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INTERVIEW

Overseas

CLAP YOUR HANDS SAY YEAH

2012年02月号掲載

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Member:Alec Ounsworth

Interviewer:伊藤 洋輔


-うんうん。CYHSYの歌詞、つまりAlecの詩世界は非常に抽象的で理知的なものとなっていますが、これには何か影響された作家や詩人などいるのでしょうか?

う~ん、作家や詩人よりやっぱり過去の偉大なミュージシャンからの影響かな? Robert WyattとかBob DylanとかRoger Watersとか......ちょっと待って、好きな作家がいたなぁ(笑)。John Berryman(第2次大戦後に活躍したアメリカの詩人)にRaymond Carver(アメリカの小説家、詩人)の短編集なんて大好きだよ。とくにJohn Berrymanの詩はイマジネーションをすごく掻き立てられたから、影響されているかもね。いま挙げたミュージシャンも作家も古い時代の人たちだから、現在活躍している人たちからはあまり影響を受けていないと言えるよね。(skream!11月号の表紙を指差し)あ、Lou Reedは素晴らしいよ(笑)。過去の時代の混迷期や黎明期に宿したパワーは現代で持ち得ることは不可能だから、そういった背景が脈打っている作品が好きなんだろうね。それと......あまり種明かしはしたくないけど、『Hysterical』にはDelmore Schwartz(アメリカの作家、批評家。若き日のLou Reedに多大な影響を与えた人物)の短編「In Dreams Begin Responsibilities」の影響は大きいということは言っておこう。

-わかりました。アルバム・クレジットでJohn Paul Jonesに感謝の意を送っていますが、これはなぜに?

ああ、そうそう(笑)。それってLED ZEPPELINのベーシストだと思うかもしれないけど、たまたま同姓同名でNYにいる個人的な友人なんだ。彼もミュージシャンなんだけど、ややこしい名前だよね(笑)。

-あのアメリカ独立戦争の英雄でもなく?

......違うよ。

-......そ、そうですか(苦笑)。え~っと、では、インディペンデントな存在でCYHSYが登場したことは、レーベルに属さなくてもネット経由でブレイクしてしまう新たな道の開拓者となりましたが、あなたが想う音楽ビジネスの未来はどのように変化していくと考えますか?

Wow、難しい質問だな。(チラリとレーベル担当者を見て)ここじゃ答え難いことでもあるけど(笑)。まず、どの国でも"CDが売れない"って嘆いているけど、それは今の時代に生きる人が音楽離れを起こしていることとは違って、むしろネット環境で容易に聴きやすくなり、昔以上に音楽と密接な関係になってると思うよ。ただ、ネットではまるでシングル単位のようにちょっとずつ聴く人が多いと思うから、僕が子供の頃NIRVANAの『Nevermind』とかNick Caveの作品に夢中なったように、ひとつのアルバムにのめり込むという行為がだんだんなくなってきているのは寂しいね。だからそのバンドの価値を1曲で判断してほしくないよ。このシーン受け入れられなくて音楽活動を辞めていく人たちも多く見てきたし。この状態が続いていくのはあきらかだけど、ネットを通してアルバムという物語を読み解いてほしい。よりそのバンドが好きになるからさ、そう願うよ。

-最後に抽象的な質問をしますが、ズバリ、あなたが想う"素晴らしい歌"とは?

素晴らしい歌とはジャンルによって異なると思うけど、僕が言えるのはロックについてかな。だから素晴らしいロックについて言うけど、それは"自分のやりたいことをやっている"ということかな。さっきも挙げたLou ReedにBob Dylan、あとTom Waitsなんかもそうだけど、周りの批判とか気にせず自分の意志を貫いているだろ? 僕もその姿勢で音楽に取り組んでいるけど、『Hysterical』にもそれが反映されていると思うよ。振り返ると、僕らは1stアルバムですごく注目されてから、なんか周りから促がされるように2ndアルバムをリリースしてたんだ。それってなんか違うだろ?って悩んだこともあり、この3枚目(『Hysterical』)まで時間が掛かったんだ。でも自分に正直に音楽に取り組み、メンバー全員で意見をぶつけた。だからこそ素晴らしいアルバムになったと自信があるしね。自分に正直に、やりたいことをやるとは簡単なようで難しいことだけど、そのほうがきっと素晴らしい歌は生まれる。これは特に若いバンドの人たちに伝えたいことだね。