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INTERVIEW

Japanese

吉澤嘉代子

2018年11月号掲載

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-なるほど。そうしてできた『女優姉妹』という物語。アルバム・ジャケットは映画の"ヴァージン・スーサイズ"を意識されたんですか?

"ヴァージン・スーザイズ"や"若草物語"のような、歴史の中にたくさんある姉妹のお話をかなり意識しました。今回のテーマは"女性"という、あまりにも大きな括りなので、どういうジャケットにしようか考えたときに、個性豊かな姉妹が浮かんできたんです。

-どうして女性をテーマにしたのですか?

最初に出したアルバム『箒星図鑑』(2015年リリース)は"少女"がテーマでした。それも含め、これまでに作った3枚のアルバム(『箒星図鑑』、2016年リリースの『東京絶景』、『屋根裏獣』)は、それぞれ構想は持っていたんですが、繋がりがあるわけではないんです。でも、今回は1枚目と繋げて、少女からひと回り成長した大人の女性がテーマになっています。もともとのテーマは、女性の中でも"性"にフォーカスしていたんですけど、いろいろと考えていく過程のなかで、それだけじゃない曲も入ってきたので、やっぱり括りを大きくして"女性"にした感じですね。

-最初に"性"だけをテーマにしようとしたのはなぜですか?

人が生きていくうえで根源にある大切なもの。人生における普遍的なテーマって、いくつかあると思うんですけど、そのなかでも必ず共通して通らなければいけないものだと思ったからです。"性"があるからその先に恋人や友達や家族がいるし、死とも向き合うことになる。


"踏み込ませないし踏み込みたくない"
歌詞という領域に音楽家ではない人物を入れた理由と、そこで得たもの


-"根源"、"普遍"とおっしゃいましたが、それだけ強いテーマを、パーソナルに突き詰めるだけでなく、たなかみさき(イラストレーター)さんとともに「洋梨」の歌詞を作ったことも、すごく興味深いです。

たなかさんは『月曜日戦争』(2017年5月リリースの1stシングル)のジャケットも描いてくれていますし、もともと関係性があって、すごく好きな人なんです。ある日、たなかさんが「残ってる」を歌う動画をInstagramで拝見したんですけど、それがすごく良くて。ありがたいことにいろんな方が歌ってくださっている動画をアップされてたんですけど、私が観た中では(たなかさんが歌っているものが)最高でした。

-それがオファーしたきっかけだったんですか?

そのあと、彼女とスナックに行く機会があって、そのときに歌を聴けました。歌を職業にしていない人だと、どれだけ上手くても、やっぱり人の曲を歌っている感じになることがあると思うんです。でも、たなかさんはそうじゃなくて、まるで自分の曲のようで、とても素敵だった。

-たなかさんのイラストにはどんな印象をお持ちですか?

絵のことは詳しくないので、うまく言えないんですけど、身体の柔らかそうな線とか、いじわるしたくなっちゃうような、泣いちゃいそうな女の子の顔とか、ひと言で言うと、たまらない。絵に添えられている文章もすごく好きで、だから構想から一緒に参加してもらいました。

-それを生業としていない人と歌詞も共作するというのは、相当なことだと思うんです。そこには、絶対的に価値観が共有できているとか、何か確固たる自信があったのでしょうか。

作詞って、自分も人には踏み込ませないし踏み込みたくない領域なんで、本当に珍しいことで。でも不思議と躊躇する気持ちはなかったです。実際一緒に作ってみて、正直たなかさんの方が、何歩も先を行ってました。私が気後れしそうなくらいに。

-そうなんですね。すごい。

私は歌詞を書くことが仕事。だからこそこだわりが強くて、ちょっと気になったらボツにしちゃうんですけど、たなかさんは"これ面白いから、このままいこう"とか、"こことここは揃ってなくてもいいじゃん"って、バツが私より圧倒的に少ない。その柔軟性は学びたいと思いました。人を見て自分を知る、じゃないですけど、本当に貴重な時間でした。

-自分でボツにするのは、具体的にはどういうときなんですか?

整えたがりなんですよね。いい言葉が出てきてはめ込むことより、言葉の相性とか、並び方とか、整合性とかを気にしちゃうんです。あとは言葉の好き嫌いも激しいし。

-私も、歌詞ではないですけど、ものを書く仕事なので、指示語が多いとか同じ助詞が連続して続いてるとか、気にしますけど。

それもすごくわかります。で、いつもいろんな角度からがんじがらめになるんです。苦しい(笑)。

-たなかさんを迎えるきっかけになった「残ってる」は、テレビ番組"関ジャム 完全燃SHOW"でも大きく取り上げられて、吉澤さんの知名度をまたひとつ上げる大きなトピックになりましたが、その後の状況は変わりましたか?

朝帰りの女の子をテーマにした生々しい曲なんで、そういう恋の歌を歌ってる人っていうイメージが強くなったような気はします。でも、決して不本意なわけではなくて、自分の中ですごく上手に書けたと思ってる曲なんで、それが救いになってます。きっと、この先もずっと好きでいられる曲。歌える機会をたくさんいただけてることが嬉しいです。

-この曲、男なんですけどすごくわかるんです。まさに"性"を感じる生々しい部分もそうですけど、これから1日が始まるであろう周りの人の波を、自分だけがゾンビみたいに逆行している光景とか、なのにどこか清々しい気分とか、描写以上のところまでいろいろと思い浮かんで浸れる。それは、ストレートな体験談ではなく、想像から始まる"物語"であることの醍醐味だと思いました。

それはすごく嬉しいです。この曲ができたきっかけは、友達から朝帰りをしてるっぽい女の子がいたっていう話を聞いたこと。私が実際に見た人ではないんです。自分が経験したことではなくても、歌の中では体験できて、自分なりの世界が広がる。