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GORILLAZ

 

GORILLAZ

Writer 遠藤 孝行

「何かを試してみる時は漫画の魔法が必要だ。どこかに行かなくちゃ」。
これはグラミー賞を受賞、そしてアニメーション・バンドとしては世界で一番成功しているバンドGORILLAZのサウンド面を一手に引き受けるDamon Albarnの言葉だ。

前作『Damon Days』から約5年、ファースト・アルバムから数えると9年、待望のサード・アルバムが到着した。アニメーションという視覚的効果を使って自由に世界中のリズム、サウンドを吸収しそこに遊び心を詰め込んだようなカラフルな作品をリリースして来たGORILLAZ。
そんな彼らの新作は、前作にあった少しダークな部分を引きずりながらもポップでまたコンセプチュアルなアルバムとなっている。地球上で最も見放された場所にある“Plastic Beach”で作られたというコンセプトは、一種の諦めの境地を感じさせながらもそこから沸き上がる力強さを賞賛する様なアルバムとなっている。

ひとまず、彼らのデビューから振り返ってみよう。GORILLAZはサウンド面を担当する元BLUR のDamon Albarnとビジュアル・キャラクター面を担当するJamie Hewlettの2人が仕掛人。2 人がMurdoc、2D、Russel、Noodleという架空のキャラクターに息を吹き込むことから物語は始まる。
2001年にアルバム『Gorillaz』でデビュー。BLURでは吐き出せなかったDamon Albarnの無数のアイデアが詰まったこのアルバムは全世界で600万枚を売り上げ、成功を収める。Damon Albarn がBLURでより内省的でパーソナルなアルバム「13」を発表した後であったこともあり、この“新人バンド”のポップで刺激的なサウンドはロック・シーンにより好意的に受け入れられた。

続く2005年にリリースされた2ndアルバム『Damon Days』はプロデューサーにDanger Mouse を迎えて新たなサウンドを展開。ダブ、ヒップホップを基本としながらもオリジナリティ溢れるポップなサウンドでファースト以上の成功を収める。この辺りからDamon Albarnのプロデューサーとしての才能が開花。リミキサーの人選にしてもMETRONOMY、HOT CHIPなどいち早く目をつける所など流石と言うしかない。

それに加えて、GORILLAZでやはり触れなければならないのは参加アーティストの豪華さもあるだろう。ファースト・アルバムではDan The Automatorを柱にKID KOALA、CIBO MATTOの羽鳥美保、そしてアフロ・キューバ・シンガーのIbraim ferrerが参加し、セカンド・アルバムではDE LA SOULやBootie Brown、Roots Manuvaらヒップホップ勢にHAPPY MONDAYSのShaun Ryder やあの俳優のDennis hopperまでも!
GORILLAZというフォーマットの中でこれだけのアーティストが暴れ回っている。そうGORILLAZは今挙げた彼らとのコラボレーションの結晶でもある。

そして、いよいよ5年という歳月をかけて彼らは“漫画という魔法”を使って新たな旅に出た。今作の参加アーティストはSnoop dogg、Mos Def、DE LA SOULのヒップホップ勢やKano やBashyのグライム勢、SUPER FURRY ANIMALSのGruff RhysそしてLou Reed、Mark E Smith。さらに元THE CLASH のMick JonesとPaul Simononの2人と、目も眩むほどの豪華さ。前2作にも増してスペシャルなコラボラーションが実現したが、今作は過去作より統一感ある仕上がりとなっている。

波の音、カモメの鳴き声、オーケストラとが絡む華やかなオープングからヒップホップ、コズミック・ディスコ、グライム、ソウル、ファンクと横断し“すべては始まった瞬間と繋がっているんだ” と歌われるシンプルでポップなラスト・ナンバー「Pirate Jet」で幕を閉じる。
このアルバムの中でピークとなるのはシングルでもある「Stylo」だろう。Mos DefとDamon Albarnが紡ぎ出すクールなトラックにラストソウルマンであるBobby Womackの伸びやかなヴォーカルが弾ける極上のナンバー。そこから続くDE LA SOUL、Gruff Rhysを迎えた「Superfast Jellyfish」との流れは間違いなく今作のハイライトだろう。全体を通して聴くと今作のDamon Albarnは良い意味で目立っていない。
もちろんメイン・ヴォーカルをとる「On Melancholy Hill」ではスイートな歌声を聴かせてくれるが、前作までにあった様な彼のプロジェクトであるというよりはGORILLAZというバンドの音が鳴っているように感じる。
前述した通りこのアルバムは“世界中から見放された島=Plastic Beach”というメランコリックなテーマを扱っている。“どこかに行かなくちゃ”と新たな挑戦を続ける彼らからはとても勇気をもらえる。
そこには今の現実を見つめながらそれでも良くしていこうという気持ちがあるからだろう。
さあ僕らもこの『Plastic Beach』を聴いて新たな旅に出よう。

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