルバム『溢れた水の行方』収録曲)とか、このふたりで作った曲はリョクシャカの楽曲の中でも、かわいらしい雰囲気がありましたよね。

小林:この感じは僕ら(小林と穴見)には絶対に出せないですね。

-歌詞もオケのイメージから膨らませていったんですか?

長屋:そうですね。久しぶりに女子ふたりで作るものだから、甘めにしました。でも、ただ甘いだけじゃなくて、毒みのある甘さにしようと思ったんです。どんどんワードが出てくるけど、それを使うと上手く辻褄が合わせられないよねっていう葛藤があって。仕上げるのに時間がかかったんですけど、結果的にすごく気に入った歌詞になりました。

-一方壱誓さんが作詞、真吾さんが作曲を手掛けた「S.T.U.D」のほうは、男子ふたりならではの勢いのあるロック・チューンになったんじゃないかなと思います。

小林:たしかに。言われてみると、対比になってるね。

長屋:クラスの休み時間にさ、ふたり(長屋とpeppe)は絵を描いてて、ふたり(壱誓と真吾は)は"よし、ドッジ(ボール)行くぜ!"みたいな感じじゃない(笑)?

peppe:内と外みたいな感じだよね。

穴見:そういう意味では、「S.T.U.D」のテーマは全員野球なんですよ。全員が一番デカい音を出すための曲とアレンジにするっていう感じなので。まさに外です(笑)。デモの状態でなんとなくホーンも入れていて。

小林:真吾のデモの時点でかなりパンチのあるサウンドだったので、それに合わせていったというか。熱い心を胸に秘めた主人公みたいな感じですね。

-"これまでの未来と/これからの過去は"というフレーズが耳に残りました。普通は逆ですよね。これまでの過去とこれからの未来じゃないですか。

小林:そこは自分が今どこにいるかは重要じゃないっていうのを言いたかったんです。"これまでの未来"は、これまでの自分が見てきた未来っていうものですよね。で、過去はこれから自分がどうするかによって意味が変わっていくものだから。それを"これからの過去"っていう言葉で書きたかったんです。

-"S.T.U.D"というタイトルは、歌詞の中に出てくる4つの人生訓の頭文字なんですよね。これは実際に壱誓さんが言われたものですか?

小林:いや。これは母と息子の歌ではあるんですけど、うちの母はそんないいことは言わないです(笑)。この曲の主人公は故郷を離れて、なんらかのスポーツをやってるんですよ。そのときに母が残してくれた言葉を頭の中で回顧しながら生活してるみたいな、そういう物語です。「たとえたとえ」とも近いんですけど、高校時代にスポーツを頑張ってた友達のことを思い出しながら、今の自分の立場で書いてみた曲ですね。

-アルバムの最後を締めくくる「スクリーンと横顔」は王道のバラードです。これはアルバムの終わりに入れることをイメージして作ったんですか?

長屋:「スクリーンと横顔」は5年ぐらい前に歌詞だけを書いていたんですよ。その歌詞にpeppeがメロディをつけてくれて。いつかやりたいねって言ってたんですけど、なかなか納得のいくかたちに広げられなかったんです。いろいろなアレンジを試しながら、4~5年かけて完成させた曲ですね。仮タイトルが"movie"で映画館をテーマに描いたものだったから、"Actor"っていうアルバムのコンセプトにもマッチしたんです。

-歌詞には"運命さえ変えよう"というフレーズがありますね。

長屋:やっぱり人生はそんなに甘くないと思ってるので。ハッピーエンドだけじゃない。そこに絶望しながらも、自分次第で変えていけるよっていう未来も提示したかったんですよね。最後に前を向いて終われるアルバムにはしたかったんです。

-個人的には"泣かないはずのあなたが泣いていた"というフレーズがとても素敵だなと思いました。長屋さんの描くラヴ・ソングって、相手のことをひとつずつ知っていくことで変化していく自分の気持ちの捉え方が、とても繊細なんですよね。

長屋:あぁ、そんなところも、"キャラクター"っていう今回のアルバムのテーマに繋がっているかもしれないですね。自分を認めるのも大事なんですけど、そこに意固地になりすぎてもいけないと考えているんです。誰かと一緒にいるには相手がどんな人なのかも知るべきだと思うし。それによって変わる自分を楽しむところもあるんですよね。

-それって最初のほうで話した、壱誓さんが作詞を手掛けた「Landscape」の歌詞とも似てますよね。自分の知らない相手のことを知ることで互いに惹かれていく関係性って。

長屋:うんうん。

-ソングライターは違うのに、結局同じことを歌っている。そういうのってメンバー同士ではどんなふうに感じていますか?

長屋:きっと人間ってみんな、ないものねだりなんだなって思いました。だからこそ、それぞれ書く方向性は違っても理解できるんだなって。人類みんな兄弟じゃないですけど(笑)。結局みんな悩むのは同じところなんだなと思いますね。

小林:僕はそんなに達観して見られてはいないんですけど。緑黄色社会として、かれこれ10年ぐらい一緒にいるから、価値観は似てるんだろうなと思います。誰かが何かをポンと言ったときに、ひとりが"それは違う"って言ったら、みんな"違う"ってなるんですよ。言った本人も"違うかな"と思いながら言ってたりするっていう。

peppe:あるね(笑)。

小林:根っこの価値観が似てるから、あんまりズレたものは出てこないのかなって。

長屋:まぁ、価値観がひとりでも違ってたら、そもそもこんなバンド名になってないですからね(笑)。誰か止めてたでしょ? っていう。

穴見:最初にこのバンド名でみんな採用にしたのがヤバかったよね(笑)。

-あはは(笑)。とはいえ、今はよりバンドがひとつになっている感覚もありますか?

長屋:そうですね。今は家族よりも一緒にいる時間が長いですから。