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FEATURE

Japanese

SATORI

2014年10月号掲載

SATORI

Writer 齋藤 日穂

まるでおもちゃ箱のようだ。何が出てくるか分からないのに思わず期待してしまう浮き足立った気持ちや、全身を駆け巡る高揚感、そして恐る恐る箱を開けた瞬間の弾けるようなあの気持ち――SATORIの音楽はそんな気持ちが全部ぎゅっと凝縮されたみたいに鳴らされる。いろんなところからカラフルに音が弾けて、聴けば聴くほどに新たな発見がある。眩しかったり、甘酸っぱかったり、ほんのりと寂しかったり。

白衣を纏った京都のニューカマー5人組バンドSATORI。2013年に1stアルバム『Yeah!Yeah!Yeah!』にて全国デビュー。10月8日にはニュー・アルバムとなる今作『RHYTHM OF THE NIGHT WAVES.』をリリース。さらに、関西にて毎年行われているサーキット・イベント"MINAMI WHEEL 2014"にも出演が決まっているという、本人たち曰く"今、ちょっと話題になりかけているバンド"である。

初めて彼らの音を聴いたとき、まさか5人でやっているとは思わなかった。ギター、ベース、ドラム、キーボードに合わせてタンバリンやシェイカー、そしてボンゴやシロフォンが賑やかに鳴らされる音は、楽団のような華やかさがあり、勝手に大所帯を想像してしまった。そこに思わず口ずさんでしまうメロディが乗ったり、掛け声が入ったりして、会場をカラフルなパーティさながらに染め上げる様子が目に浮かぶ。思わず諸手を挙げてライヴハウスで体を揺らしてしまうことだろう。

楽曲もバラエティに富んでいて、Track.1「NO NO NO」のように軽快なビートでリスナーを躍らせるような曲から、紅一点YKO(Vo/Per/Dr)が"ぬるい ぬる~い ここは生き地獄"と歌うTrack.3「漂流教室」やTrack.4「わたし 雨、台風。」のようなメロウな楽曲まで収録。「漂流教室」では、制服を着ていたころの自分を思わず思い出して苦笑いしてしまうようなメランコリックな気分にさせられたり、ファンク色の強いTrack.6「君にだけ聴かせるハートビート」では無意識に体が揺れていたり、嬉しい気分の人にも、楽しい気分の人にも、はたまた悲しい気分の人にも届くような作品となっている。

音楽には出会うべきタイミングが必ずある。落ち込んでるときにバキバキのダンス・チューンを鳴らされても神経を逆なでされるみたいにイライラするし、楽しい気分のときに重厚なバラードなんて聴きたくもない。だからこそ自分と同じベクトルを向いた音楽にタイミングよく出会うと、これは運命なのではないかと思えるぐらいに感情移入できる。しかしSATORIの音楽は、いつ聴いても誰の体にもゆっくりと染み渡るような浸透力がある。それは、鳴らされる音に人間の血がしっかり通っているような温もりがあるからだろう。何も知らずに明るいわけではなく、"もう潰れて死んじゃいたい。"(「青春」)ような悲しい日々も、寂しい瞬間も知っているからこそ鳴らされるパーティのような音楽なのだ。日々の軋轢に負けそうになっても、どうかこの音楽が鳴っている間だけでも楽しくいられるように。一瞬だけでも音楽の力で何もかも忘れてしまえるように。SATORIは聴き手を置いてけぼりにすることなく、手をとって一緒に踊ってくれる。

最後に、個人的に1番お気に入りの曲について特筆したい。可愛い女の子に向けて歌われるTrack.2「君はキュート」を必死に歌うハノトモ(Vo/Key)を想像したら、どんな女の子よりよっぽど可愛くて思わず笑ってしまった。照れた気持ちを隠すように早口で捲くし立てるように歌う姿は恋する男の子そのもの。SATORIの音楽に恋している。そして、そんな君の目の色はきっときらきらと眩しく輝いているだろう。



SATORI
『RHYTHM OF THE NIGHT WAVES.』
[L-record]
LRECD-002 ¥1,500(税別)
2014.10.8 ON SALE
[amazon] [TOWER RECORDS] [HMV]

1. NO NO NO
2. 君はキュート
3. 漂流教室
4. わたし 雨、台風。
5. 青春
6. 君にだけ聴かせるハートビート

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