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INTERVIEW

Japanese

リリィ、さよなら。

2020年03月号掲載

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Member:ヒロキ(Vo/Pf/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-昨年8月にリリースしたアルバム『最終話までそばにいて』の「Lovin' you?」もそうですけど、ヒロキさんのこういうクールでアダルトな部分って、リスナーから求められているんじゃないかなと思って。

どうなんですかね......? これまでずっと僕はきれいなことを歌ってきたから。

-そうですか? 想いが濃くて、赤裸々な感情を歌っている印象があります。"抜け殻のコンドーム"(『ハッピーエンドで会いましょう』収録の「未送信のラブソング」)という歌詞もありましたし。

あぁ、たしかに(笑)。そう思うと、言いたいことを歌ってきてたか。

-でもたしかに、「首すじごしのアイラブユー」みたいに、相手に吐き捨てるようなことは歌ってきていないかも?

そうですね。どんなにつらい恋愛であっても"ありがとう"とか"ごめんね"で終わらないといけない、そこに帰着しないといけないと思ってたんです。思い出を美化することで自分の良心を守ってきた。でも大人になってわかりました。許せないことは許せない! 「首すじごしのアイラブユー」に一貫して存在するのは"怒り"ですね(笑)。僕が許せない人たちは、きっと僕のことも許せないと思うし、そういうのも人間だなと最近思うんです。人には言えないような気持ちも、音楽だったら伝えられる。「首すじごしのアイラブユー」は"愛"以外の感情の曲も作っていきたいなと思うきっかけにもなりました。

-そして新曲「in my youth」は、中国で活躍する汪苏泷(ワンスーロン)さんという人気シンガー・ソングライターさんの楽曲「那个男孩」のカバー曲です。汪さんがリリィ、さよなら。の「約束」をカバーなさったことがきっかけで今回に至るんですよね。

リスペクトを込めてカバーのお返しをしました。リリィ、さよなら。が中国でちょっと聴かれ始めたから、という理由だけでは中国のトップスターに歌ってもらえないとは思うので。いい曲だと思っていただけたんだろうなと......。本当にありがたいです。リリース音源だと初めて、ほかの方が作った曲を歌わせていただきました。

-ヒロキさんがほかの人のメロディを歌うの、すごく新鮮でした。実はあんまりカバーとかなさってないですもんね。

最近するようになったんです。やっぱり、音楽で初めて仕事をするようになったきっかけが作家だったので、どうしても"自分は曲を書いてなんぼ"、"曲を書かなければならないんだ!"と思ってたんですよね。そこにアイデンティティを感じていたから。

-10代のときに"あなたは歌う人ではない"と言われたりもしていたし。

そうそうそう! だからこそ"めちゃくちゃいい曲を作ってやる!"とか"曲を書かなきゃ!"と思ってたんです。でも......人は変わるものですね。最近は自分以外の人が作った曲を歌いたい(笑)。人の曲を歌うと、いろんな発見や気づきがあるんです。そもそもカラオケ大好きだったし(笑)。だから"自分はソングライターであるべきだ"と意固地になってた部分が、ちょっと丸くなってきたかな。それで今回に至るんですけど、結構な冒険だったなとは思って。

-たしかに。「in my youth」は中国語の歌詞を和訳して、それを日本語詞に変換してるんですよね。

めちゃくちゃ大変でした。でも本当にラッキーなのが、今住んでいるシェアハウスが国際色豊かで、中国語が得意な人の中に中国語の先生がいるんですよ。

-へぇ、なんという奇跡的な巡り合わせ。

首の皮1枚だけがつながっている状態の螺旋階段人生なのに、奇跡的に必ずいいタイミングで助けてくれる人が現れるんです......(笑)。その先生に和訳してもらって、中国語の原文の歌詞の漢字を見ながら日本語の歌詞に落とし込むという作業に難航してしまって。中国語は日本語よりも少ない言葉数に情報を詰め込めるんですよ。

