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INTERVIEW

Japanese

女王蜂

2018年05月号掲載

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Member:アヴちゃん(Vo)

Interviewer:TAISHI IWAMI

シングル表題曲"HALF"とカップリングの"FLAT"。女王蜂が新曲に付けたタイトルがすごい。その見た目やパフォーマンスから、"ジェンダー"、"セクシャリティ"、"混血"という言葉が浮かぶこともあるバンドだけに、つい過剰に反応してしまった人も少なくないのではないだろうか。しかし、聴き込んでいくと、思ったとおりの辛辣なメッセージだとも、そんなことに反応すること自体が愚問だとも、もっと大きな何かを包括しているようにも取れる。サウンド面においても、リメイク曲「80's」も含め、ロックやヒップホップ、ディスコに歌謡曲などを奔放にミックスするスタイルは、"ジャンル"で括らせないという意志なのか、ナチュラルに生まれてきたものなのか。その強いインパクトと不思議な魅力を兼ね備えた表現の秘密に迫るべく、フロントマンのアヴちゃんに話を訊いた。

-アルバム『Q』(2017年リリースの5thアルバム)からちょうど1年を経てのリリース。まず『Q』からここまでの1年で感じたことを聞かせていただけますか?

私たちはコンセプトがあってバンドをやっていると思われがちなんですけど、そういうわけではないんです。まず"音楽"があって、それを体現するために自分たちがいる。音楽的にすごくナードなんです。でも、音楽が大好きだって、気取られるようなものだと、小賢しい感じがしてちょっと嫌。だからありのままというか、さりげなくというか、肩肘張らないで表現して"伝わる"ことを大切にしてたんですけど、それが『Q』では特に、実現できた感触があったんです。

-人から思われがちなコンセプトとは?

社会に対して喧嘩を売ってるとか、本当の自分を表現したいとか、そういう感じですかね。

-決してそういうわけではなく、あくまで音楽が先にあって、しかし、そこを無理に特化させるのではなく、自然体で表現してきたことが、ひとつ実った。

そういうことかもしれないです。実際、2013年から1年間、活動を休止する前までは、私たちにコンセプト的なものを感じてライヴに来てくれる人が多かったように感じます。その方たちの多くが、今も私たちを好きでいてくれてることもすごく嬉しいし、今は年齢も性別も関係なく、Skream!に出てくるような他のバンドが好きな方や、バンドの音楽はあまり聴かないけど女王蜂は好きとか、シンプルに音楽が好き、ファッションが好き、いろんな切り口からいろんな方が集まってくださるようになりました。

-女王蜂の作品には、音楽やそれ以外の何かからのリファレンスが、おそらく山のようにある。それらを折衷するセンスが独特で、毎度"なんだこれは?"って、そこは昔も今も、ずっと感じてます。

元ネタをわからなくするのは得意かもしれないです。Perfumeに憧れて女王蜂を始めたと言って、みんな驚いたように。そこは私の能力なのかも。

-ディスコチックなサウンドや、強くてお茶目なパフォーマンス。PerfumeはPerfumeであって他の何者でもない。その真新しさや表現力の高さが、ポップに新たな光を当てた。女王蜂がそこから何かしらのリファレンスを得ていたと、言われてみて納得しました。

最初からバレても別にいいんですけどね。

-ではPerfume以外で、アヴちゃんのルーツにあるものはなんですか?

根底がロックではないんです。私の中でのロックのイメージって、中流階級からの脱却だったり、"敷かれたレールの上なんて歩かねぇぜ"っていう衝動だったり、すべてがそうではないと思うんですけど、イマイチそこにハマれなかった。

-とはいえ"ロック"とカテゴライズされることもわかりますよね?

たしかに、激しい音も使うし焦燥もあるし、グラム・ロックとかファッショナブルなパンク、ファッション・パンクとか、いろいろ言われるのもわからなくはないです。でも、根底は成り上がっていこうとか、傾いていこうとか、ギャングスタじゃないですけど、すごくドメスティックでマッシヴな感じは、ヒップホップのクルー感に近いような気がします。

-では、なぜ"バンド"だったのですか?

自分の中で鳴ってる音楽がそっちだったんです。でもロックという認識ではなくて、破壊力ですね。人間が"いっせーのーせ"で出す音は、音源を再生することとは明らかに違う破壊力や、時間を操る力もある。そういうところですね。

-ここまでの話と私が『Q』や『HALF』から感じたことを合わせると、アヴちゃんがヒップホップに惹かれたのは、ライフスタイルと表現の間にある誤差が少ないことだと思うんです。

煙に巻くというか、後付けでアーティスト性や暗さや激しさを加えて脚色するということを考えたことがなくて、そこと同居しながら生きているというか。でも、自分の生活を普通に歌うだけで、思ってることを歌うだけで、意図的に増幅させたように見られることもあるし、実際にゲインが効いちゃってる。そういう気持ちは『Q』以降、強く持てたのかもしれないです。

-『Q』以降、バンドとしても変化がありましたか?

メンバーとも、今までよりさらに音楽の話をするようになったし、意思疎通も図れるようになりました。メンバーのことが大好きだし、ライヴも良くなってる。良くなることには終わりがないんで、その探求に対してみんな貪欲になってるし、すごく楽しんでるんです。いろんなことを経て、"またここから新たなスタートです"って思ってるし、そういうベタな感情を、はっきり言葉に出せるようになりました。今までだったら思っていても言えなかったから。