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INTERVIEW

Japanese

Base Ball Bear

2019年01月号掲載

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Member:小出 祐介(Vo/Gt) 関根 史織(Ba/Cho) 堀之内 大介(Dr/Cho)

Interviewer:金子 厚武

-そして、今回のテーマ・ソング的な1曲になってるのが「ポラリス」で、これは歌詞も"3"がテーマになっていますね。

小出:執拗に(笑)。この曲のアイディア自体はもともとあって、それを今回ブラッシュアップしたんですけど、若干持て余してたんです。でも、今回レーベルを立ち上げたタイミングだし、メンバー3人が歌うっていうのも最初から考えとしてあったから、全員の顔が見えていいだろうってことで仕上げることにしました。ただ、何を歌うかは難しかったんですよ。アイドル・ソングだったら、メタ的に三角関係の曲とかにしてもいいけど、それバンドでやったら気持ち悪いじゃないですか? じゃあ、もうちょっとジュヴナイル的な内容かなって思って、"ポラリス"っていうワードが出てきて。

-なるほど。

小出:あと今年"アンダー・ザ・シルバーレイク"っていう映画を観て、いろんなカルチャー――映画、音楽、アート、ゲームとかからヒントを得て暗号を解くみたいな、妙な映画なんですけど、監督が異様にいろんなものが好きで、いろんなものに影響を受けて、こういうものを作り上げたってところにはすごくシンパシーを覚えて、自分もバンドでできたらなって思ったんです。で、これはマテリアルクラブで実践したことですけど、固有名詞の持つそのイメージを使いながら全体像を作っていくっていう。ラップっぽい考え方ですけど、リリックとしてはそれをやろうと思って、なおかつ執拗に"3"にこだわろうと。まぁ時間かかりましたね。すっげぇかかりました!

-そんなに(笑)?

小出:ただ"3"に関する言葉を使うだけじゃなくて、ちゃんと3人のパートに意味を持たせたかったんです。僕のパートは落語ネタで、この曲のスケールの話とかもしてて、堀之内さんはとにかく戦隊モノが大好きですから、"ライブマン(超獣戦隊ライブマン)""サンバルカン(太陽戦隊サンバルカン)"。あと気づいてるかわからないけど、"死の星"はゲーム"ロマサガ3(ロマンシング サ・ガ3)"

堀之内:わかりますよ。俺のルーツだもん。さすがだなって思って、LINEで歌詞送られてきて、すぐ反応しましたから。思い出が一緒の人が作ると、"わかってんな、こいつ"って。

小出:"ポラリス"と"THE POLICE"で韻を踏むとかもウケますよね。あと堀之内さんは感情移入して歌うのが難しいと思ったんで、ちゃんと感情移入できることを書いてあげなきゃっていうのもあったんです。

堀之内:どうですか! 俺のこと全部わかってる(笑)。

小出:関根さんのパートは、自分の曲のセルフ・オマージュを初めてやりました。「GIRL OF ARMS」(2006年リリースの1stアルバム『C』収録曲)のメロをそのまま使ってるんです。サビはこれ気づくかな? 映画"ドラえもん のび太と夢幻三剣士"

関根:気づかなかった!

小出:武田鉄矢さんが歌う主題歌の「世界はグー・チョキ・パー」っていう曲をイメージしてみました。で、最後はゲーム"クロノ・トリガー"で終わろうと。

関根:はいはいはい。

小出:3人とも大好きなので。ただ、サビど真ん中のフレーズだから、一応何かに気を遣って"ラララ・トリガー"(笑)。

-ただ"3"ってだけじゃなくて、それぞれのルーツも踏まえての"3"だと。それは時間かかるわ。

小出:めちゃめちゃ時間かかりました! でも、オタク的には知らないものは入れられなくて、こうやって説明できるものじゃないと嫌だったんです。


海外のサウンドの作り方を、こっちの音楽に最適化するって考え方が大事


-もう一度"3人の音"っていうところに話を戻すと、今って"ロック・バンドは何を鳴らすのか?"に自覚的にならざるを得ないタイミングだと思うんですよね。海外ではヒップホップ/ビート・ミュージックが圧倒的に強くて、いろんな才能が交わることでポップを更新していってる。マテリアルクラブはそこに意識的だったと思うけど、じゃあ長年キャリアを培ってきたBase Ball Bearとして、今どんな音を鳴らすのかっていう。

