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FEATURE

Japanese

THE BREAKAWAYS

2016年10月号掲載

THE BREAKAWAYS

Writer 蜂須賀 ちなみ

BEAT CRUSADERS、MAN WITH A MISSION、phatmans after schoolなど、素顔を明らかにしていないアーティストの存在は今や珍しくはないが、このTHE BREAKAWAYSも謎に包まれたアーティストである。9月28日、ミニ・アルバム『N.T.A.』をリリースする彼らの正体に迫るべく、まずは公開されているわずかなヒントをまとめてみた。

メンバーのプロフィールすら現時点では非公開のため、アーティスト写真の代わりにイメージ・イラストが使用されている。それを見る限りだと男性3人組のバンドだと予測できるし、8月19日に渋谷WOMBで開催された[AWA presents"NEO TOKYO"]でのライヴ写真にもガスマスクを顔面に着用した3名の姿が写っている。しかし"バンド"という点は断言できない。なぜかというと、8月3日に恵比寿BATICAで開催された"NEO TOKYO Night vol.1"では、"THE BREAKAWAYS(DJ SET)"という名義で出演しているからだ。これからどういうふうに活動をしていくのかはわからないが、現時点での型にとらわれない活動には"アート集団"という呼び方が合っているように思える。

先述したふたつのイベント・タイトルに含まれている"NEO TOKYO"という言葉は、2020年(近未来)に向けて創っていく新たな世界のことを意味しているとのこと。そこから連想すると、エレクトロやEDM系統のスタイリッシュな音楽が思い浮かんでいただけに、彼らの音を初めて聴いたときは少し驚いた。所属レーベルであるA-SketchのYouTubeチャンネルにて、アルバム収録曲「GIRL ELECTRIC」(Track.1)のミュージック・ビデオが公開されているので、早速観てみてほしい。2次元と3次元、過去と現在が交差する映像。これぞクール・ジャパン! というアニメーションと、全編英語詞のグランジ、ガレージ・ロック直系のサウンドが交差する約3分間。基盤にあるのはヴィンテージ・ロックンロールなのに古臭く聞こえないのは、彼らがそこに新たな発明を掛け合わせ、そのいぶし銀をさらに魅力的にさせているからだろう。ちなみに、同ミュージック・ビデオは公開から1日にして1万回再生を突破。新人バンドとは一線を画す存在感で、早耳リスナーからはすでに注目を集め始めているという。

全曲の作詞作曲、アレンジを務めるのは
Dinosaur Pile-UpのMatt Bigland(Vo/Gt)

 

ミニ・アルバム『N.T.A.』には計8曲を収録(ボーナス・トラック含む)。冒頭の「GIRL ELECTRIC」に続くTrack.2「WHERE I BELONG」は胸の中に灯り続けるロックンロール原体験と光に照らされた広大なスタジアムの景色を一直線に繋ぐ1曲。Track.3「TEENAGE ICON」で"I'M GONNA BECOME A TEENAGE ICON"、"ALL I CARE ABOUT IS MY ROCK 'N' ROLL, YEAH."と軽快に歌い上げると、砂埃を巻き起こしながらドライヴしていくテンションから一転、Track.4「A GOOD TIME」では歪ませまくったサウンドで牙を剥く。かと思えば、金銭にまつわる悲哀をコミカルに描くTrack.5「MY MONEY」や、恋に落ちた衝撃に戸惑う主人公の姿が目に浮かぶTrack.6「CRUSH ON YOU」ではキュートな一面を見せてくれる。これらの楽曲の作詞作曲、アレンジを手掛けるのは、イギリスの爆音3ピース・バンド Dinosaur Pile-UpのMatt Bigland(Vo/Gt)。曲ごとに様々な表情を見せつつも、グランジ、ガレージ・ロック直系のサウンドというバンドの軸からは大きくブレることがないのは、メンバーの演奏技術はもちろん、彼の手腕があってこそ。3ピース・サウンドのシンプルな魅力を活かす手法が清々しく気持ちいい。

今作がTHE BREAKAWAYSにとっての初音源ということで、自らのテーマを明確に印象づけるためか、本編はある程度色を整えている印象。一方、ボーナス・トラックとして収録されているTrack.7「GIRL ELECTRIC (FPM NEO TOKYO Remix)」とTrack.8「A GOOD TIME (TOKYO BLACK STAR Dub)」には大胆な遊び心が表れている。FPM(Fantastic Plastic Machine/※DJ、プロデューサーである田中知之のソロ・プロジェクト)が手掛けたリミックス音源だという前者は、金管楽器によるイントロ、エフェクトが効いたドラム、レゲエやダブ要素の強いリズムなど聴き手の意表をつくような要素がふんだんに盛り込まれているし、サウンドの変化に伴いヴォーカリストの歌い方もラップに近いテイストに。後者も"TOKYO BLACK STAR Dub"という副題に相応しく、まったく別の曲へと生まれ変わっている。

そんな全8曲を聴き終えたあとに残るのは、何だか不思議な後味。一歩近づいたところでまた遠ざかったような、彼らのベースにあるサウンドをやっと理解できたところで、また煙に巻かれてしまったような、そういう気分。つまり現時点では"まだまだ謎でいっぱい"というのが正直な感想だ。しかし、だからこそこの先に興味が湧いてしまうのもまた事実。リリースしたばかりなのにかなり気が早いとは思うが、次の作品でどんな音を鳴らすのかが気になるところだ。

 

▼リリース情報
THE BREAKAWAYS
1st MINI ALBUM
『N.T.A.』
break_jk.jpg
2016.09.28 ON SALE
AZNT-31 ¥2,000(税別)
[A-Sketch]
amazon | TOWER | HMV

1. GIRL ELECTRIC
2. WHERE I BELONG
3. TEENAGE ICON
4. A GOOD TIME
5. MY MONEY
6. CRUSH ON YOU
-Bonus Track-
7.GIRL ELECTRIC (FPM NEO TOKYO Remix)
8.A GOOD TIME (TOKYO BLACK STAR Dub)

 
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