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INTERVIEW

Overseas

MYSTERY JETS

2016年02月号掲載

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Member:Kapil Trivedi(Dr) William Rees(Gt/Key) Blaine Harrison(Vo) Jack Flanagan(Ba)

-(笑)そういうプログレッシヴ・ロックと、モダンなエレクトロニック・ミュージックからの影響の両方があるように感じられるのですが、実際のところはどうですか?

William:(プログレッシヴ・ロックの影響に関しては)イエス、(モダンなエレクトロニック・ミュージックの影響に関しても)イエス、っていうのが答えだよ。君の言う通り、YESやPINK FLOYDみたいな70年代のプログレッシヴ・ロックにも魅力を感じる。その一方で、コンテンポラリーな音楽にも僕らは魅力を感じている。そのふたつを組み合わせることで、何か面白いものが生み出せないかと考えていたんだ。今回のミキシングをやってくれたRich Cooperは、コンテンポラリーな音楽を作っている人でね(※MYSTERY JETSの2010年リリースの3rdアルバム『Serotonin』、『Radlands』にも参加しているが、Lucy Rose、BANKSなど比較的ポップ/エレクトロニック寄りの作品も手掛けている)。そんな彼にやってもらうことで、未来的な部分と、プログレッシヴ・ロックとか僕らがもともと聴いてきた音楽を結びつけて、面白いものを作りたいっていう意図があった。それは曲を書く段階から考えていたね。

-実際、このアルバムみたいな音を作っているアーティストって簡単には思い浮かばないですけど、音楽性にしろ、アティテュードにしろ、自分たちが共感できたり、インスパイアされたりする同時代のアーティストはいますか?

Blaine:もちろん、いいと思うレコードはたまに出てくるし、自分たちも刺激は受ける。だけど、僕が重要だと思っているのは、自分の世界を持つことなんだ。作る側でいる以上は、他の音楽を聴くことに熱心に時間を費やすのは邪魔になるところもあると思う。僕としては、自分の中に豊かな音楽の世界があるのであれば、むしろ外の世界は遮断して、好きなものだけにすべてを注ぎ込む作業をしたい。"他にこんなかっこいいことをやっているバンドがいるんだ!"ってパソコンの前で一生懸命聴きたいとは思わないし。自分の力も愛情も全部を注ぐことで、豊かさのある音楽を作るのが正しいと思っているんだ。

William:そうは言っても、これだけ消費が激しい時代になって、インターネットで音楽がいくらでも聴けるようになると、新しい音楽も古い音楽も、ネット上ではすべて今の時代の音楽になるっていうか。すべてが自分のコンテンポラリーな音楽仲間っていう考え方もできると思う。Logic(※音楽制作ソフト)とか、そういう機材もみんなが使えるようになっているから、このプレイグラウンドはみんなに共通のものとして存在しているんだよね。そう考えると、誰にでもチャンスはある。BECKとかDAUGHTERとかAriel Pinkみたいな音楽を作るのが可能な状況っていうのが、今のこの2016年なんだよ。そういう中で誰が抜きん出てくるか?っていうのが問われることになっていると思う。

Jack:でも僕は、地元のミュージシャン仲間がいいものを出してくるとすごく刺激を受ける。だから、新しいものを無視していいとは思わないな。新しいものを探すことはエネルギーを与えてくれると思うよ。

-わかりました。じゃあ、今回のアルバムに大きな影響を与えたという"全地球カタログ(=Whole Earth Catalog)"について教えてください。これはどのように発見して、どのような部分にインスパイアされたのですか?

Blaine:僕がこれを知ったのは、Steve Jobsがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ。そのときに彼がマントラのように繰り返していた"Stay hungry, stay foolish"っていうのが、"全地球カタログ"の裏表紙に載っていた言葉だったんだ。それで興味を持ったんだけど、Jobsは1971年の号だって話していたから、父に訊いてみたんだよね(※Blaine の父、Henry Harrisonはバンド・メンバーでもある)。そしたら、"大好きだったよ、あの雑誌"って言って持ってきてくれて。全部取っておいてあったんだよ。

-それはすごい。

Blaine:あれって今の雑誌と全然違うんだ。Jobsに言わせれば、アナログ・インターネット、もしくはGoogle以前のGoogle、って感じで。カウンター・カルチャー的なものを求める人のための雑誌だよ。社会の中でズレを感じている人っていうか、自分のライフスタイルが今の世の中に合っていないと思う人が、興味を持てる対象を見つけるための本だと思う。自分の力でムーヴメントを起こすとか、ビジネスを始めるとか、そういう方向に気持ちを持っていくための足がかりになる本で、僕らにとってもそういった意味合いを持つ本だったんだ。音楽的なことが書いてあるわけじゃないんだけど、写真とかヴィジュアル的な部分も含めて自分たちに訴えかけてくる部分があった。理想を追い求めるとか、野心を持つとか、そういう姿勢の部分で自分たちと繋がるところも感じたし。実際、"全地球カタログ"の編集者のStewart Brandと連絡を取ったんだけど、彼と話をする中で、"現代に通じるものを感じる"とか、"あなたのやろうとしたことを音楽で表現してみたい"って言ったら、彼もとても喜んでくれたよ。"Stay hungry, stay foolish"っていう言葉には、無邪気な気持ち、純粋な気持ちを忘れないで世界の不思議にいつまでも心をときめかせよう、っていう前向きな意味があったと思う。だから、自分たちもそういった気持ちで曲を書いていきたいと思ったんだ。

-あなたたちはデビューから10年経ったにも関わらず、今もなお音楽的に新しいチャレンジを続けています。そのような作品を作るうえで、"全地球カタログ"とStewart Brandの存在が後押しになったと?

Blaine:ああ、確実にそうだね。