-なるほど。英語と同じですね。

原曲は1番と2番でほぼ同じことが歌われているので、僕はそのストーリーを1番と2番で描いていきました。原曲タイトルの直訳は"that boy"らしいんですけど、中国語の歌詞の意味を読んだあとに感じた"in my youth"をタイトルにしています。カバーとは言っても、最初から自分が書いたんじゃないかと思うくらいリリィ(リリィ、さよなら。)っぽい曲になったなと思ってます。

-うんうん。"泣きじゃくったあと"とか、まさにリリィ、さよなら。ですし。

ほんと、リリィすぐ泣く(笑)! 涙腺が緩い!

-ははは(笑)。予期せぬところから中国で火がついて、それが絶えていないというのも奇跡的だと思います。

まだまだやっとちょっとその火で焦げ目がついた程度ですけど......。上海でワンマンをさせていただいたとき、日本のお客さんとは違う熱があって、それも嬉しくて。また自分が頑張って会いに行けたらなと思います。

-ほんとリリィ、さよなら。は稀有な歩みですよね。クチコミで中国まで楽曲が届くなんて、なかなか味わえる経験じゃないですよ。楽曲提供の機会にも恵まれていますし。

僕的にはもっとスタンダードに生きたいんですけどね......(笑)。でも、とにかく活動を続けたいです。聴いてくれる人がいるところで音楽を発信したい。28歳というこれからの人生を考えるタイミングに差し掛かって、"自分は音楽をやっていきたいのか?"とめちゃくちゃ考えました。

-その話、『愛する以外になかったからさ』のインタビュー(2018年7月号掲載)でも聞きましたけど(笑)。

だいたい毎年1回、年末に病むまでめちゃくちゃ考えます(笑)。でもいい作品ができるたびに音楽をやめられない。やっぱり、音楽活動が好きなんでしょうね。だから続けるためにも"自分の曲はこんな人が聴くんだろうな"と決めつけずに、聴いてくれる人のところに足を運んでいきたい。楽曲提供も素晴らしいアーティストさんが自分ではできない表現で自分の楽曲を歌ってくださるので、ソングライター冥利に尽きるんです。そこからいろんな発見もあるし、自分のアーティスト活動にも生かせるので、作家としての活動も頑張りたいです。勉強ばっかりですね(笑)。

-これだけいろんな経験をしていたら、メジャー・デビューしていても良さそうなのに(笑)。

言わないで(笑)!! メジャー・デビューは死ぬまでにやりたいことのひとつです!

-2月の東阪ライヴも"新しい武器"というタイトルですし、リリィ、さよなら。が攻めの姿勢に入っているのかなと。

周りにいるアーティストの子たちを見ていると、絶えず新しいことを考えていて、新しい人と関わっていて、新しい仕事をしているなと思うんです。新しいところに攻めていくバイタリティのある人が残っていく気がしていて。"これがだめだったから私はだめなんだ"ではなく、どんどん新しいものに挑戦していることが、クリエイティヴに従事している人間にとって大事――仲間たちの背中を見ていてそんなことを思いました。人としてもアーティストとしても、もっと成長して、素晴らしい仲間たちからもリスペクトしてもらえるような存在でいたい。"リリィ、さよなら。はいいんだぞ"と自信を持っていきたいし、ライヴに来たり楽曲を聴いたりしている人たちが"やっぱりリリィ、さよなら。はいい!"と誇りに思ってもらえるような存在でいなきゃ、と最近強く思うんです。

-なんと頼もしい。

普段は弱音ばっかり吐いてウジウジしてるんですけど、ステージに立ったとき、レコーディングするとき、曲を書いているときは"リリィは最高なんだ!"と思いたい。そういう強い気持ちは絶対に伝わるから......。最近は"自分なんて"と思わないようにしてます。まだ芽吹いていない種の水やりを続ける人が最後は笑うんだろうな。ひとつのことを続けていくって大変ですね(苦笑)。もっとたくさんの人に見つけてもらいたいし、これからも歌を歌っていきたいです。