Overseas
THE KOOKS
2022年08月号掲載
Member:Luke Pritchard(Vo)
Interviewer:山本 真由 Interview interpreted and translated by 川原 真理子
-取り入れてみたいジャンルや楽器など、今後挑戦してみたいことや、考えているけど実現できていないことなどは何かありますか?
ジャズ・インストゥルメンタルをやりたいんだ。僕はシンガーだから、それに惹かれるんだよ。今の僕は主にジャズを聴いている。僕がシンガーなんで、これが心理的な問題なのかどうかはわからないけどね(笑)。
-インストゥルメンタルの場合、あなたはそこで何を? 何か楽器を弾かれるのですか?
ビバップを口ずさもうかな(笑)。僕はギターもベースも弾ける。ウッド・ベースは覚えないといけないかな。生きている間にインストゥルメンタル・ジャズ・アルバムを作ろうと、本気で考えているんだ。実現はさせるよ。要は時間の問題だな。歌や歌詞にあまり依存しないものをぜひとも作ってみたいんだ。それが僕のやることだし、長年ずっと歌をやってきたんだから、できないものをやることがすごくチャレンジングだと思う。そこの部分をすべて取り去るんだから、ぜひともやってみたいよ。
-それはとても興味深いです。そんなことを語ってくれたシンガーは初めてですよ(笑)。実に斬新なアイディアですね。
(笑)そうだね。絶対実現させてみせるよ。
-話をニュー・アルバムに戻します。日本盤ボーナス・トラックとして「Please Don't Cry」が収録されていますが、この楽曲もアルバムと一緒に制作されたものなのですか?
まぁね。何度かあったロックダウンのせいですべてがグチャグチャになってしまったから、このアルバムにいわゆるセッションはなかったんだ。バンドとしてレコーディング・スタジオにいたのはほんの1週間ほどで、プロデューサーはiPadで参加していた。でも、曲が書かれた時期は同じなんだ。他の曲とは結構違う感じだったから、アルバムには合わないと思ったよ。でも、今振り返ってみると合っているんじゃないかな。この間聴いてみたら、クールな曲だなと思ったもの。アルバムに収録されているDURAN DURANのヴァイブだな。ヨット・ロックといった感じだね。僕はそう呼んでいる。彼らにすごく影響されているんだ。
-ほんのりトロピカルなテイストがあるなと感じたのですが、それがヨット・ロックなんでしょうかね。
その通り! カリブ海で素敵なカタマランに乗っている感じだね。
-コロナのせいですべての制作がリモートで行われたのですね?
ほぼすべてがリモートだったね。曲作りのセッションは何度かあったけど、いつものやり方はできなかったよ。『Listen』も例外で、小さな部屋で僕とINFLOだけで作業することが多くて、そこにバンドを乗せていて、これまたすごくプロデュースされたアルバムだった。でも僕がこれまでに作ってきた他のアルバムはどれも、曲を作って、リハーサルしてレコーディングするという順番だったんだ。今回はそうじゃなくて、曲を作って、曲に取り組んで、といったことを、ファイルを交換しながら行ってアルバムを完成させたんだよ。でも、逆にそれが良かったのかな。このアルバムがバンドの1stアルバムのようなサウンドになっているのは、ベッドルーム的な緩いプロダクション・スタイルだからなんじゃないかな。みんな、DIYでやらないといけなかった。自分たちだけでやらないといけなかったんだ。いつもだったら、Hugh(Harris)は部屋にギター・アンプをずらりと並べて、ローディーにケーブルの接続をしてもらって、プレイ中にダーティ・マティーニを飲んだりしているんだけど、今回彼は自宅にいたから、アンプだって1台しかなかったかもしれないね。ギターも2、3本しかなかったかもしれないし。いつもとはかなり違っていて、オプションがほぼなかったんだ。
-今作の制作にあたって、他に印象深いエピソードなどありましたら、教えてください。
とにかく楽しかったよ。素晴らしかった。僕は、MILKY CHANCEやNEIKEDとのコラボレーション(それぞれ「Beautiful World」、「Without A Doubt」でコラボ)が大好きなんだ。これは僕たちにとっても新しいことだったね。でもさ、みんなで一緒に作ったアルバムじゃなかったんだ。作業は別々だったんだよ。僕は自分のアパートをレコーディング・スタジオにしたけど、あれはすごく楽しかったな。でも、みんなで一緒にいられた時間はあまりなかったんで、エピソードと言っても今は思いつかないよ。
-2019年の来日公演は残念ながら中止となってしまいましたが、今作のリリースにあたって、来日公演を含めたワールド・ツアーなどは計画されているのでしょうか?
