Japanese
ReN
2017年07月号掲載
-今回サウンドとして特徴的だなと思ったのが、「Umbrella」(Track.3)とか「Little Green Bird」(Track.6)とかがわかりやすいんですけど、コーラスをかなりこだわってるんじゃないかなと。
それは今回のアルバムでやりたかったことなんですよ。ビートとコーラスとグルーヴは重視したことなんです。曲を作るときはループ・ステーションで音を重ねるライヴを想定しながら作るんですけど、今回は試しに僕以外の声質で作ってみたりもしたんです。もちろんライヴでは僕の声でやるつもりだけど、音源の世界はちょっと変えてもいいのかなと思って。知り合いに頼んで声を出してもらったんですけど、全然自分の理想にならなかったんです。最終的に自分の声だけで重ねなきゃいけないっていうことがわかりました。
-女性っぽい声もありますけど、全部ReNさんの声?
自分の裏声で出してます。アルバムのイメージとしてはゴスペルっぽい、空間を感じられるような世界観にしたかったんです。
-そもそも声だとかコーラスにこだわりたいと思った理由はあるんですか?
アコースティックなものが好きだっていうところが関係してると思うんですけど、あんまりシンセ・パッドとかは使いたくないんです。今回アレンジャーさんと一緒に何曲か使っていくなかで、シンセを使った方がいい曲もあったから、そういう曲も入れてはいるんですけど、それを基本的には声を重ねることで表現したくて。意外と『Lights』(2016年リリースの1stフル・アルバム)のときからそういうこだわりはあったんですけど、そこをもっと際立させるようなイメージで作ってみました。
-あとはギターではなく、ピアノの伴奏を入れてる「Tell Me Why」(Track.5)も印象的でした。
これはライヴでは何回かやってる曲なんですけど、最初はギター1本で作ってたんです。で、みんなで話した結果、ピアノがいいだろうっていう案が出て、浦(清英)さんに弾いてもらいました。僕はピアノのフレーズにはこだわりが......弾けないくせにこだわりだけはあって(笑)、自分のイメージを(浦さんに)伝えたら、その場でぶわーってやってくれて。だから、僕は完全に歌と自分の表現だけに集中できたし、幅広い年齢層の人にも聴いてもらえる曲になったんじゃないかと思います。
-この曲のテーマは大切なものをなくした喪失感みたいなものですよね?
そうですね。でも、誰もが経験したことあるだろうなと思います。なくしたものは人間じゃなかったとしても、いろんなものに喩えられると思うんです。
-夢だとか、理想だとか。
そういった自分が大切にしてたものがなくなってしまったとき、その大切さにあとになって気づくことってよくあるじゃないですか。そういうのを表現したくて、変な色をつけずに、いつも自分がライヴをやるようなスタンスでアレンジしました。この曲は僕にとって、アルバムの中で核になった曲というか、思い入れのある曲なんです。それをピアノっていうかたちで残せたのが自分的には新しいです。
-あと、前作に引き続きアルバムを聴いてて思うのは、「DREAM」(Track.4)とか「PASSION」(Track.9)みたいなダークな感じの曲にReNさんのオリジナリティがありますよね。
どうしてこういう曲ができるのか、自分ではわからないんですけど(笑)。前作で言うと「生きる」みたいな感じで、今回も自分に対して作ったのが「PASSION」なんです。
-わかります。曲の雰囲気が似てますよね。
「生きる」は僕の内面的なところを表現した暗い曲なんですけど、それと同じような心境になることがこの1年間であって。っていうのは、この先自分が2枚目のアルバムを作るときにどういうことを歌っていけばいいのか、どういうシンガー・ソングライターであるべきかを考えたときに、答えがわからなくなったんです。それで、どうして自分は音楽を始めたんだろうなって考えたときに、まず「生きる」を思い出したんです。もっと辿ると、Ed Sheeranの「I See Fire」(2014年リリースの2ndアルバム『X』収録曲)だったなっていうことに気づいて。
-「PASSION」の歌詞には「I See Fire」も出てきますし。
それが僕にとって自分を奮い立たせられる経験だったから、そこをもう1回思い出すために「PASSION」を書いたんです。「生きる」よりも意識したのは、なんとなく走り出したくなるような曲にしたかったってことです。苦しいことがあっても、自分が歩いてるのは自分が信じてやってきた道だから、いまはそこでつまずいてるけど、やっぱり何回でも立ち上がるっていうことを繰り返していこうって。イメージとしては「生きる」なんですけど、あんまりきれいな曲にしたくなかったから、ダーティなロックっぽい感じになりました。
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