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INTERVIEW

Japanese

鈴木みのり

2021年11月号掲載

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TVアニメ"マクロスΔ"のフレイア・ヴィオン役で声優として活動を開始し、同作内ユニット"ワルキューレ"のエース・ヴォーカルとしても活躍中の声優/シンガー、鈴木みのり。MVで"小坊主"になったり、ライヴでネギを持って歌ったり、YouTuberになったり――明るく活発、ちょっぴりコミカルなイメージのある彼女がリリースする5thシングル『サイハテ』は、シリアスなロック・ナンバーや、自身が作曲した切ない失恋ソングで、鈴木みのりの新たなアーティスト像を見せる作品に仕上がった。

-5thシングル『サイハテ』は、ロックでカッコいい新境地や、大人な表情を見せた作品に仕上がりましたね。その一方で、これまでのアーティスト活動を振り返ると、MVで"小坊主"になったり、ライヴでネギを持って歌ったり、YouTuberになったり、知れば知るほどどんな人なのかわからなくなってきて(笑)。

(笑)アーティストさんって"届けたい想い"と"見られている意識"の両方ある方が多いと思うんですけど、私は"届けたい想い"はもちろんありつつも、"見られている意識"はあんまりないのかなということに最近気づいて。こう見せたいというよりは、自分が思いついたこととか、発案されたものに対して"面白いかも"と後先考えずにやってきた結果が、今なのかなと思っていますね。

-いろんなことに飛びついてみる鈴木さんの原動力や核の部分って、なんなのでしょうね?

奥底にあるのは"表現が楽しい"というところかなと思います。歌を歌うことが楽しいのもあるんですけど、いろんなことをやらせてもらった結果として自分の中でやって良かったと思えるのは、どれもその役や曲の登場人物になりきったときなんですよ。

-表現すること自体が好きだから、いろんな表現をやってみているんですね。

そうですね。好きなものは真似したくなったりするので、YouTuberとかは特にそうです(笑)。

-さらに、新たな試みとしてニュー・シングル『サイハテ』のリリースを記念したピアノ・デュオ・カバー企画"Suzuki Minori Covers Collection"がスタートしましたね。こちらは自分で選曲しているんですか?

はい。"このジャンルから選曲しようね"という話まではして、許可をいただける曲ならば自分自身で選んで良しということで、選ばせていただきました。

-最初に公開されたのはAdoの「踊」、その次がCHICA#TETSU(BEYOOOOONDS内ユニット)の「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」ということで、ジャンルの幅が広いですね。

11月12日までに全6回やる予定です。アニソンで"エヴァンゲリオン"の「心よ原始に戻れ」、"プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク"というスマホ・ゲームで自分が演じているキャラ(東雲絵名)がメインで歌う「限りなく灰色へ」のセルフ・カバー、そのあとに松浦亜弥さんの「想いあふれて」を歌って、最後の1曲で締める感じですね。

-選曲の基準は、鈴木さんが歌いたい曲かどうかですか?

そうですね。カバーってリスペクトがあってこそだと思うので、だったら流行ってるかどうかは関係なしに、自分の好きな曲を布教する意味も込めて歌おうかなと(笑)。

-他ジャンルのカバーをしてみて、反響はどうですか?

それぞれのジャンルのファンの方々が聴いてくださっているので、やはりドキドキもするんですけど(笑)、たくさんの人に聴いていただけている実感はありますね。あと、ファンの方に"私、こういう歌も歌うのよ"という新しい示しにもなっている気がして、それはすごくいいことだなぁと。ファンもそうですし、一緒にやってる音楽チームのみなさんにも"鈴木みのりってこんな感じだよね"という枠ができていきそうなときに、このカバーがあることによって可能性を見せられた気がしています。今回リリースする5枚目のシングルの次に向かう、いいエンジンになったと思いますね。

-たしかに鈴木さんって、元気とか活発とか、そういうイメージが定着しつつありますよね。それで言うと、今回のシングルもそのイメージをいい意味で壊すというか、新たな一面を見せる作品だと思います。

そうですね。私が声優として参加している"ワルキューレ"というグループが"マクロスΔ"というアニメ作品の中にあって、そちらも新作劇場版の公開で、盛り上がっている時期なので、そこからソロの曲を聴き直してくれる人もいると思うんです。今回のシングルは、"鈴木みのりはこういうのもやるのよ"という、意外性のある1枚になった気がします。

-CDとしては『上ミノ』(2ndアルバム)以来、約1年ぶりのリリースですけど、このアルバムが今回のシングルの制作に影響を与えた部分はありましたか?

もともと「サイハテ」がアルバム収録曲の候補のひとつだったんですよ。一目惚れというか、なんかキュンとして。でも、曲の並びで『上ミノ』に入れるのであれば別の曲を入れようということになって。"いつか作品として世に発表したい"と強く思っていたところ、TVアニメ"海賊王女"の監督のひとりである中澤一登さんが気に入ってくださったんです。そういう経緯もあるので、『上ミノ』から続いてる曲と言えるかもしれません。

-そうだったんですね。

『上ミノ』にも収録されている「まぼろし」という、「サイハテ」と同じ作家陣(作詞:饗庭 純/作編曲:出羽良彰)の曲があって。出羽良彰さんの楽曲は、自分の名義の曲だとそんなに歌わないジャンルではあるんですけど、ずっと好きだったんです。自分がアーティスト・デビューしたときは、自分がやりたい音楽とお客さんが求めるものは違うだろうということで、自分の意見を前に出しすぎないように意識していた部分もあったんですよ。だけど、「まぼろし」で好きな方とご一緒させていただいたら、その曲の反応がビックリするくらい良くて。"自分で思ういいところや、好きなものをやるのも大切かもしれない"と思いました。あと"『上ミノ』の曲の中で好きな曲はなんですか?"という話になったときに、自分が特に好きだった曲と、お客さんの好きな曲とが一致することもあって。もちろんどの曲も大事なんですけど、私のことを好きでいてくれる方は、自分と同じところにハマるんだと感じて、好きなことに挑戦してもいいのかもしれないという気持ちが強く出ました。

-そういうふうに思えたのは、アーティストとしての大きな一歩ですね。

声優アーティストって、もともと自分がやってきたキャラクターのイメージを出すとか、年齢的にかわいらしい部分を見せる場合も多いんです。それも楽しくはありつつ、そうじゃない部分も許されてきているというか、踏み出せるようになってきた手応えはありますね。

-表現することが好きな鈴木さんからしたら、今は楽しくて仕方ないんじゃないですか?

