Overseas
THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
2015年04月号掲載
Member:Jon Spencer (Vo/Gt)
Interviewer:山口 智男
-Daptone Studiosといえば、Sharon JonesやAmy Winehouseの作品が有名ですが、彼女たちの作品は聴いたことがありますか?
Daptoneのアーティストは聴いたし、それ以外だとGreg Cartwrightも、自分のバンドであるREIGNING SOUNDをDaptoneに連れて行っていたね。本人にどんな感じだったか訊いてみたんだ。そうしたら"とても良かった"と言っていたから、それで俺も自分のバンドを連れて行った。まあ、でも大袈裟な話じゃなくて、"なあ、どうだった?"みたいな軽い会話で訊いたんだけどね。"どうだった? 満足してる? セッションはどうだったと思う?"みたいな感じでね。どの店がうまいかみたいな話をするのと同じだよ。
-曲を書いているときから、Daptoneでレコーディングしようと考えていたんですか?
いや、そういうのとは切り離して書いていたね。他の人は知らないけど、俺はどこで録音しようとか、最終的にどんな形にしようとか、そう考えると自分で自分に制限をかけてしまうような気がするんだ。曲をミューズ(芸術の女神)やインスピレーションのためにオープンにしておくのは大切なことだからね。でないと、何かが起きるのをブロックしてしまうことになりかねない。
-"Freedom Tower"というタイトルの由来は? 今回、政治的な題材も扱っているんでしょうか?
俺たちはロックンロールをやっているから、それ自体が政治的な行動と言えるかもしれないけど(笑)、今回の場合は今のニューヨーク・シティのいいシンボルだからってことで選んだんだ。繰り返しになるけど、これはノスタルジックなアルバムではないし、変化について歌っているアルバムでもない。ニューヨーク・シティで過去に何が起こって、今は何が起こっているのかを省みるアルバムだ。"Freedom Tower"はそれを適切に表してくれるタイトルだと思ってね。と言っても俺の頭の中では"Dance Party"というタイトルがずっとあったんだけど(笑)......最近、妻のオフィスがフリーダム・タワーに移って、それにピンときたんだ。"新しいところに行かなくちゃいけないことにあまりハッピーじゃない"、なんて妻が言っていたところにピンときた。ニューヨーク・シティを要約するのにいい言葉だと思ってね。妻によると、もうフリーダム・タワーって名前でもないらしい。"One World Trade Center"になったらしいよ。
-あなた方の作る音楽や、ニューヨーク・シティそのものが自由の塔みたいなところがありますよね。自由なものが積みあがってできていると言いますか。
それはいい表現だね(笑)! 俺にとっては......よそで育った俺がここに来たのは、アーティスティックな自由のためだからね。ここから生まれたミュージシャン、バンド、映画監督、アーティストのファンだったし。彼らの多くもニューヨーク・シティにそれぞれの自由を求めてやってきた。創作できて、インスピレーションを得られて、夢を追いかけられて、憧れのアートをフォローできる場にね。俺にとってはそれが大切なことだったし、だからこそ俺はニューヨーク・シティに来て、今もここにいるんだ。
-また、"No Wave Dance Party 2015"というサブ・タイトルは70年代後半~80年代前半の"ノー・ウェーヴ・ムーヴメント"を想起させますね?
そりゃそうだよ(笑)。ノー・ウェイヴは完全にニューヨーク・シティ発のムーヴメントだったからね。ニューヨーク・シティの先鋭的なところを強固にしたもので、いかにもニューヨークらしい出来事だと思う。それにJSBXはパンク・バンドだけじゃなくて、他にもニューヨークのいろいろなところから影響を受けているからね。ミキシングをAlap Mominとやっていたとき、合間に彼と他のニューヨークのバンドの音を聴いていたんだ。70年代終わりから80年代初めにかけてのノー・ウェイヴのをね。そのミックスの仕方やサウンドを聴いていたら、段々それに沿った作業をするようになっていった。直接的に影響を受けた感じだったんだ。
-前作からJSBXの第2章が始まったと言えるんじゃないかと思うのですが、新作を聴くと、第2章はさらに盛り上がっていきそうですね。最後に新作を完成させたことで新たに見えたものや今後の展望を教えてください。
新しい景色がいっぱい見れればもちろんいいけど、まあ、いろいろな展開があればいいけど、まだこれから様子を見る段階だからね。俺たちは魂を注ぎ込んだし、できる限り最高なアルバムを作ろうとした。いい曲を作ろう、いいコンサートをやろうという思いでずっと来た。あのアルバムを仕上げるために本当に力を尽くしたんだ。俺たちは今でも偶然の余地を残しておきたい。もちろん、このあとはツアーをする予定は立っているけど、アーティスティックにはオープンでいたいんだ。今はたしかにとても気分がいいし、このアルバムを誇りに思っている。JSBXも今まで以上に結束が強くなっている。そういういい状態だから、ぜひ新しい景色をいろいろな意味で見たいものだね。
-今年はすでにツアーの予定が決まっていますが、日本にも早く来てください。
俺たちも早く行きたいよ。話はぼちぼち来ているから、どの時点で行くか様子を見るよ。
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