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INTERVIEW

Japanese

Laura day romance

2021年06月号掲載

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Member:井上 花月(Vo/Tamb) 鈴木 迅(Gt/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

街の匂いやあたたかで懐かしい温度、柔らかな季節の風を感じる芳醇なポップ・アルバム『farewell your town』から1年、Laura day romanceが2作連続の配信シングルをリリース。その第1弾が5月リリースの「fever」、第2弾が6月リリースの「東京の夜」で、今回はオーガニックなバンドの勢いやエネルギーが詰め込まれた曲となった。ジャングリーなギターでスタートし、爽やかなコード感が、憂いある歌詞、言葉から溢れる涙を拭うような「fever」。ビターな味わいに浸ることも悪くないと思える、静かに紡がれる歌心が優しい「東京の夜」。いずれも飾り気なく、しかしキャッチーに心を射抜く力のあるシングルとなった。アルバム以降、制作の日々が続いていたという彼らに、今どのようなモードで曲を作っているのか、話を訊いた。

-1stアルバム『farewell your town』(2020年4月)リリース以降は、バンドとしてはどういう活動をしていたんですか。

鈴木:アルバムをリリースして、その次に自分の頭の中にあったのはEP、シングルよりもちょっとサイズ感のある作品を作りたいなと思っていて、着手していたんですけれども。どうしても長い期間作っているとモードも変化するというか、制作のなかでよりパワーのある曲ができたりもして。それで、そういった曲をまずシングルとして配信リリースしようとシフトしていった感じになりました。

-手応えのある曲ができたわけですね。

鈴木:そうですね。自分の持っているもののなかで、比較的キャッチーな側面がまとまったものができたなっていうのは、メンバーやプロデューサーとも話していて。それでこっちに振り切った感じだったんです。

−1stアルバムを作ってみての自身の手応えなり、アルバムで得たものでそのあとに影響したものはありますか。

鈴木:ありましたね。アルバムは個人的には手応えがあって。自分のやりたいことが、誤解なく伝わった作品だったなというのはすごく感じているんです。それの反動ではないですけど、それとはまたちがったことをやりたいなと思っていたのが、始めに考えていたEPや今回のシングルだったので。シングルはそういうモードの曲と言ってもいいかもしれないですね。

-その誤解なくというのは、メンバー間でのサウンドや意志の共有もうまくいったみたいなこともあるんですか。

鈴木:そういう点というよりは、作り手と受け手の間に誤解がないみたいな感じですね。一個一個コンパクトにしたぶん、過大評価されたり、過小評価されたりというのがなかった作品だなというふうに思います。

-そのなかで、何か思わぬ反響というのはありましたか。

鈴木:それまでの作品で、Laura day romanceはギター・ロックだなと思って見ていた人からは、"こういう作品も作れるんだ?"っていう嬉しい反響というのはあった気がしますね。いろんな楽器を入れたこともあったと思うんですけど、より聴いている人が近い距離に置ける作品、日常のそばに置いてくれる作品という捉え方をされたかなという肌感覚はありました。

-では、今回の「fever」はアルバム以降の制作でいつ頃できてきた曲ですか。

鈴木:結構最近ですね。僕が自分のデモみたいなものを作ってから、それがリリースに至るまでというのは基本的に長いことが多いんですけど、今回の2曲は最近できた曲で。「fever」ができたのは、昨年の12月あたりかなと思います。

-今回の「fever」は歌詞の世界観が不思議ですよね。アルバム『farewell your town』は小説のような、物語的なものだったのに対して、「fever」はイメージや思い浮かんだシーンのコラージュのような感覚で。これは、どういうところからの着想だったんですか。

鈴木:歌詞については自分が思っていたよりも言われることが多いですね(笑)。今までの曲の中で、これほど歌詞が面白いって言われたのが初めてだったんです。自分では何か特別な努力をしたわけではなかったので、おや? っていうのもあったんですけど。でもこの視点が移っていく感じとかは、楽曲のスピード感を向上させる意味でも大事でしたね。Aメロに関しては、視点がパッパッパっと移っていくその感じを描きたいなと思っていたので。それがまとまった曲なのかなって思うんですけど。