そうですね。もちろん前から自分の意志は入っているんですけど、より意志を強く、いろんなところに挑戦して、そのたびにどうやって歌おうか悩めることがすごく嬉しいです。

-表題曲「サイハテ」は『上ミノ』のころからあったという話を聞きましたけど、歌詞についてはタイアップ作品のTVアニメ"海賊王女"に沿って書き直しているんですよね?

実は、それがほぼなくて。

-え! だって作品のストーリーにピッタリ合っていませんか?

そうなんですよね。『上ミノ』の制作のときからは1番と2番でBメロの歌詞が逆になったくらいで、内容自体はほぼ変わっていないんです。この曲調ももちろんなんですけど、監督的には歌詞がアニメーションにすごく合っていると言ってくださっていて。そんなことあるんだなぁと(笑)、自分でもビックリしました。

-この曲、最初はバラードなのかと思いきや、ドラマチックに展開をして壮大なロック・サウンドになっていきますよね。最初に聴いたときの印象はどうでした?

情熱的だなと思いました。自分のソロの曲だと、どちらかと言うとポップに歌うか、温かいバラードでほっこり歌うものが多いんです。もっと感情を前に出した、聴いている人が後ずさりするくらいにバーンとぶつかっていく歌も歌いたいと思っていた矢先だったので、この曲に挑戦したい気持ちが強かったですね。

-おっしゃった通り、これまでは大枠で言うとポップスを歌ってきたことが多かったんじゃないかなと思いますが、こういうシリアスなロック・ナンバーを歌ってみてどうでした? こういう曲調も歌声に合っているなと思いましたけど。

もともと自分自身はこういう曲が本当に好きなんです。アニソンももちろん聴くんですけど、ロック・サウンドではバンドもそうですし、私の好きなVOCALOID楽曲の中でもバンド・サウンドの曲が特に好きで。だから、小さいころから歌ってきたジャンルでようやく本領発揮、みたいな感覚はありますね。

-リリースが発表されたタイミングで、"海賊王女の世界観はもちろん、私自身のこだわりも詰め込んだ、アーティストとして新しい一歩を踏み出した一曲です。"とコメントしていましたよね。

タイアップの曲は、監督の意志とか、アニメーションに関わる方の意向が強いので、ここまで自分の好みを入れられることはほぼないんです。でも、この曲は経緯が経緯なだけあって、自分がいいと思ってあたためていた曲というのがまずこだわりのひとつだし、自分が好きな出羽さんの曲と、「まぼろし」のときにまた歌いたいと思っていた饗庭さんの歌詞で、自分的な最強タッグだというのもありますね。

-なるほど。

あと、今までだとディレクターさんからワンワードごとに歌のニュアンスのご指示を細かくいただいて、その感情に沿ってやっていたんですけど、今回はすごく自由に歌わせていただきました。自分で物語の流れを作ることもしましたし、"こういうふうに歌いたい"という想いも込められましたね。あと、今回初めてシングルにアニメ・サイズ("TV EDIT")が入るんですけど、今までは曲の1番がアニメのオープニングやエンディングになることが多かったんです。

-アニメで流れるときはそういうイメージがありますね。

でも今回は最初のほうだけ1番で、あとは曲のラストを使うんです。それで、1曲通してレコーディングしたあとに試しに繋げてみたものを聴いたら、"これだと気持ちがおかしくなっちゃう。流れがおかしい"と感じたんです。だから自分の意志で"アニメ・サイズはアニメ・サイズで歌うので、もう1回録ってください"とお願いして。この曲を聴いた方がどう思うかとか周りを考えつつ、自分のやりたいことも意識して意見を言うようにしたのもこだわりですね。

-たしかにそのアニメ・サイズと、MVが公開されている"1 Chorus Ver."では、だいぶ印象が違いますよね。

"アニサマ(Animelo Summer Live 2021 -COLORS-)"というフェスで初めてフルで歌わせていただいたんですけど、"海賊王女"のPVでアニメ版を聴いてから"アニサマ"で観た人が"全然曲が違くてビックリした"と言っていて。しめしめと思いましたね(笑)。

-その初披露での手応えはどうでした?

私が過去"アニサマ"に出演させていただいたときは、ポップな感じの曲だったんですよ。デビュー曲の「FEELING AROUND」(2018年リリース)とか、「ダメハダメ」(2019年リリース)という自分のシングルの中でもかなりパンチのあるユニークな曲を歌わせていただいて、"アニサマ"だと面白系の人間だったんです(笑)。そのなかで今回は曲を聴かせる方向に持っていったので、お客さんも驚いていましたし、ずっとお世話になっていた"アニサマ"のスタッフさんから"新しい一面を見せてきたね"、"表情も相まって素敵で圧倒されましたよ"と言っていただけて。ライヴではマイナーなところでしか見せてこなかった部分を持ってきて、また新しく知ってもらえた感覚がありましたね。