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INTERVIEW

Japanese

Machico × 明希(シド)

2022年08月号掲載

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Machico
シド:明希(Ba)
インタビュアー:杉江 由紀 Photo by 上坂和也


Machicoさんは声や喉の使い分けがとにかくプロフェッショナルだな、と感じました(明希)


-この「Shall we...?」をコンポーズしていく際に、明希さんが重視されたことがありましたらぜひ教えてください。

明希:まず、Machicoさんのファンの方たちが好きな"Machico像"はどんなものなんだろう? ということを探っていきました。かわいらしい感じがいいのか、カッコいい感じがいいのか、それともセクシーな感じがいいのか。そのあたりは、Machicoさんと話し合いをしながら考慮して作っていきましたね。

-Machicoさんからオーダーを出されたのはどのようなことでした?

Machico:10周年記念曲なので、これまでの10年では歌ったことがないような、今までにない曲を書いていただきたいですということは伝えさせていただきました。特に、まだまったくやったことのないジャジーな雰囲気の、ライヴでみんなと盛り上がれるような方向性のものだと嬉しいです、というお話もさせていただいたんです。

明希:そうそう。ライヴの場でやったときのハマり具合というのは、自分としても曲を書くうえでのポリシーとしていつも大事にしている部分なので、そこもMachicoさんと話し合いをしながら作っていきましたね。そして今回、僕は彼女の歌唱力のすごさにとても圧倒されたんですよ。

Machico:えっ。そんなふうに褒めていただけるなんて嬉しすぎます......!

明希:いやほんと上手いんです。歌録りのディレクションに行ったとき、低めの音域のところはちゃんと太く出してくれるし、高いところもきれいに伸びるんで、歌い方を別に"こうして"とか言わなくても自然に歌いこなしてくれましたからね。さすが声優もされているだけあって、声や喉の使い分けがとにかくプロフェッショナルだな、と感じました。この音程の場合マイクに対して自分の声をどこにどう当てるのが一番効果的かということを、完璧に理解して歌ってるんですよ。すごいなと思いました。テイクも少なかったよね?

Machico:そうですね、3回くらいでした。私としては緊張もあったんですけど、それ以上に明希さんとコラボレーションさせていただくからには、この貴重な機会を最大限に生かして、自分に出せるものは出し切ろうという気持ちのほうが強かったので、精一杯頑張りました。それに、明希さんは現場で雑談をして私の緊張を取ってくださったりしたので、その面でも助けていただけたんですよ。

明希:僕としては、聴いていてドキドキできるような歌が録れたらいいなと思ってたんだけど、Machicoさんは期待を超えるような歌を歌ってくれたから、僕としては何もやることがなかったくらいなんです(笑)。しかも、難しい曲のはずなのにブツ切りじゃないんですよ。まるまるスルッといけちゃいそうだったから、そのまま録り切っちゃったんです。そういえば、この間MUCCの逹瑯(Vo)さんとも対談してたでしょ?

Machico:はい、逹瑯さんのラジオ番組(TOKYO FM"JACK IN THE RADIO")にゲストで出させていただきました。

明希:逹瑯さんも"あの曲を一発録りで録り切ったなんてほんとにすごいね!"っておっしゃってて。実際とてもすごいことなんですよ。今はレコーディングってあとからいくらでも加工とかできちゃいますからね。Machicoさんみたいなヴォーカリストは貴重です。

Machico:そこはきっと、この10年の間に自分の曲だけではなく、いろいろなキャラクター・ソングを歌わせていただいたり、VOCALOIDの曲を生歌で超えたいっていう気持ちで一生懸命練習したり、ってことが自分にとってのいい経験になっているのかもしれないです。10年前とか、まだこれが20代半ばだったら、「Shall we...?」もおそらく今回みたいには歌えてなかったでしょうね。

-なお、明希さんは歌録りのディレクションのみならず、今回ベース・レコーディングについても自ら臨まれたそうですね。

明希:もちろん、そこは自分の曲ですからアレンジ、ベース録りもすべて責任を持ってやらせていただきました。もっとも、シドでも最近こういうタイプの曲はあんまりなかったんで、プレイ的にはフレーズも動きっぱなしだし、意外と僕にとっても難しかったですね。そこは本気で取り組んだうえで、最終的にはいい感じにできたんじゃないかと思います。

Machico:音を聴いて感動しました。"うわー、まさに明希さんのベースだぁ!"って。もう今回は何から何までてんこ盛りでやっていただいて、感謝してもしきれないです。高校生のときの自分に"明希さんに曲を書いてもらって、ベースも弾いていただいて、歌のディレクションまでしてもらえたんだよ"って言っても、絶対に"そんなわけない"って信じてもらえないと思います(笑)。

明希:あはは(笑)

-ところで。「Shall we...?」ではMachicoさんが作詞をされているわけですが、この歌詞世界を作り上げていくうえで最も重視されたことはなんでしたか。

Machico:この曲のデモを最初に聴かせていただいたとき、夜のイメージとかライヴハウス、ショーガールがいるようなシチュエーションを想像したところがあったので、私としても色気のある雰囲気の歌詞を書いていくようにしました。ただ、これは10周年記念の曲でもあるので、単に色気のある恋愛の歌として仕上げてしまうことはしたくなかったんですよね。だから、ライヴでのファンのみんなと私との関係性をそこに重ねていくことにしたんです。すごく難しかったですけど、なんとか自分の描いてみたい世界と、10周年記念の曲としての意味をここではリンクさせることができました。