-それぞれのシーンはセンチメンタルな雰囲気もあるけれど、曲のトーンがとても爽やかだし、華やかな感覚がある。全体的にもキャッチーさが引き立っていて、新鮮でもありました。

鈴木:そうですね。キャッチー度は高いかもしれないですね。

-しかも、いきなり"月世界旅行の途中"というフレーズから始まりますからね。どこに向かっていくんだろうと引き込まれるものがあります(笑)。

鈴木:たしかに。やっぱり外に出る時間が今までよりも減ったので、わりと内省的なところからスタートしている感じがありますね。今見返してみるとそんな感じがあります。

-メンバーからのリアクションというのはどうだったんでしょう。

鈴木:井上は今までで一番いいって言ってましたね。普段は、井上がメインで歌詞を書く曲もあったりして、ふたりでやりとりをしながら進めることも多いんですけど、今回は──これはなんとなくだったんですけど、僕が2曲とも歌詞とメロディを書いていて。これでいかせてほしいっていうのを強めに主張して通した曲だったんです。

-それくらい鈴木さんの中では、イメージするものがはっきりとあって。それを井上さんに歌ってもらうという感覚だったんですね。

鈴木:そうですね。今回は歌ってもらうという感じでした。井上はいつも、自分の言葉で歌ったほうがいい歌が録れると言っていて、いろんなバランスをとりながらやるんですけど。ちょっと僕の意見を通してもらって......でも、「fever」はその距離感がいい意味で作用している曲かなと思いますね。歌っている人と、歌われていることの距離感が。例えば、変に歌詞に関して思い入れが強くあった場合、エモーショナル過多になってしまうような気がしていて。

-井上さんがストーリーテラーとして伝えていく曲になっていますね。井上さんは、この「fever」を最初に貰ったときに率直にどう感じましたか。

井上:最初は、迅君からデモを貰ったのが冬で、クリスマス・ソングっぽいキラキラした雰囲気を感じたのもあって、雪が似合う曲だなと思って聴いていたんですけど。実際に録音をして聴いてみたら、どんな季節でもいけるというか。パレードみたいな楽しい雰囲気が、この曲の一番の魅力だなと気づきましたね。歌詞については最初、サビの部分をちょっと変えてほしかったんです。でも実際にそのままのものを歌ってみて、できあがった音源を聴いたら、"あぁ、これで良かったんだ"ってなって(笑)。

鈴木:(笑)

井上:いい曲だなって思いましたね。むちゃくちゃしっくりきました。

-音がすべて合わさったときに納得するものがあった。

井上:歌うまでどういう感じになるのかわからなくて。でも歌い終わったあとに、今までにない派手さではないですけど、華やかさがあって良かったなと。

-先ほどのサビの部分っていうのは"君だけは 涙の流し方を間違えないでってベイベー 歌いたい"というフレーズですかね。これ、すごくいいなって思ったんです。どういうところで変えたいと感じたんでしょうか。

井上:私は自分が涙もろいから、最初に歌詞を見たときにいつ泣いたっていいじゃんと思っていたし、これを自分が歌うのがどうなんだろうって思っちゃって。よく泣いているような自分が、そんなことを歌っていいのかっていう気持ちになっちゃったんですけど。でも実際に歌ってみて、そういう意味、解釈ではないなって納得した部分がありました。

-そうだったんですね。イメージ的なところから、このフレーズだけ面と向かって手渡される感じがあるなって思っていて。ここで急に距離感が縮まるのがいいんですよね。

鈴木:たぶん、一番直接的かもしれないですね。今までリリースした曲のフレーズとしては一番強烈というか、強いエモーショナルな部分があるなと思っていますね。サビとそれ以外の部分でギャップを出したいというのはあったので。それがいい具合に出ているのかなっていうのはあります。