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INTERVIEW

Japanese

Gauche.

2016年10月号掲載

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Member:水谷 和樹(Key) 兒玉 拓也(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり


ヴォーカルはいないけれど、歌ってやるという気持ちで作ってる


-先ほどスタジオで曲作りをするということでしたが、具体的にはどのように行うんですか?

水谷:ほとんどスタジオでやっていて、その場で出てきたものを採用、採用っていう感じで。みんな、個性が強いんですよ。きっと自分が用意してきたものは、ぶち壊されることがわかっているので。であれば、最初からスタジオで、そのままの形で作り上げていった方が効率がいいんですよね。

-ルーツの部分がお互いに共鳴するのもあって、ちょっとパンクの匂い、アグレッシヴさがあったりするんですかね。感情が出ているというか。

水谷:そこは、指示したりもしていますね。やっぱりヴォーカルがいないので、僕はピアノというポジションで、"ヴォーカルはいないけど歌ってやるぞ"みたいな気持ちでメロディを作るんです。だから、ライヴで歌モノのバンドと一緒になって、インストは僕ら1バンドということが結構あるんですけど、そういう日はすごく燃えるんですよね。ピアノだけど、歌ってやるって。

-そういうエネルギーが迸る感覚やラウドさはあるけれど、同時に繊細な美しさもありますよね。

水谷:そうです。なんでしょうね。さっきパンクとか言いましたけど(笑)。たぶん僕の中ではポップに作ったつもりが、結構悲しいとか、切ないとか、そういうものが自然とできあがってしまうんですね。最近わかったんですけど、それってきっと、僕がもともと持ってるものというか。とびきり明るい曲のつもりで作っても、あれ? ってなるんです(笑)。

兒玉:人間そのものなんでしょうね。和樹さんがギラギラしてたり、太陽とかものすごく明るい感じのTシャツを着始めたらちょっと覚悟しなきゃとか。

水谷:大丈夫、ずっと雨降ってるから。

-たしかに、どちらかといえば湿度高めです。

水谷:(笑)でもそうやって言われても嫌ではないんですよ。そうやって感じてもらえるんだなって、それはそれでいいんです。

-感情が曲を生んでいる、作っているという感じがあるんですか?

水谷:うーん、基本的に家にこもりきりで、ピアノが1台あって。人(他者)は自分を映す鏡だって言うじゃないですか? 僕の場合はそれがピアノなんですよ。弾いているとだんだんと、悲しくなってきて......。

兒玉:それ、東京のせいじゃないですか(笑)! だんだん荒んできたのかも。

-東京に来て、根っこにあった何かが開花しちゃったんでしょうね。

水谷:そうかもしれないです。

兒玉:その前にやっていたエモ・バンドのときって、僕が見ていた限りでは、もっとキラキラしていた気がするんですよ。

水谷:はははは(笑)。

-切なさが、東京に来て深掘りされちゃったんですね。

水谷:そうですね。過去にやっていたバンドは作曲者がいて、どちらかというと、僕はそこにアレンジで加わる形だったので、それに沿うような流れで弾いていたのもありますしね。Gauche.になると、メロディを一番担うのは僕になるので。そういう意味では、さっきの"開花した"って話じゃないですけど、振り絞らないと出てこないものだから。これが自分だったのかな、という気づきにはなりましたけどね。

-曲を作りながら、自分がよりわかってきた。

水谷:そういうことになるのかな?

-曲を提供するときは、また違った距離感なんですか?

兒玉:あぁ、それは僕も聞きたいな。

水谷:違いますね。曲提供は、今はアイドルさんが多いんですけど、基本的に僕が曲を作るときに最初に浮かんでくるのが女性ヴォーカルのメロディなんですよ。今やってるアーティストは全員女性の方ばかりで、今はすごくやりやすいんです。作るときはいつも、声が聞こえてきて作り出すかな。なので、声から作るのと、Gauche.のようにピアノやベース、ドラムから作り出すのとはスタートが違うんですよね。

兒玉:何かをイメージして、それを考えていきながら曲ができるっていうわけではないんですね?

水谷:それはケース・バイ・ケースですね。提供曲では、そういうこともあるので。ただ、いきなりそのときに浮かんできたものを作り出すこともあったり。

-Gauche.では、セッションによる人間的なぶつかり合いで曲が生まれて、あとから物語がついてくるということもあるんですか?

兒玉:今回のアルバムは全部そうですね。フィジカルで作ったというと語弊があるんですけど、長い期間かけてゆっくりゆっくりと育んだというよりは、短期間で、みんなでドンッとやった曲が6曲集まっているので。今回は、そういうところにまとまりや整合性を感じるなと思いますね。

-できあがった曲にはタイトルがつきますよね。曲に言葉を与えられるというか。そのときって、曲のイメージだったり、景色だったりメッセージが浮かぶんですか?

水谷:僕らからのメッセージとしては唯一の言葉なので、基本的には曲のイメージに沿ったものでタイトルをつけたりするんですけど、曲とはまったく関係のないそのときの感情でつけたりもします。インストって、僕が暗い曲だと思って作っても、聴いた人が"明るい曲だったね"と返してくれたりもするし、言葉がないぶん、解釈はなんだっていいと思うんですよ。だから言葉はもちろんついていますし、僕らからのメッセージですけど、聴いている人が違う感じ方であってもOKだと思っています。

-ちなみに、アルバムの1曲目が"絶え間ない僕らの反骨精神"という強いタイトルです。サウンドも、まさにセッションのヴァイブと呼吸感がある、かなりアグレッシヴな曲です。これはどうやって作られたんですか?

水谷:嬉しいですね。これは最初にできた曲なんです(笑)。ヴォーカルがいなくなった直後くらいに、スタジオに入って"よしやってみようか"っていう、ちょっとした初期衝動は含まれているかと思います。

兒玉:でも、曲を作るときにそういう話はしないよね。ここはこういうイメージでっていう、クラシックやインスト音楽あるあるみたいなやり方は、わりと排除してるかもしれない。意図しているわけではないんですけどね。そこが、あまり口で語らない部分のような気がする。

水谷:そうだね。そこは、個々がそれぞれ持っているもので、その場で作り上げていく物語なのかなって思いつつ。自分はメロディ・メーカーとして、方向性だけはそこに向けている感じなんです。