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FEATURE

Japanese

THE BLUE HEARTS

2010年02月号掲載

THE BLUE HEARTS

Writer 佐々木 健治

THE BLUE HEARTSというバンドに対して、尋常ではない思い入れを持つ人は多いだろう。THE BLUE HEARTSは、1ロック・バンドという枠に収まらず、社会現象だったと言ってもいい。その輝きは今も消える事がなく、THE BLUE HEARTSが青春とともにあったという人だけでなく、THE BLUE HEARTSに心酔する若者は今も後を絶たない。おそらく、親のレコード棚からTHE BLUE HEARTSを発見する若者も増えているだろう。

日本のTHE CLASHであり、日本のRAMONESであり、日本のTHE ROLLING STONESであるバンド。最高のパンク・ソングは最高のポップ・ソングだということをこの国で示したバンド。それが、THE BLUE HEARTSだった。
パンクやロックンロールを基本とした演奏もメロディもいたってシンプル。そして、平易でありながら高い文学性も強烈なメッセージ性も備える歌詞。

1985年2月に結成され、若々しく、苦虫を噛み潰すようなヒロトの声が「日本最強THE BLUE HEARTS」と叫んでから25年。わずか2年後の1987年にはバンド・ブームの先頭にいきなり躍り出るシングル『リンダリンダ』、ファースト・アルバム『THE BLUE HEARTS』、セカンド・アルバム『YOUNG AND PRETTY』を発表してから急速な上昇曲線を描いたTHE BLUE HEARTS。
ザ・クロマニヨンズとして、今もヒロトとマーシーの伝説は最前線でバリバリ更新され続けているが、結成25周年という節目を迎え、THE BLUE HEARTSの新たなベスト・アルバムが発売される。

これまでにも初期3部作で在籍していたメルダック、後期のイーストウエスト・ジャパンそれぞれのベストやイーストウエスト・ジャパン時代のシングル集はあったが、今回はレーベルの垣根を越えた全シングル収録曲がデジタル・リマスターを施されてまとめられている。
また、デビュー前の「1985」「人にやさしく/ハンマー」や当時レーベルからリリースの許可が下りず、自主レーベルから発表した「ブルーハーツのテーマ」収録の「シャララ」「チェルノブイリ」も収録されている。
権力や社会に対する苛立ちや怒りをポジティヴに変換し、人を勇気づけるパワーこそTHE BLUE HEARTSの最大の魅力だが、戦争や原爆、原発に言及する問題意識を包み隠さずさらけ出すバンドでもあった。
それ故、社会派バンドと(色眼鏡的に)目されることもあったが、単純に自分が歌いたい事をそのまま歌にするという当たり前の行為すら前向きには捉えられなかったわけだ。そして、このことはこのバンドの影響力がそれだけ大きかったことを示しているとも言える。
そうした状況を嫌ってかどうかは定かではないが、後期のTHE BLUE HEARTSからは、THE HIGH-LOWS、ザ・クロマニヨンズに繋がる言葉遊びを用いた表現が増えていく。

ザ・クロマニヨンズの傑作『MONDO ROCCIA』に続く布石は、THE BLUE HEARTSの時点で既にあったわけだ。
そして、ザ・クロマニヨンズの言葉遊びの向こうには、今もTHE BLUE HEARTSのメッセージが詰まっている。
「ヒマラヤほどの消しゴム」と「ミサイルほどのペン」を片手にロックンロールで面白いことをたくさんしたいという欲求だけだ。
もう一度、THE BLUE HEARTSのやさしい歌に胸を打たれよう。2010年代に彼らほど愛されるロックンロールにはいつ出会えるだろう。

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