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INTERVIEW

Japanese

星野源

2013年05月号掲載

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その妄想を現実に引きずり出してやろう……「夢の外へ」の歌詞にもあるが、前作『エピソード』以降の星野源の表現はもっとシンプルに音楽の楽しさや面白さを追求したものへ変化していった。もちろん、変えられない重い現実をちゃんと携えながら。だからこそ年齢もジャンルも異なるさまざまなリスナーから待望されたニュー・アルバムである。タイトルは『Stranger』。急病で倒れ、入院中にアルバムを再び通して聴いた上で付けられたという。パブリック・イメージや音楽的向上心に悩み、格闘してきた2012年という時間の濃密さ、星野源という人の独特な存在感の理由に迫ってみた。

-今回のアルバムは3枚のシングル表題曲「フィルム」「夢の外へ」「知らない」も収録されていますが、それも含めてこれまでと作り方は違ったりしましたか?

去年出たそのシングル3枚の中で意識的にそれまでの自分のやり方を変えていこうっていう気持ちがありましたね。『ばかのうた』と『エピソード』を作ってきた中で、歌をまっすぐに届けたいっていう気持ちがあって、そこに集中していっていいところもあったと思うんですけど、それでできたなんとなくの自分のイメージというか、殻みたいなものがあるなぁと思って。で、その殻を壊したいなって気持ちがあって、「フィルム」の制作から殻を壊す作業が始まって。それはホントにささいなことで、例えばエレキ・ギターを使うとか、作詞の仕方を変えてみるとか。だからアルバムを見据えたというよりは、とにかく目の前の次の何かをそれまでと違うことをしていく、その積み重ねでシングルができて。その中で次のアルバムでやるべきことみたいなものがなんとなく見えてきたので……で、シングルにも負けないぐらいもっと殻を壊していくっていう、その繰り返しでしたね。もしかしたら聴いた人にはそんなに違いはわからないかもしれないけど、そこにいくプロセスはそれまでの作り方とけっこう違うものでした。

-仕上がりも全然、違うと思いますよ。

あ、よかった、よかった。

-その、なんとなくついたイメージはどんなものだと感じていたんですか?

僕は普遍的な歌を歌いたいなぁと思っていて。普遍的ってことは、ずっと通用するっていうか、例えば“100年後であろうが、1000年後であろうが人間がもしいたら、たぶん変わんないよなっていうことを歌いたいなぁ”って、詞を書いてたんです。で、そういうものでちゃんと自分が説得力をもって歌えるものっていうと身近なものを描くことなんじゃないかな? と。それで、身近なものを使って歌を作っていったら、日常的なイメージがついちゃったっていうか“ささいな日常の中に幸せがある”みたいな。でもそれは全然やりたかったワケではなかったから。もっと自分が“これ面白いよ! 誰もやってなくね?”みたいな気持ちで作ったものが、柔らかい印象のものとして受け止められたっていうことが……完全にイヤだったワケじゃないけど、何かこうモヤモヤした思いが残るというか、“もうちょっとラディカルな気持ちで作ってるんだけどな”っていう(笑)。そこは少数の人にしか伝わんなくて。あと、それが自分の限界なのかな?と思うと壊したかったし、そこをちゃんと抜けてステップ・アップしたかったし、次のアルバムは“もっともっと”って思ったんですよね。

-なるほど。アルバムとしてまとめていくときに何かポイントになった出来事はありました?

「フィルム」が最初にできた曲で、この曲を作ったときに“今までと違うことができたぞ!”と思ったんですけど、いざフタを開けてみたらあんまそう思ってくれる人がいなくって。僕としてはすごく明るい曲を作ったつもりだったんですよ(笑)。でも“そう?”みたいな反応が多くて“そうか、まだまだなんだな”と思ったのはきっかけになったと思います。で、その後に「ある車掌」ができて、自分の弾くギターを入れてない曲なんですね。今までは全部、自分でギター弾いてたんですけど。それを弾かないのはけっこう挑戦ではあって……でもそれがすごく楽しかったんですよね。作ってみて楽しくて。もちろん、アレンジは自分でするので、みんなに指示してやるんだけど、自分のギターのコード感みたいなものも殻の1つだったんだな、っていう。僕の押さえるコード進行って、理論で弾く人からするとちょっと間違ってるみたいで(笑)。でもその音色とかニュアンスを出せる人があんまりいないんで、誰かに任せるのもちょっと……みたいな理由もあったんですけど、そういうのもうどうでもいいから作りたい音像を作ろうと思って。で、(自分のギター抜きで)やってみたら感触が良かったんですね。“あ、こういうアプローチで自由になれるんだな”と思って。「フィルム」と「ある車掌」はけっこうこのアルバムのきっかけで。それで「夢の外へ」ができたし。