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INTERVIEW

Overseas

FLYING LOTUS

2014年10月号掲載

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最新作『You're Dead!』でFLYING LOTUSことSteven Ellisonは、無限に広がる死後の世界という、サイケデリックな未知の領域へと向かうシャーマン的巡礼の旅を生み出した。彼が本作で描き出した不朽の宇宙には、巨匠Herbie HancockやKendrick Lamar、Captain Murphy、Snoop Dogg、Angel Deradoorian、THUNDERCAT、Niki Randaがフィーチャーされ、本作の衝撃的なアートワークは、狂的世界観で絶大な人気を誇る奇想漫画家、駕籠真太郎が担当。本作は、技術革新と芸術的技巧との音的、視覚的、形而上的フュージョンであり、この世とあの世との間にしか存在し得ない、超越的な意識拡張の産物と言える。

-新作『You're Dead!』の制作は、前作『Until The Quiet Comes』のリリース直後にあたる2年前、"ビート・ミュージックではなく、ジャズ・スピリットを源泉とした何かをやってみたい"というアイディアから始まったそうですね。最終的にはそこから飛躍してオリジナルなものになっていますが、こうした最初期のアイディアが出てきたのはなぜだったのですか。ここ20年のジャズに感じていた不満がモチベーションになった、とも語っていますね。

それはその通りだね。

-昨今のジャズの状況には不満たらたら、みたいな?

まったくそう! 全然好きじゃない(苦笑)!

-だったら"自分が何かやってやるぜ"というか、その反発もジャズにインスパイアされたものをやりたい、というモチベーションのひとつだった、と。

うん。だからまあ、俺は......すっかり飽き飽きしてたんだよ、いわゆる"スターバックス•ジャズ"というのか、カフェでBGMとして流れてるジャズ•ミュージック、みたいなものに。誰ひとりとして......俺からすると、ジャズを異なる方向にプッシュしていく、そういうことをマジにやろうとしている人間はひとりもいないように思えたし、それこそもう、今までに何万回と聴かれてきた曲のカバーを繰り返し作っているだけ、誰もがそんな感じで。だから、もしも自分が『My Favorite Things』を――アルバムじゃなくて曲の「My Favorite Things」のことだけど――あれをまた聴かされることになったら、それこそもう"俺は死んじゃうよ(I'll be dead!)"みたいな(笑)、もうたくさんだ!っていうさ。

-(笑)

フフフフフ! だから......そうだね、俺としては何かしら......とにかくちょっと、こう、そうだね、再び炎を点火するとでもいうのかな。できればそういうことをやりたかったっていう。分かる? そうやって自分の"役割"を果たしたいと思ったし、俺がヒーローと尊敬しているような先達の人たちが見ても"おお、解体しようとする奴が出てきたか。ほお?"とでも言うのかな(苦笑)。だから、俺がリスペクトしているような人たちから、願わくば"フム、これは......今までとは違うバージョンの何かだな"、そんな風に思ってもらえたらいいな、と。

-では、あなたが思うジャズ・スピリットとはどういうものなのでしょう。それはこのアルバムのどんなところに受け継がれていると思いますか。

俺が思うに、ジャズ•スピリットというのは......俺からすればほんとライフスタイルってこと、それに尽きるんだよね。考え方、心の持ちよう、みたいなものであって――。

-"音楽ジャンルのひとつ"ではない、と。

うん......そう......だから、探索者たち、そういう人たちのことなんだよね。世界の意味を理解しようと探求していく――アートという形式を通じて、人生の意味を探っていく人たち、そういう人々のことなんだ。で、俺も言葉で表現できないようなそういった物事を可能な限り表現するにはどうしたらいいか、そのベストな方法を見つけようとしてきたわけ。まあ、この俺の言い分は、他の様々な音楽についても当てはまるものなんだろうけど。ただ、ジャズにはとにかく......ジャズっていうものは、なんというか......"孤独者が力強く成長できる場"とでもいうのかな? だから、その人間の中の内面的な部分を伸ばすことのできる、そういう"場"だっていう。だから、人生、世界に対して抱える様々な疑問の集まっている心の中のある箇所、そこでこそ人間は栄える、とでも言うか。そういうものじゃないかと俺は思うけどな。

-ああ、なるほど......。

(やや照れくさそうに)いや、俺もこれまでそこについてちゃんと考えたことはないんだよ! ただ、そういうものじゃないかと思ってるだけで。

-いや、今の話を聞いて、なぜ新作が"死後の世界へのジャーニー"というテーマを持つのかが、ちょっと分かった気がしました。死というものをイマジネーションを通じて表現することで、人生というものをまた異なるレベルから理解しよう、その意味を探っていこうということでは?

その通り! だから、俺が自分の音楽を通じて追求してきたのも常にそれであって......というのも、俺はとてもラッキーというか......だから俺は俺の抱えている様々なクエスチョンを(音楽に)適用することができるというか......本当に、作品を通じて自分自身で答えを見つけていくことができるわけだよ。例えば教会に通うだのなんだのして自問する代わりにね。というのも、自分にとっての教会は音楽だ、俺にはそんな感覚があるんだ。それはこう......俺にとってもっともスピリチュアルな場所だ、みたいな。何かをクリエイトしている瞬間、それは自分にとって1番スピリチュアルなモーメントなんだ。だから、音楽というのは俺にとって理解するための方法であり、また何か困難を切り抜けたり、様々な物事に対処していくための方法だっていう......例えば俺が自分を見失って迷いを感じるたび、あるいは誰かの死を悼んでいるときなんかも、音楽は常にそこにあったし、自分に起きた様々な出来事に対して自分がどう感じたか、それを音楽で表現することができる、という。だから、俺は自分にが音楽があるって点を本当に感謝しているんだ――ってのも、自分には見当もつかないからね、駆け込んですがることのできる場所、音楽というものを持たない人々が、一体どうやって色んなことに対処しているか?が。

-このテーマに関連して、あなたは"早すぎる死を迎えた仕事仲間も大勢いる"と発言しています。そう聞くと、2012年11月(『Until The Quiet Comes』のリリースから約2か月後)に亡くなったあなたの友人Austin Peraltaのことが思い出されますが、彼の死があなたにとってどんな出来事だったのか、話してもらうことはできますか。

うん......。