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INTERVIEW

Japanese

Bob is Sick

2014年08月号掲載

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Member:久世 悠喜 (Vo/Gt) 近藤 潤弥 (Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

-その理由は、もしかしてご自分も"底"にいらしたから、ですか?

久世:そうなんですよ。一時期ずっとふさぎ込んでて......。音楽に出会ったころは音楽に救われてたんです。"この音楽さえ聴いていれば俺は無敵だ!"と思うような。だから"俺もそういう音楽を作りたい!"と思ってたんですけど、その時期は、信じていた音楽を聴いても、全然救われなくて。昔自分を救ってくれた音楽の力が、どんどん薄れていく感覚があったんですよね。ああ、俺、こんなに無力なものを信じてたんだ......と思って。それで酒飲みながら"今どんな言葉が俺は欲しいんだろうな"と思ったときに、"ここからはじめよう"とストレートに言われたらハッとなるなって。「ここからはじめよう」はそれからすぐ作りだしたんです。そのときに、もっと力のある音楽を作りたいと思って。

近藤:急に歌詞の言葉が強くなったんです。前作に「詞ニ借ル」という曲があるんですけど、めちゃくちゃ毒舌......というか、言いたいことをぶわーっと言うような感じになって(笑)。その曲ができたときくらいからどんどんとんがっていって、そのとんがりのピークを迎えたときにちょっと丸くなって、今みたいになってきましたね。

-では久世さんの作る曲には、そのときの久世さんがそのまま反映されているんですね。

久世:そのときどういう曲が欲しいか、どういう言葉が欲しいか......そういうふうに作っています。

-そのときに他者を意識することは?

久世:それもありますね。知り合いに病気の人がいて、メールで僕に"夜が怖い"とか、そういう言葉を送ってくることがあるんです。そんなときに、その人に対して曲を作ることもあったりして。だから、その場その場(の自分の気持ち)という感じかな。計画とか立てられない人間なので(笑)。

-ギターの竹内さんが作曲を担当なさっているTrack.3「malmal」は、竹内さんのお好きなジャズのテイストが前面に出た楽曲ですね。

近藤:この曲はヴォーカルの彼がスタジオに来れなかった日に、残りの3人のやることがなくなって"じゃあこういうのやってみようか"という感じで(竹内が)リフだけ持ってきたんです。"コード感はこんな感じにしようか"とかを話して、じゃあ実際にやってみようというのが作りはじめたきっかけですね。(竹内から)"こういう感じのドラムがいいな"と言われて"こんな感じ?""んー、ちょっと違うな。ここはもうちょっとこうして"という話し合いを重ねて、ある程度の形が見つかって、全部できあがったときにヴォーカルにポンと渡して"メロディと歌は任せた"と。なかなか珍しいパターンの曲の作りかたでした。

久世:うわあ......こんなん来た!? 歌えねえよ~!と思って(笑)。でも(3人が曲を作ってくれたのは)嬉しかったです。

-やっぱり、久世さんはご自分がメインで曲を作って、バンドを支えてらっしゃって。そういうときに他のメンバーさんから曲が届けられるというのは、助けられたような感覚もありそうですね。

久世:そうなんですよ。丁度そのころは俺が"曲ができない、曲ができない"とずーっと言いながら過ごしていた時期で、ありがとうと思いましたね。あと(与えられた曲に歌を乗せるのは)すごくいい経験にもなって。意外とこういうことも俺できるんだ、と(笑)。

-都会の夜の雑踏を描いた歌詞も、音のイメージから浮かび上がったものでしょうか。

久世:そうですね。"俺はこんな感じのイメージと捉えたんだけど、どう?"と竹内に言ったら、向こうも"そうそう、そんな感じ。俺もそう思って弾いてた"と言ってくれて。ちょうど合致したから、それも嬉しかったです。

近藤:歌詞だけでなく、音からも情景が伝えていきたいですね。

-Bob is Sickにとって、音での表現と言葉での表現は同じものですか?

久世:そういう話はメンバー同士であんまりしないんですけど、僕はすごくみんなが(感情や思いを)重ねてくれてると思います。言葉の意味を考えてメロディを弾いてくれたり、ドラムを刻んでくれたり。

近藤:メッセージは大切にしていきたいです。歌詞を聴かせたいところは言葉を引き立てるようなアレンジをしたり。歌詞の意味と強さに合わせて、強く叩くところは強く叩いて、言葉を聴かせたいときはそういうふうに叩くことは意識していますね。「音沙汰」とかは目いっぱい音を出して。

-Track.2「音沙汰」の歌詞は"僕ら まだまだ行けるから""ここでなら 上手く歌えるような気がしているの"と、バンドのことを思わせる内容ですね。

近藤:力入っちゃいますね。"まだまだ俺ら行けるぞ!"と。気持ちが乗せやすいです。"ここでならうまくやれる"ということを思いながら演奏すれば、(聴いてくれる人にとっても)応援歌にもなるだろうし。

久世:メンバーに作った感情はめっちゃありますね。人それぞれに舞台があると思うんです。僕の舞台はBob is Sickだから、単純にそういう思いを込めて。俺個人の気持ちをみんなと共有したい気持ちはすごくでかかったですね。......まだまだうまくできないですけどね(笑)。

-いやいや、ここからはじめるんですから(笑)。このアルバムのラストで"ここからはじめよう""そこからはじめよう"と歌っているBob is Sickは、そこからなにを始めていきたいですか?

近藤:"すごいでかいところでライヴがしたい!"とか、そういうことが今の僕らの目標というわけではないので。とりあえずは今回のCDをいろんな人に聴いてもらいたいです。全国販売は僕らも初めての経験なのでどうなるかわからないですけど、"僕らは今こういうことをやっているんだぞ"ということを、できるだけ多くの人に届けたいし、ちゃんと聴いてもらいたいですね。それでいろんなものを感じ取ってもらえたらと思います。

久世:とにかく存在を大きくしたいというか、いろんな人に"Bob is Sickがいるから大丈夫だ"と思ってもらえるようになりたい。......漠然とした思いですけどね。