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INTERVIEW

Japanese

セカイイチ

 

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Member:岩崎 慧 (Vo/Gt) 吉澤 響 (Dr) 中内 正之 (Gt/Cho)

Interviewer:天野 史彬

時代は変わる――セカイイチの新作『Anaheim Apart』を聴くとそう感じずにはいられない。キャリア10年を超え、自主レーベルAnaheim Recordsを立ち上げた彼らが放つこのミニ・アルバムは、しかし、そのキャリアゆえの重圧など一切感じさせない。むしろ昨今のシーンに目配せをしつつも"いい曲を作る"という1点のみに情熱を注ぎ込んだ結果、過去最高のクリエイティヴィティを獲得した傑作に仕上がっている。去年、共演盤をリリースしたFoZZtoneと並び、セカイイチはこの先の数年間で間違いなく新たな黄金期を迎える。そして彼らの存在は、この国のポップ・シーンの希望にもなるだろう。

-新作『Anaheim Apart』、素晴らしいです。自主レーベルAnaheim Recordsからの第1作目となりますが、すごく純然と、そして自由に音楽と戯れている作品ですよね。

岩崎:ありがとうございます。手応えはすごく感じてますね。音楽と向き合えたなって思ってます。今まではavexであったりTOY'S FACTORYであったり、いろんな会社の人たちと音楽を作ってきていて。いい意味でも悪い意味でも、第三者のフィルターがかかってしまう部分があったんですよね。でも今回はもう、全部自分たちで作ったので、アイデアが形になるのも早かったんですよね。だから勢いもあったし、ピュアでしたよね。

吉澤:自分たちでレーベルを立ち上げたのもそうですけど、全部自分たちの手の届く範囲でできているので、そういう部分も自由さに繋がっていったのかなって思うし。やっぱり、環境が変わったのが1番デカいかもしれないですね。

中内:この間、リード・トラック「Empty」のムービーが公開されたんですけど(取材日は10月頭)、その時点で反響があって。"セカイイチがいい意味で変わった"って言われたり、耳触りがいいふうに感じてもらえて。新しいセカイイチが始まる予感がすごくありますね。リスナーがどんな反応をしてくれるのか、すごく楽しみです。

-今回、オリジナル作品としてはフル・アルバム『The Band』以来2年7ヶ月ぶりになるんですよね。この2年7ヶ月は、ご自分たちにとってどんな期間でしたか?

岩崎:そうですね......リリースっていう意味では2年7ヶ月ぶりなんですけど、その前にベスト・アルバム(セルフ・カヴァー・アルバム『and10(2003~2013)』)を出したり、"セカイイチとFoZZtone"名義で出したりして、いろんなかたがたと関わらせていただいたので、全然止まった感じはなかったんですよね。ただライヴをやっていく中で"そういや新曲全然リリースしてないな"って感じることはありましたね。やっぱり最近になって、新しい作品をリリースするのでこうやって取材を受けたりして、自分たちの評価に繋がる生の声をリスナーからも関係者からも聞けて、しかも"よかった"って言ってくれてるので、"あ、そうそうこれこれ"っていうのも思い出しましたね。これを1年に1回やってたよなって。やっと帰ってこれました(笑)。

-特に去年1年間はセカイイチにとって大きなターニングポントだったのかなって思うんですよね。ベースの泉(健太郎)さんが脱退されたり、それこそ"セカイイチとFoZZtone"があったりしたし。

吉澤:去年は怒涛っちゃ怒涛でしたよね。avexから抜けて自分らでやり始めたり......変な話、下積みですよ(笑)。

岩崎:今は吉澤くんがマネージャー業もやってくれてて。キャリア10年経ちましたけど、自分たちのレーベルを回すっていうことに関しては1年生なので、まぁ、去年1年間でみんながそのための勉強をしたっていう感じでしたね。DIYに向かうための勉強というか。

-実際、avexを離れて自分たちのレーベルを立ち上げるっていうことに関しては、すんなりと消化できていたんですか?

岩崎:そうですね。やっぱりここ5年10年で、そうやって自分たちでレーベルを回していく先輩や後輩も増えてきて。それが恐らく今後主流になるのかなっていう予感もあったし......むしろ、ちょっと焦ってましたね。"僕ら、まだここにいていいのかな"って。周りの先輩たちを見て、成功したりしんどそうやなって思ったりもするけど、そのすべては今後の自分に返ってくるんだろうなって思って。それは見てて、すごく羨ましかったんですよね。だから早くそっちに行きてぇなって思ってたし、そもそも、前々から自分たちのレーベルを作りたいっていう気持ちはあったんですよ。そこから自分たちの作品を出したいっていう気持ちもあったし、僕はプロデュース業もたまにやるんで、"ほんとにいいバンドだな"って思って、知らしめたいなっていう存在に出会ったりもするんですよ。でも、それを拾ってくれるレーベルってそんなになかったりするんですよね。だから、そういう人たちをリリースできたらなとも思ってるし。大変ですけど、夢は膨らむばかりなんですよね。自分たちですべてを決められるストレスのなさっていうのは大きいですね。

-じゃあ、今後Anaheim Recordsは他のアーティストもリリースしたり、大きくしていこうっていう感じなんですね。

岩崎:いやいやいや、大きくはできないです(笑)。他のアーティストのリリースはやっていきたいし、もし仮に他のレーベルと業務提携の話とかがあったらやるかもしれない。でも、そうなってもAnaheim Records自体は残すと思います。何故かというと、いいバンドを発掘したいっていう気持ちもあるし、今回のような自分たちの作品もどんどんリリースしたいから。そういうことは考えてますね、かなり未来の話ですけど。

-そもそも、今回の作品タイトルも『Anaheim Apart』ですけど、"Anaheim"っていう言葉にはどんなこだわりがあるんですか? これってアメリカの地名ですよね?

岩崎:そうですね、カリフォルニアの。さして深い意味はないんですよ。別にそこに行ったっていうわけでもないし。あの......ガンダムってご存知ですよね?

-はい、もちろん(笑)。

岩崎:ガンダムに出てくる、モビルスーツを作ってる会社が"アナハイム・エレクトロニクス"っていうんですよ。その会社の社訓が、"スプーンから宇宙戦艦まで"っていうんですね。要するに、いいもの作りますよっていうことですよ。モビルスーツも、最高の性能のものを追いかけていく。僕はそこにすごいシンパシーを感じまして......へへへ(笑)。

吉澤:くくく......(笑)。

岩崎:モビルスーツを1曲と捉えましょうと(笑)。連邦軍とジオン軍、戦ってますよね。連邦軍からしたらジオン軍は敵だし、ジオン軍からしたら連邦軍は敵になる。でも、その両方にモビルスーツを提供していく。そのスタンスが素晴らしいなと思いまして。良作を作るためには、自分たちを嫌うヘイターズも、逆に自分たちを好きでいてくれるヘッズも、その両方に届けていけたらなって思って、つけましたね。