小出:たしかに、バンドのあり方が世界的には難しくなってる一方で、日本のロックでは共通言語的な音や言葉があって、"なんでみんなほっとくとこうなるんだろう?"とずっと疑問に思っているし、ずっとそれに飽き続けてきたんです。今あるものに飽き続けて、次のことを探してきました。今はこうやって音数少なくやってますけど、3人だからって本当に3人の音しか入ってないっていうバンドは、ほとんどいないと思うんですよ。だからこそ、トラックの仕上げ方はむしろ海外を意識できるというか。ちゃんと生々しく、バンドらしく、ダンス・ミュージック的にできたなと。

-"ループから作る"っていう時点である種ダンス・ミュージック的だし、でもそこには肉体性があって、ギターのさじ加減も含め、あくまでバンドであるっていう面白いバランスになってますよね。

小出:2019年の最初にして、あんまり周りにいないサウンドを提示できたんじゃないかなって思いますね。

-堀之内くんは、今ロック・バンドができることをどのように考えていますか?

堀之内:単純にこういうことをやってるのはうちらしかいないと思うんで、憧れられたいなって思うんですけど、ただ佇まいがかっこいいとかだけじゃなくて、楽器とかプレイとかまで掘ってもらえるようなバンドになりたいっていうのは常に思ってて。なんのためにサウンドを作って、その音で録って、そこにどういうEQ(イコライザー)をかけたらこの音になるのか。研究に研究を重ねて出してる音なんだって少しでも伝わったらいいなって。感覚でもいいんですけど、今回特にそこがちゃんと伝わる作品なんじゃないかなと思うんです。録りはほぼ1、2テイクなんですけど、音作りにはとにかく時間をかけたので、そこまで伝わればいいなって。

-関根さんはいかがでしょうか?

関根:どんな時代でも、どういうサウンドが流行っても、ロック・バンドは絶対死なないと思ってて、自分が10代のときにロック・バンドの音を聴いてびっくりした感じを、今一度大事にしたいなって。ナンバーガールを聴いて、すごい音悪くても、エネルギーにびっくりして憧れた感覚とか。あれは絶対死なないし。Base Ball Bearもそういうエネルギーを常に大事にして、それを体現できるバンドでありたいなって。

-今はロック・バンドの勢いが弱い時代かもしれないけど、きっとまた時代は回っていく。ナンバーガールの名前が出たので日本の話を少しすると、ニトロデイみたいな若いバンドも出てきて、彼らも彼らなりに今のドメスティックなロック・バンドの音に飽き飽きして、ああいう音を出してると思うし、そういうバンドはいつの時代にも出てくる。そういうなかでBase Ball Bearが自分たちの音をガツンと鳴らしてくれると、それがひとつの道しるべにもなるかなって。

小出:ニトロデイの新作聴いたら、ギターの音が良くて、今の日本のバンドであそこまで極端な音出してる人いないから、そこは非常に感心して。小室(ぺい/Gt/Vo)君とかはうちのバンドを聴いてくれてて、自分たちに影響を受けた子たちが、そういうマインドでバンドをやってくれるのはすごく嬉しいし、僕らは僕らで次のサウンドというか、"こういう感じどうですか?"って聴いてくれる人にも自分たちにも常に問い続けなくちゃいけないなって思います。

-そうですね。

小出:なんにせよ、ドメスティックのいいところと悪いところってはっきりわかるんですよね、当事者として。僕らはそこで戦ってるわけだから、それを肌で感じつつ、ちゃんと更新していかなくちゃいけない。そのためには、海外からサウンドやアレンジをそのまま持ってくるんじゃなくて、向こうのサウンドの作り方を、こっちの音楽に最適化するって考え方が大事だと思うんですよね。消化してひとつひとつ翻訳するというか。アレンジごと同じようなものを作っちゃうと、もととのいろんな部分での差で勝てないからやらない方がいい。"日本だからこうなった"っていう音楽が面白いと思うし作りたい。リスナーとしてもそういう音楽が聴きたいなと思ってます。