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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2019年09月号掲載

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-ちなみに阿部さんにとっての完璧とは?

すごく細かいです。例えば昨日、マニキュア塗ったんですよ。今日プロモーションだから。昨日の夜はすごい完璧だ! と思ったけど、朝見たら欠けてて。

-わかる(笑)。乾く前に跡がついたり。

そうそう。爪の跡がついちゃうとか。そういうのが前だったらほんと許せなくて。メイクひとつにしても普段やらないことやるから悪いんだけど(笑)、"あー、失敗した!"みたいな。失敗したら全部やり直したくなるし、やり直すとかしてたんですよ。そういう感じなんですけど、もう今は気にしなくなっちゃった。私もそういうふうに気にせずに"ま、いっか、今日は眉毛の形これで"って思えるようになったのって最近なんですけどね。それっていい兆候だなと思ってて。

-わかりすぎます(笑)。"完璧な自分を諦める勇気を"っていうのは、どんな仕事でも日常でも言えることなのかなと思います。でも完璧の代わりに何が手に入るんですかね? 時間とか?

あと、キャラクターじゃない? やっぱ完璧な人ってつまんなくない? と思って。やっぱなんでもできちゃうと愛されないよね。未完だからこそ人間、愛おしかったり魅力的だったりするのかなと思うんで、完璧じゃないことを認めよう! 完璧になろうとして磨くみたいなところに美しさがあるから。ほんとに完璧だったらさ、AIでいいじゃない? ってなっちゃうし、完璧にはなれない、完璧じゃないから自分をちょっと許そうって思えたときに、その人の魅力が出るんじゃないかな。それが得られるものなんじゃないですかね。

-そういう思いに阿部さん自身が至ったのはわりと最近ですか?

最近です。去年の10月に出した「変わりたい唄」(16thシングル表題曲)から、"本当の自分とは"とか、"本当の自分として生きたい"みたいなことを、曲を通しても歌ってますし、ずーっと思ってることなんで。本当の自分になるには本当の自分を自分で認めて、許さないといけない。例えば完璧を目指したメイクをします、完璧に服を決めます、所作も全部完璧にってやってるほうが楽っていうか、鎧着てるようなもんなんで、本当の自分と向き合って、そこを許して認めるっていうのはすごく私にとっては怖い作業だったんですよね。自分に自信がないので。でも、そんななかで曲書いたりツアーやったり、いろんな人と仕事したり話したり、友達も増えたりとか、なんかそういうことが"あ、こんな感じでも、私まだ愛してもらえるんだ?"って確認作業だったというか。今もその途中なんですけど。だから、今日もネイルが剥げていたけど(笑)、全然気分が落ちなかったし、今日は顔がむくんでるなと思っても、全然平気みたいな。それって少し自分という人間に自信が持てた証拠なのかなとちょっと感じました。最近そう思う。

-そういうこともネタにできちゃうところ、ありますね。

そう! いじらせない人になりたくないじゃないですか? そういう人ってイタいじゃん(笑)? 愛せないじゃん? 笑えないね、みたいな(笑)。


ライヴもリミッターが外せるようになってきて。"こうでなければ"っていう怖さがなくなってきてる


-そして今回ものすごく極端な振れ幅のカップリングが入っています。近すぎて怖い! みたいな(笑)。

ははは(笑)。久々にギターと歌、一発録りをしまして。歌とギター分けてずーっとレコーディングしてたんですけど、これはつまびきながら歌うみたいな。悲しい唄なんですよね。

-タイトルまんまですからねぇ。

"この愛は救われない"、ははは(笑)、まんまやん。

-阿部さんがここにいるような録音で聴くのはひとつ醍醐味ですね。ドキュメンタリーっぽいというか。その歌とギターの一発録り自体が表現形態という感じがしました。

嬉しいですね。ここで歌ってるような感じ、そういう歌のほうがいいと思って。ストーリーは、例えば相手に家庭があるとか、相手が帰ったあとに部屋の中で、ひとりでこの主人公の女の子が思ってること――だから何? って曲じゃないんですけどね。ただその瞬間を歌ってる。で、最初に思い浮かんだのは"貴方は何も捨てない"ってフレーズが思い浮かんで、すごくいいフレーズだなと思いました。

-きついけど、これはパンチラインですね。

何も捨てないって、私の中で久々にきたなと思って、この部分を膨らませようと考えて書いたんです。「君の唄(キミノウタ)」のときもベスト(2019年1月リリースの『阿部真央ベスト』)のときも言ってたと思うんですけど、原点回帰していくために自分の過去の曲の書き方とか参考にすると、初期の私の曲って結構こういう歌が多いんですよね。「どうしますか、あなたなら」とかは描いてる気持ちのターンが長いというか。でも、「この愛は救われない」はピンポイントで、この瞬間の感情を歌うみたいな。そういう視点もひとつ醍醐味というか、それも自分らしさだと思うんですね。"これを言ったところで"みたいな(笑)。これもね、"あ、そっか、こういう感じでいいんだ"と。私が普段思ってる、普段アンテナに引っ掛かることをそうだそうだ、こうやってやってた! みたいな感じで書いた曲なので、楽しかったですね。

-"あなたは何も捨てない"というのは悲しいという感覚もあるかもしれないし、でも逆の立場なら自分も何も捨てないかもしれないし、別に嫌悪感じゃない感じがして。

そう。それを言ってるだけなんですよね。だから嫌いとか、でも好きとか、でも私のとこに来てとか、そういうことじゃなくて、淡々と事実を描いてる。でも、淡々としたことがリスナーの立場になったときに救うことってあるなと。だから押しつけるとか、傷を抉りにきてるんだけど、そばにいてささっと言うだけってこともあるじゃないですか。

-曲に残すってそういうことかなと思いました。阿部さんの去年からの"変わっていくこと"に抗わず、自分で乗っていくという思いが、曲調でもいろんなものとして出てきてるのかなと。

そうですね。ちょっとずつ自分の"こうでなければ"っていうのをほどいてる最中なんで、いいんですよね。こういう作品のお話が来たり、2曲目みたいな曲が書けたりって、すごくいいと思う。

-そして野音の大阪("阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~ 大阪 大阪城音楽堂")は終わりました(※取材日は8月上旬)が、いかがでしたか?

めちゃくちゃ楽しかったですね。スパークしてしまいました(笑)。ほんとに久々に、自分でリミッターを結構外せたライヴで。"ライヴってこうでなければ"って感じだったんですけど、ピッチとか序盤からの声のペースとか"どうでもいい!"感じで歌ってて、最初から(笑)。もうそれも、怖くなくなってたんですよね。ライヴしててすごく思ったというか、夏の野音だからそういうふうにできたってところもあるし、"やっぱり私ちょっと変わったんだな"と思って。少なくとも2019年が始まったベストのときのタイミングよりは全然変わったなと。変わる瞬間ってわかんないんだなと思いました。気づいたら変わってる。

-東京(8月31日開催の"阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~ 東京 日比谷野外音楽堂")もありますし、その後は進行も何もかも自分次第という弾き語りツアー(9月28日から11月にかけて開催の"阿部真央弾き語りらいぶ2019")じゃないですか。より自由度が増すのでは?

どうなんだろう。わかんないですけど、この流れでいきたいですね。弾き語りだから、絶対間違えるし、ギター下手だし(笑)。でも、"こうじゃなきゃ"っていうのが外れてきてるから、このまま楽しくいきたいですね。せっかくみんなと近い距離のライヴなので。