あれはすごく悲しかったよ。マジでひどかった。でもね、これは心から言っているんだけど、マネージャーと話をするとき僕はよく、"今度日本に行くのはいつ?"って聞いているよ。世界の中でもお気に入りの国だからね。遠い国だから、せっかく行くからには価値あるものにしたいんだ。僕たちに来てもらいたいと思っている人が日本に十分な数いたら、僕たちは明日にでも行くよ。休暇でも日本に行きたいな。妻と一緒に行ったこともあるから、また行くよ。日本でぜひとも音楽のレコーディングもしたい。フェスティバルにでも出られればいいんだけど、今のところはわからないな。でも僕たちは日本が大好きだ。最高の時を過ごしたから、日本は僕たちの心に大切にしまわれているよ。だから、僕たちが日本でプレイしたがっているとプロモーターに伝えてくれ。そうしたら日本に行くから。
-ぜひ! 日本以外の国でのツアーの予定はありますか?
あるある! 今日(※取材は7月中旬)、スペインに向けて出発する。"FIB Benicàssim Festival 2022"に出演するんだ。それから、ウィーンのフェスティバルにも出る。それから10月にはオーストラリアに行く。実は、オーストラリアのときに日本も組み込もうとしたんだけど、プロモーターからしかるべきオファーを受けられなかったんだ。実現したら素晴らしいけど、まず無理だろうね。時間もないし。それから、来年の1月から2月にかけてはヨーロッパ・ツアーを行う。久々のツアーだから、向こう3年間はツアーに出ることになるんじゃないかな。
-3年ですか。長いですね。
そう、しかもその間にアルバムも作ろうと思っているんだ。楽しいよ。コロナがあって初めて、プレイできるありがたみがわかったんだ。
-向こう3年間のツアーとTHE KOOKSのニュー・アルバム制作以外に、計画中のプロジェクトは何かありますか? ジャズ・インストゥルメンタル・アルバムもあるでしょうが、それはいつになるかわからないんですよね(笑)?
(笑)
-それ以外の予定はありますか?
スーパー・バンドの話が持ち上がっているんだ。友達がやっている音楽で大好きなものが結構あるから、彼らとのコラボレーションがゆっくりと進んでいるよ。でも、僕がメインで取り組んでいるのは妻とのデュオなんだ。英国人カップルが、60年代フランス風の音楽を英語の歌詞と訛りでやっているんだよ。これは本当に素晴らしいから、今取り組んでいるね。バンド以外で僕が専念しているのはこれなんだ。すごく楽しいよ。妻は僕よりずっと才能があるんで、妻がやっているのを見ているだけでも楽しいんだ。僕はコラボレーションが大好きなんだよ。さっき言ったMILKY CHANCEとかは、THE KOOKSと一緒だと素晴らしいものになるんだ。だから、こういったことは今後もっとあると思うな。でも今は誰とは言えないな。言ってしまってそれが実現しなかったら、ただのアホに見えるからね(笑)。
-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。
どうもありがとう。君たちにすごく会いたいよ。『Inside In / Inside Out』(2006年リリースのアルバム)の15周年を君たちと一緒に祝いたかったけど、悲しいことにそれは実現しなかった。でもさ、日本のファンには本当に感謝しているから、君たちだけのための「Please Don't Cry」を気に入ってくれるといいな。
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