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INTERVIEW

Japanese

été

2019年04月号掲載

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Member:オキタユウキ(Gt/Vo) ヤマダナオト(Ba) 小室 響(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-今回の10曲で、描き出すうえでより神経質になったのはどの曲ですか?

オキタ:この中だったら「Apathy」と「ruminator」ですね。特に「ruminator」に関しては抽象的な表現よりも、今までより少し強い言葉を使った意識があって。この曲は自分のこと、自分の葛藤みたいなことを歌った曲なんですけど、その中にどれだけ示唆を含めるか、他者へのディスみたいなものとのバランスの取り方に難しさがありました。

-この曲は作詞、作曲、編曲までオキタさんのクレジットになっていて、よりパーソナルなものということでもありますね。それをメンバーがどんどん解釈して構築していくサウンドになっている。

ヤマダ:これをどう弾こうかというのはなかなか難しかったですね。

オキタ:もともとこのアプローチは僕の中にあって、いつかやろうっていうものだったんです。

ヤマダ:僕と響はこういうメタルコアっぽい感じとか、プログレッシヴなジャンルを通っていなかったので、レコーディングは一番時間がかかったかな。

小室:でもアレンジするのは楽しかったなと思うんです。こういうジャンルのアプローチを自分で叩くならこういうフレーズになるんだろうなとかを考えるのは楽しかった。

-ただジャンルそのもののメタリックさやプログレッシヴさにまとまらず、ギター・ロック的なキャッチーさや仕上がりにもなっていますよね。

オキタ:サビの後半は特にそうですね。そういうところでリード曲に決まったのはありました。

-また、アルバム後半の美しい曲たちについても聞きたいのですが、「泡立つ夜半」などは遊びのあるサウンド・アレンジとポリフォニックな歌がいい。

オキタ:自分が言葉にできないくらい美しいもの、でも言葉にしなきゃ消えてしまうものに対して、自分はなんて言葉足らずなんだという気持ちの曲なんです。

-これは女性的なハイトーンのキーもありますが、コーラスもオキタさんだけがやっているんですか?

オキタ:僕だけです。

ヤマダ:オキタがいっぱいいるんだよね(笑)。

オキタ:もともとベースのイントロを打ち込んでいる時点で、この曲は合唱にしようっていうイメージがあったんですよね。それでメンバーにも投げて。これもアレンジ楽しくなかった?

ヤマダ:どういう展開にしていこうかっていうのが一番楽しかったんですよね。最初はベースのタッピングとオケの展開があっただけだったので、じゃあここはもうちょっと盛り上げていこうとか、セクションを作っていくのが面白かったんですよ。

-また、ラスト曲「シネマ」はジェントルなピアノと歌が印象的で、いい余韻があります。

オキタ:1曲だけバラードを入れようと思っていて、それがこの「シネマ」になったんです。この曲はピアノとコントラバスでやっているんですけど、それが今聴いたら面白いよね。

ヤマダ:本当はもっといろんな音を入れようっていう話もあったんです。でもこのピアノとコントラバスだけのデモが上がったときに、"これでいいんじゃない?"ってなって。いいシンプルさだよね。こういうアレンジをしているのもあまり聴いたことがないし。

オキタ:アルバム全体としてのエンドロール感のある曲かなと思います。もともとピアノと歌の感じがイメージにあって、そこから広げていったんですけど。リズムやギターを入れてみるとか、何をしてもしっくりこなくて。最終的にこの形が、言葉が一番聞こえるなっていうのがあったんですよ。シンプルに誰かに向けて、何かに向けて歌ったのがこの曲だけなんですね。

-これまで、構成や音についても足し算や掛け算が得意だったétéなので、ここまでシンプルなのは新しさであり、また聞こえてくるものが逆に多いような感触もありますね。この曲はサウンドができてから歌詞を書いているんですか?

オキタ:この「シネマ」は歌詞が先でした。ピアノと歌しかなかったので歌詞も書きながらで。いろんなことが始まったり終わったりするなかで、みんなどこか達観した目線っていうのがあると思うんです。それが僕は気に食わなくて。実際晴れやかな顔で何かから去っていったところで、その人自身は続くし、その人が残したものは続いていく。そういう意味で"ここは席を立てないシネマ"っていう言葉を使っていて。"君はいなくなろうが何しようが、その続きを見届ける他はないんだよ"っていうことを言いたくて作った曲です。

-そういうところにも姿勢というか、オキタさんの哲学が出るんですね。

オキタ:でも曲は優しい曲なので。いろんな解釈でみんながこのアルバムを締めてくれたらいいなと思うんです。

-改めてこうして10曲が並んで、フル・アルバムが完成してみてどうですか。

ヤマダ:本当にétéが詰まっているなと思います。自分のプレイ的にも10曲だからこそどう自分らしさを出すか、ここで自分らしさを出せなかったらダメだなというのがあったので。いいベース弾けたなっていうのもあるし、いいバンドだなって思いますね。

小室:たぶん自分が音楽やってない状態でこのバンドを知ったら、このアルバム絶対買うだろうなと思うんです。

オキタ:いい感想じゃん。

小室:全部がかっこいいなって。

-いい感じで3人が内向きで音を作ってると思うんです。外からどう見られるかとかどうこうじゃなくて、自分たちのやりたいものを作り上げていく、内側になるものを掘り起こしていく作業をしているんだなっていうのがわかるアルバムですよね。だからあまり他にない、変わったバンドだなって感じが改めてします。

オキタ:間違いないですね(笑)。

-ツアーなど外に出ていくことも増えたと思いますが、これは自分たちならではだなと感じる面はありますか?

オキタ:全国流通盤を出してレーベルに所属したのがきっかけで、今まで僕たちのことを気になっていた人たちが、僕らを目にする機会が増えたんだなというのは実感としてあって。前作を出して東名阪を回ったんですけど、今回("été全国7都市ツアー「Apacity tour 2019」")は4月から7都市を回ります。行ったことがない土地もあるので、そういう場所で僕たちをどう見せることができるのかなって。新曲たちも出揃ったのですごく楽しみなツアーですね。

-今のところ、外からこう見られている、こういうレッテルを貼られてるなっていう感触はない?

オキタ:今の感触だと表層的な捉えられ方だなというか、"声が変でちょっと喋ったりしてる(※ポエトリー・リーディング)"とか、"音がデカくて"とか。

ヤマダ:本当にそんな感じだよね。

オキタ:でもそこはやっぱり僕らの責任でもあると思うので。そこをどう今回のアルバムで聴かせるかということ然り、ツアーで見せることも然りで、限られた時間でより深いところまで見せられることができるかは、僕らも楽しみなところですね。