Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Overseas

THE FRAY

2012年02月号掲載

いいね!

Member:Isaac Slade(Vo&Pf)

Interviewer:沖 さやこ


-今作はNeil YoungやINCUBUS、STONE TEMPLE PILOTSなど多くのロック・バンドを手掛けているプロデューサーBrendan O'Brienを招いて制作されたとのことですが。

Brendanはフットボールのコーチのような人だよ。友達になるためにいるわけじゃないし、メールのやり取りをするような感じでもないんだ。でも俺たちをすごくプッシュしてくれた。自分たちに自信が持てなかったときもあったけど、彼は"スタジオに行くんだ""なぜ自分を疑うんだ?"って言ってくれてね。ストレートに"アルバムを作れ"とかね(笑)。とても背中を押してくれていたので、制作過程に勢いがあった。自分や自分の本能を信頼して、野球で言えばバットを思いっきり振って、球場の外に飛ばせたと思う。

-レコーディングはナッシュビルで行われたらしいですが、同じアメリカとは言え環境も違うのでしょうね。

ナッシュビルは揚げ物が多いんだ(笑)。でも人々はあたたかいしフレンドリーで、知らない人とすぐに打ち解けるし、街自体にゆったりとしたエネルギーを感じたよ。ニューヨークやLAなんかだとみんなペースが早くて、頑張っていて、車のクラクションを鳴らしたり怒鳴ったりなんてしょっちゅうだけど、ナッシュビルはそういうものがなくてリラックスできる、しっかりと呼吸できる場所だったな。ナッシュビルの中でも田舎のほうにある友達の家に滞在させてもらってたんだけど、鳥のさえずりと共に目を覚まして、スタジオに運転していって、最高の経験だったね。

-アルバム・タイトル"Scars & Stories"にはどういう意味や思いが込められているのでしょうか。

傷跡って凄くセクシーだと思うんだ。流血しているわけじゃないし、救急治療室にいるわけじゃない。"傷"じゃなくて"傷跡"だからね。自分が今までやってきたこと、どこを通ったか、そういう地図のように思えるんだ。......ちょっと前にこの題名で妻に曲を作ったんだ。アルバムには入っていないんだけど、穏やかな曲で、今まで自分が恋した人たちのことを歌っている。8才、15才、20代......どれも特別な思いが抱けて大好きだったけど、何らかの理由で終わってしまって。でもそのお陰で今の自分がいると思うんだ。そしてそれを正直に彼女に伝えることで自分を表すことができたし、今までいろんな人といたけど自分が将来共にする人は彼女だって決めたから、彼女に"俺のことも選んでくれ"って歌っている歌でね。出来ることなら弱さなんて見せたくないよ。でも良い関係には正気でいること、弱さを見せること、裸の自分を見せることがあって、信頼感が生まれるから大切なんだってわかったんだ。

-素敵なお話です。プライベートあっての音楽人生ですね。皆さんが青空の下を走り抜けるジャケットも印象的でした。

Danny Clinchってカメラマンが撮ってくれたんだ。彼は乱雑な、泥臭い写真の開拓者の一人でね。この写真には"彷徨っている"感があると思うんだ。何かを失ったらなくしたところに行くと見つかるって言うけど、本当は遠くへ行って、船を沖に向けてそっちから見た方が自分が歩んだ道とか無くしたものが見えるような気がするんだよね。「The Wind」という曲にはそうした動きがあって、この写真もそんな感じがするな。

-今年で結成10周年ですが、この10年間は皆さんにとってどんな年月でしたか? 今作がこの10年においてどんな存在となっているかも気になります。

ははははは、誰もそんな質問してないな(笑)。この夏で10年になるけど、バンドを始めたときのことは今でもしっかり覚えている。小さなクラブで初ライヴをやったんだ。ビッグな音楽雑誌の編集者が会場に来るって聞いたから、観客に"アンコールをやる時は大騒ぎして、その編集者にいい印象を与えよう!"って言って。でも友達はそれを間違えて編集者に言っちゃって、そのことについて書かれてちゃったんだ。"バンドは無理にアンコールをさせてもらった"ってね。この10年はそのストーリーが物語っていると思うんだ。いろんなおかしなこともあったし、自分たちの才能だけじゃ足りないって不安に陥ったりもしたよ。10年経って自分に自信が持てて、ステージに上がって、プライベートな歌まで歌えるんだ。パーフェクトじゃないけど、それでいいと思えるよ。と言ってもこのアルバムの存在は今の自分たちを表しているものであって、特に10年をまとめているものじゃないけどね。