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INTERVIEW

Japanese

獅子志司

2021年04月号掲載

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失敗した人とか自分の弱さを認めた人の言葉って響くなと思うんですよね


-あと、歌詞の面で言うと、韻を多用するのも獅子さんの特徴ですね。

自分の中で、歌は全部、韻を踏んだほうがいいぐらいの気持ちなんです。

-新曲の「有夜無夜」では、"僕が僕であるために韻を"って歌ってるぐらいですし。

そうですね。海外の曲を聴くときに歌詞とかは全然見ないんですけど、英語でも、韻を踏んでる歌は聴いてて気持ちいいんですよね。

-じゃあ、韻は日本語ラップの影響ではないんですか?

どちらかと言うと、歌詞はゲームとかアニメの影響が大きいと思います。中二病チックなんですよ(笑)。一番大きいのは漫画ですかね。"HUNTER×HUNTER""NARUTO-ナルト-""ONE PIECE"とか。最近だと、"ヒロアカ(僕のヒーローアカデミア)"ですね。

-まさにジャンプの王道。

もう王道大好きです(笑)。心が折れると、すぐに漫画とかアニメを観るんです。そうすると、また音楽をやりたいって思えるので。

-韻を踏むだけじゃなくて、言葉のトリックみたいな遊びも多いですよね。例えば、「有象無象も踊る夢」では、響きだけ聴くと"CO2"に聞こえるけど、歌詞を見ると"死を痛を"だったりする。

そういうのはめちゃくちゃ好きですね。一歩間違うと、ダジャレなんですけど(笑)。そこはうまく言葉を選んでやってます。

-ここまでは活動初期に自分の音楽を確立するまでの話を聞いてきたわけですけど、そこだけに固執しないところも、獅子志司さんの強みでもあると思っていて。「絶え間なく藍色」のあとに投稿した「うつけ論争」は、挑戦的な曲ですし。

「うつけ論争」は、「絶え間なく藍色」が評価されたことで、同じにしすぎるのも良くないし、あんまり攻めすぎるのも......っていうところで、結構悩んだんですよ。

-銃声をサンプリングしたエッジの効いたアレンジだとか、麻雀の用語を散りばめた歌詞のアイディアというのは、どういうところから生まれたんですか?

この曲のテーマは麻雀と織田信長、あと戦う少年みたいなイメージですね。役満っていう麻雀の最強の役ばっかり歌詞に入ってたり、信長っぽい用語を散りばめていたりして。今思うと、ちょっとトリッキーになりすぎたかなと思う部分もあるんですけど。

-続く「死線」も侍目線のような曲ですし、戦う人の姿というのは獅子さんが惹かれる世界観なのかもしれないですね。

そうですね。さっきのジャンプの話にも通じますけど、バトル系が好きなんですよね。そういう戦っている人たちの曲を書こうとすると、なんとなく自分の境遇とも重なるんですよ。自分の場合は"いい曲を作る"っていう戦いですよね。

-そういう意味で「うつけ論争」とか「死線」は、わりと獅子さんのディープな部分が表現された曲だとすれば、続く「永遠甚だしい」はかなりストレートだなと思いました。

そう、「うつけ論争」とか「死線」は本当に自分の好きなことを詰め込んだんですけど、ちょっと伝わりにくかったかなと思って。煮え切らない感じがあったので、また「絶え間なく藍色」のときぐらいの本気で書こうと思ったのが、「永遠甚だしい」。これは自分の作曲ペースの遅さが許せなくて書いたんです。"明日に意を掲げりゃフラグ"とかは、明日やろうと言ってる段階でアウトってことですよね。すぐ漫画を読んじゃったりして、何もかも後回しにすることで、どんどん落ちていくイメージというか。

-でも、落ちていくだけでは終わらず、そこになんとか抗おうともしてますよね。

そうですね。"受け入れていよう 僕は弱いと/そのため四肢があるのだと"のところ、要するに、弱さを受け入れれば、前に進めるっていうことを言いたかったんです。

-ここは、"四肢"と"獅子"がダブル・ミーニングのようにも感じます。

そうですね。獅子志司っていう名前は、中島 敦さんの"山月記"っていう小説からなんです。その物語では、主人公の李徴が虎になっちゃうんです。李徴は詩人になって、お金を稼ごうとするんですけど、まったく芽が出ずに落ちぶれるんですね。で、詩を諦めて普通の職業に就くんですけど、同じように詩人を目指してた人はどんどん上にいくんですよ。それが耐えられなくて発狂して山奥で虎になっちゃうんです。

