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INTERVIEW

Japanese

吉田ヨウヘイgroup

2015年06月号掲載

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Member:吉田ヨウヘイ(Vo/Gt/A.Sax)

Interviewer:山元 翔一

吉田ヨウヘイgroupの面々からは、例えば60年代のジャズ・ミュージシャンのような、00年代以降のブルックリンのアーティストのような音に対するひたむきさや情熱、猟奇性さえ感じる音楽欲のようなものがたしかに感じられる。それだけでも日本においては十分に特異な存在であるのだが、本人たちはそれを自分たちのアイデンティティとして誇るわけでもなく、ましてやひけらかすでもなく、それが当たり前かのように振る舞い、朴訥とした佇まいでいるというところが珍しいなと思う。徐々に知名度を上げ、たしかな評価を勝ち取った前作から1年足らずで世に放たれる『paradise lost, it begins』。音楽的好奇心と実験性の結実というべき今作は、移り気な現在の音楽シーンにおいても圧倒的な強度と存在感を放っている。吉田ヨウヘイgroupとは何者なのだろうか。その首謀者・吉田ヨウヘイ氏にメールで話を訊いた。

-吉田ヨウヘイgroupは、吉田ヨウヘイさんを中心に2012年に結成されていますよね。結成に際して、吉田さんは勤めていらっしゃった会社をお辞めになっていますが、そこまで吉田さんを突き動かしたものは何だったのでしょうか?

2010年にフジロックでDIRTY PROJECTORSのライヴを観て感動したのが1番大きいです。それ以前、音楽を聴くのは、ライヴよりCDの方が好きだったんですけど、"ライヴでここまで人を幸せにできるんだ~"って思って。

-音楽性としては、管楽器やコーラスの重層的なアンサンブルや器楽的な和声の導入、マス・ロック的なリズムやサウンドのアプローチをとられていることも大きな特徴かと思います。この音楽性や方向性については結成当初から定まっていたものなのでしょうか?

女性コーラスを複数入れたいとは最初から考えてました。管楽器についても、このバンドを始める前に自分でアルト・サックスをやり始めていたので、管楽器担当のメンバーを入れたいなと思ってました。マス・ロックではないんですが、THE LOUNGE LIZARDSというジャズ・ロック的なインストを演奏するバンドの『Voice Of Chunk』というアルバムがすごく好きで、そのバンドのようなサウンドを歌モノで、というのが基本的なコンセプトでした。『Voice Of Chunk』はドラムとパーカッションがいる編成でリズム・チェンジも多いので、マス・ロックと共通する要素もあるかなとは思います。

-吉田ヨウヘイgroupのみなさんは音楽フリークとしても知られていますが、吉田さんの音楽への目覚めについて教えてください。どういったきっかけで音楽を聴き始めるようになりましたか?

3歳くらいのとき、家に"アメリカン・グラフィティ"のサウンドトラックのカセットがあり、繰り返し聴いてました。自分の根っこにはアメリカン・ポップスやドゥ・ワップがあると思います。

-吉田ヨウヘイgroupは、2013年にリリースされた1stアルバム『FROM NOW ON』で"和製DIRTY PROJECTORS"と評されていたのがとても印象に残っています。このように評されたことについてどのように受け止められましたか?

DIRTY PROJECTORSは女性コーラスがすごく特徴的です。それ以前の音楽では、ヴォーカルに対してバック・コーラスとして複数人の女性コーラスがある、というスタイルしかなかったと思うのですが、DIRTY PROJECTORSはヴォーカルと同じ存在感で女性コーラスが入っています。こういう音楽は聴いたことがなかったのと、響きとしてすごく新しいと思ったので、"これを取り入れたい"と思いました。もともと影響を受けたので、"似ている"と言われることは抵抗がありませんでした。女性コーラスをヴォーカルと同じくらい際立たせている、という編成やサウンドのバランスは同じですが、コーラス・パートの作り方といった音楽的な部分にはそれほど共通点はないかな、とも思っています。

-このように評されたことは、吉田ヨウヘイgroupの活動に影響をもたらしましたか?

そういうキャッチコピーがあったから知ってもらえたり聴いてもらえたことはあったと思うんで、最初の活動の支えになったと思います。

-1stアルバムをリリースされた2013年当時は、盟友ともいえる"森は生きている"や ROTH BART BARONを始め、実験性とポップさを兼ね備えたバンドがいくつか突然変異的に世に出てきた時期だったと感じています。吉田ヨウヘイgroupもその渦中にいたバンドだと思いますが、当事者として当時の状況はどのように映っていましたか?

そのふたつのバンドは、自分からコンタクトをとって1stアルバムのレコ発企画に出てもらいました。本当に尊敬できるバンドと切磋琢磨しながら活動する、という状況に結成間もないような段階でなれたことはすごく大きかったと思います。もっと広い、シーンのような話でいうとちょっと難しくてわからないですね。みんな仲のいい友達という印象です。

-昨年は2ndアルバム『Smart Citizen』をリリースされました。このアルバムは、将来的に2010年代を振り返った際、このディケイドを代表する作品のひとつとして残っていくのかなと感じてますが、ご自身ではどのような手応えを感じていますか?

音楽的には、いろんな音楽からの影響を自分の楽曲に取り込む際のひな形ができたかなと感じます。人の影響を受けながら、自分らしい曲が書けるようになったというか。

-同作は田中宗一郎氏やASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏を始めとする識者から高い評価を勝ち取り、FUJI ROCK FESTIVALにも出演。さらにリリース・ツアー・ファイナルの渋谷CLUB QUATTRO公演も成功を収めるなど、一定の達成感を得ることができたと思いますが、そういった追い風の吹く状況におかれて、活動や制作のモチベーションに変化はありましたか?

ライヴの数が増えて、キャパシティの大きい会場も増えていったので、そういう場でライヴをしても緊張しなくなって、ライヴに集中できるようになりしました。練習に気合いが入ったりとか、地方遠征が増えてメンバーと一緒にいる時間が長くなったり、っていうことがありました。

-今回リリースとなる3rdアルバム『paradise lost, it begins』は、非常に作り込まれた作品であるにもかかわらず、前作から約1年という短いスパンでリリースされます。前作と今作の間の1年間はどのような期間でしたか? また制作はいつごろ、どのように行われましたか?

去年の9月に"次もアルバムにしよう"と決めました。自分のやりたいことや、たまっていたアイディアを形にしたら12月までに10曲ちょっとできそうだ、という見当がついたので、"それなら1年以内にアルバム出してみよう"ということになりました。録音は1月~4月頭まで。ミックスも録り始めた段階から並行してやってました。

-今作の資料の冒頭には"過去におこなってきた、無為にも徒労にも思っていた出来事たちが、ふいに意味を持ちだした瞬間を形にしたかった――。"とありますよね。まず、今作ではなぜそういった"瞬間"を形にしたいと思ったのでしょうか?

このバンドを始める前の期間も含めて、1度試みたけどうまくいかなくて諦めたようなアイディアは結構いっぱいあって、そういうものを"今ならできるかもな"と思い、実際にやったらできた、っていうタイプの曲が多いんです。これは楽曲の話ですが、それだけに限らず、そういう感覚みたいなものを作品の世界観に取り込めたらなと思っていました。