Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

Qaijff

2016年12月号掲載

いいね!

Member:森 彩乃(Vo/Pf) 内田 旭彦(Ba/Cho/Prog) 三輪 幸宏(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-ウワモノにチャペルやウィンドチャイムなどが入っているところにJ-POP感がありながら、リズム隊はロックなので、ここまで両極端なアプローチが共存している曲もあまりないなと。ウワモノは結構大胆にいろんな音が入れられている印象です。

森:楽しかったよね。ストリングスを考えたり。

内田:ベース、ドラム、ピアノが基盤になって、他の音はその上に入れていくんですけど。"チューブラーベルとグロッケン、どっちが冬っぽいかな?"と考えたりとか、そういう作業は本当に楽しくていくらでもできる。寝るのも忘れるくらい没頭しちゃいます(笑)。僕のデモの段階ではドラムが普通なんですけど、まぁどうせ(三輪は)普通に叩かないだろうなと思っているので(笑)、楽曲の可能性を広げてくれる人間というか。

三輪:"やってやろう! かますぞ!"というつもりでやっているわけではなくて(笑)。自分が欲しいと思うからこういうドラムを叩くという、本当にシンプルな......。

内田:(三輪は)この3人のなかでは一番ロックンロールな人間だと思うんですよね。自覚がないけどロックしちゃってる、みたいな。

森:テーマが冬の失恋で、女性ヴォーカルで歌の主人公が"私"と言っていても、良い意味でバンドっぽくなるので、甘々にならないからいいかなって。

内田:でもそれも本当に無意識なところだもんね。そうやろうとしているわけじゃなくて、そうなっちゃうんだよなー......。"自分たちらしさ"というものを自分の人間性としても、バンドとしても、メンバー各々にも考えるんですけど、実は無意識のうちにやってることがその人の真の姿なんじゃないかなと。だから"俺らがやるとそうなっちゃうんだよな"ってものが"Qaijffらしい"ということなのかなって。プログラミングをやるようになって、アナログの良さにも改めて気づいたし。今回は全部生ピアノなんですけど、人が弾くからこその素敵さを今作で特に感じた気はしますね。

-そうですね。ピアノのペダルを踏む感触もわかるし、ドラムのフィルが揺れるのも見える音が鳴っていると思いました。

三輪:それアラじゃないですか? 大丈夫ですか(笑)?

-弱気(笑)! アラじゃないです! Track.3「good morning」はピアノとドラムで幕を開けるので、その空気感がしっかりとパッケージングされていると思いました。歌詞も音も聴き手に寄り添うものになっていて。

森:あぁ、部屋で演奏しているような空気感があるかも。私は物事をああだこうだ考えて結論を出したがるタイプなんですけど、そんなときにバンド・メンバーや家族みたいな信頼できる人の根拠のない"大丈夫だよ"というひと言や、ふんわりとした曖昧さに救われることってあるよな、と思っていて。"頑張れよ!"と背中を押すだけじゃなくて、"そんなに頑張らなくても大丈夫だよ"、"なんとかなるから大丈夫だよ"と言ってくれる人――そういう存在がみんなにもいるといいなと思うんですよね。だからそういう曲を作りたくて、歌い方も気をつけたんです。

-語り掛けるようなヴォーカルというか。

森:こういう曲は壮大に歌おうと思えばそう歌えるし、昔の私はラスサビでぐわ~っと歌い上げる! みたいな感じだったんですよ(笑)。でもそういう曲にはしたくなかったから、極力ラスサビまで......本当に歌もピアノもドラムもベースも一定の音量を保って、エモくなりそうなところも気を遣って――

三輪:抑える! というね(笑)。

森:最近曲を作っていて思うんですけど。......ただ自分の気持ちを曲で書く、それで共感を得られることもあるし、自分の気持ちを素直に書くからかっこいい曲ももちろんあるんですけど、最近は"生きているとみんなもこういう経験するだろうな"、"この曲を聴いてもらったときにそれを思い出してくれればいいな"と思っている感じですね。

-この1年で、QaijffはNGだと思っていたことをたくさん"自分たちらしいもの"としてアウトプットできるようになったんですね。

内田:歌い方ひとつにしろ演奏にしろ、曲の世界に対して自分らしさを残しつつアプローチを変えられるようになったし。ミュージシャンとして、音楽を作る人間として成長したのかな、と思います。

三輪:でも僕は、自信はないんです。

森:えー! ここにきて暴露(笑)!?

三輪:(笑)僕の場合、一生自信はつかないと思うんですよ。夢物語だったことがどんどん現実になってきて、越えなければいけない壁もどんどん高くなる。だからこそ成長しようとも思えるし、常日頃できないことはどんどん潰していこうと思っています。

森:現実になることによって、どんどんシビアに物事を考えるようになってきましたね。"出たことのないフェスに出る機会を与えてもらったけど、ここでいいライヴができなければ意味がない"とか。そういうことをリアルに感じる1年でした。やれなかったことがやれるようになったり、選択肢が広がったり、3人で音を出す良さを再確認したり――これからもうちらはそれの繰り返しなんだと思います。自分たちがそのときやりたいことを自分たちらしくやりたいし、やれるような環境にするためには、自分たちらしさがちゃんとあって、もっといろんな人に聴いてもらえるような音楽を作らないといけない。長くやっていきたいですね。

内田:"自分たちがやりたいことをやる"というのは大前提で、音楽に限らず"自分たちのためだけに生きるのはつまらない"とも思っていて。だから自分たちのためだけに音楽をやるのはつまらないと思っているんですよ。大好きな音楽をやらせてもらって、ライヴに来てもらってCDを買ってもらって......この時点でかなりの幸せ者だと思うんです。媚びを売るのではなく、応援してくれる人にとっても自分たちはいいバンドでありたい。周りにいる人も巻き込んで、"みんなで高いところまで行こうぜ!"みたいなノリで、続けていけたらと思いますね。