-うんうん。

そこに昔の友達だった人がやってきて、"李徴じゃないか?"って気づくんですけど、李徴は、"私が虎になってしまったのは、臆病な自尊心と尊大な羞恥心のせいだ"って言うんですよ。ちっぽけなプライドと恥ずかしさですよね。"詩人になりたい"って言ってたくせに、努力も挑戦することもせずに口だけになってた。それが恥ずかしくて、醜い虎になってしまったよ、みたいな話なんですけど。その虎の言葉に友達は感動して泣いたんです。それを読んで、失敗した人とか自分の弱さを認めた人の言葉って響くなと思ったんですよ。それを伝えたくて、獅子志司という名前にしたんです。

-虎ではなく獅子に?

はい。その主人公の李徴は虎のまま終わるバッドエンドなんですけど、俺は弱さを認めて、それを武器にして、花を咲かせようみたいなイメージで、虎じゃなくて、ライオンかな、みたいな感じですね。しし座でもあるので(笑)。

-で、今回リリースされるアルバムには、ここまで話してくれたような投稿曲に加えて、さらに書き下ろしの新曲も収録されますね。

はい。いつも曲を書くときは、少年をイメージして、そこに自分の気持ちを重ねて書くんですけど、新しく収録した「有夜無夜」とか「半透明」は自分の想い主体で書きました。「半透明」は昔の自分に言ってるような気持ちで、「有夜無夜」は今回のアルバムの曲ができるまでの気持ちですね。いろいろなところに昔の曲の言葉を散りばめて、自分が曲を作るときの気持ちはこうですっていうような曲なんです。恋愛系かな? って思われることも多いんですけど、音楽に対する想いが全部っていう感じですね。

-「有夜無夜」のキーになってる"残酷な歌を歌おう"というのは、どういう意味ですか?

投稿して評価されないと、すごく傷つくんですよね。それでも、やっぱり音楽を出したい、みんなに聴いてもらいたいっていうのがあって、"鈍感のようです"、"鳴り止まぬ喉元"って書いてるように、何回傷んでも音楽が好きだから続けてしまうなっていうことですね。友情とか思い出よりも、音楽をとってしまうっていう。

-あと、リード曲の「喰らいながら」は、抉るような強い言葉が多いですけど、これはどういう少年象をイメージして書いたんですか?

これは作るのに3~4ヶ月ぐらいかかった曲なんです。"フラストレーションをくれ"、"反骨精神をくれ"っていうイメージですね。俺を見下してるやつに対して、いつか俺はすごいところにいくぞっていうロック寄りの精神を書きたくて作った曲です。

-この「喰らいながら」もですけど、今回のアルバムは、何かに抗う主人公の気持ちを代弁するような楽曲を収録しているそうですね。

曲作りのなかで、"抗う"っていう気持ちが強くあるんです。頼む、響いてくれ、響いてくれって思いながら作ってるから、いつも足掻いているという気持ちがあるんです。足掻くっていうのが獅子志司らしさなのかもしれないなと思いますね。

-わかります。曲を作るときには、聴いている人に対しても、"もっと抗っていこう"って鼓舞するような気持ちもありますか?

自分のやりたいことを貫いて、すごいやつになってほしいと思いますね。俺の曲を聴いて戦闘力を上げてほしいんですよね(笑)。

-今回のアルバムは8曲を通して、抗い続けて、足掻き続けるけど、最後の「半透明」だけは、自分を受け入れる曲なんですよね。

そうですね。これは最後に入れたいと思った曲です。「半透明」は10代の自分に向けて書いた曲なんですよ。その頃は、ただただ"俺すげぇやつになるんだぜ"みたいなことを言ってて。その瞬間が一番きれいだなと思ったんですよ。半透明な状態なんですよね。そこから挫折を味わって、全然努力をできないときもあったけど、今いろいろな人に聴いてもらえるようになったことで、ちょっとだけ自分を認められた曲なんです。

-"いつかはきっとわかるだろう"、"これでも良いのだと"のフレーズがいいですよね。弱いところも認めたうえで、今の自分を肯定してる。獅子さんらしい言葉だなと。

ありがとうございます。やっぱり人ってみんなそんなに強くはないと思うんですよね。