-ベスト・アルバム『10th Anniversary Album -Trajectory-』は、全体的にキュートな女の子を主人公とした詞が多く見られるだけに、この「Shall we...?」での"何もかも曝け出して 聞かせてよ/瞬間的な共鳴"という言葉遣いは鮮烈ですね。ライヴ空間を支配し牽引しているのは自身である、というMachicoさんのスタンスが表れているようです。

Machico:主導権は持っていたいな、という気持ちを詞にしました。でも、これは明希さんに曲を書いていただいていなかったら、自分の中からだけでは絶対に出てこなかった歌詞表現ですね。これに関してはファンの方たちもちょっと驚いたみたいで(笑)、いろんな方から"Machicoってこんな詞を書くんだ!?"みたいな感想をいただきました。

-作曲者 明希さんからは、この「Shall we...?」の歌詞はどのように見えます?

明希:ちゃんと楽曲のことをわかって書いてもらえたな、って思います。なんか上から目線みたいな言い方で申し訳ないですけど(笑)、この曲に似合う言葉が並んでいて音に合ったシーンがそれぞれ描かれてますよね。素晴らしいです。

-"Shall we...?"という曲タイトルについては、詞を書き出す以前からあったものだったのでしょうか。それとも書き終わったあとに付けられたものでした?

Machico:すべて書き終えてからです。自分が主導権は握るけれども、一緒に楽しみましょう! という気持ちも伝えられるタイトルはないかな? と考えて、この言葉を選びました。

明希:あ、そこは意外だったかも。MVの大人っぽいセクシーな雰囲気からいくと、僕は"一緒に踊ってあげようか?"みたいなややSっぽいニュアンスかと思ってた(笑)。

-たしかに、終始「Shall we...?」のMVは上質で気品のある絶妙なセクシーさが漂ったものになっておりますものね。

Machico:ところが、私根本的に色気が皆無なんですよ(笑)。でも、今回はそこも指先がアップになるシーンとか、タイツを撫で上げるみたいなシーンも"やらせてください!"ということで、自分から提案して撮らせていただきました。音との連動性という部分でピアノを映像の中に入れたいです、ということも私からお願いしたんです。ここまでMVに対して意見を出したのは初めてでしたけど、そのぶんちゃんと自分が思っていたことはすべて映像に盛り込むことができました。

明希:すごくカッコいい映像になったよね。この間、ライヴに行ったときに会場で流れたんですけどファンの人たちもみんな喜んでました。

-ライヴと言えば、先だって5月22日に開催された"Machico 10th Annivesary Live ~Trajectory~"で、アンコールのラストに「Shall we...?」を歌われたそうですが、生で初披露してみての手応えはいかがでした?

Machico:10周年という気持ちの高まりもあり、初披露だったので歌詞はちょっと間違えちゃったところがあったんですけど(笑)、私としてはすごく気持ち良く歌わせていただくことができました。

明希:30曲くらい歌ったあとにダブル・アンコールの最後で歌ってくれてたんですけど、マジで完璧でしたね。とってもいいライヴでしたよ。もう僕の曲であって僕の曲ではなくなったというか、Machicoさんのもとで「Shall we...?」がひとり立ちしたなっていう感慨深さを感じましたね。

-それにしても、約30曲歌ったあとに「Shall we...?」とはすごいスタミナです。

Machico:明希さんがいらっしゃることもうかがっていたので、"生の歌をどう感じてくれているんだろう?"って心配ではあったんですけど、なんとか乗り切れました。ライヴに備えてジムに行っていて良かったです(笑)。

-さて。今回のベスト・アルバム『10th Anniversary Album -Trajectory-』でMachicoさんはある種の集大成を提示したことにはなりますが、最後に10周年を経ての今後に向けた展望をお聞かせいただけますでしょうか。

Machico:声優とアーティスト活動の両方をやらせてきていただいているなかで、自分にとっては、いろんなジャンルの曲を歌えるということがひとつの武器なんだろうなと思っているところがあるので、そこを大事にしながら年齢に関係なくこれからも走り続けていきたいと思ってます。もっといろいろな作品の曲も歌いたいですし、ライヴでは3年くらい前からやっと生バンドでできるようになってきているので、今回の「Shall we...?」も含めていろいろな曲をファンの方々と育てていきながら、より大きな会場を目指していきたいですね。そのためにも、ここからパフォーマンス力をさらに磨いていこうと思います。

-明希さんとしては、Machicoさんに今後よりどのようなアーティストになっていってほしいですか?

明希:この間観させてもらったライヴが、本当に実力を感じるものだったんでね。Machicoさんはこれからもっと本物になっていくだろうなと思ってますし、何に対しても夢中であり続けることができればそれは叶うんじゃないかと僕は考えてます。好きなことを突き詰めていけばいいと思いますよ。僕もそうですもん。約20年経っても曲を作って演奏して、って高校生のときに軽音楽部に入ってバンドを始めた頃とやってることはほぼ変わんないし(笑)。楽しいから続けられるんです。

Machico:私も、歌うの楽しいです。難しいなって思うこともありますけど、難しいからこそやり甲斐もあるし、難しいからこそ面白いんですよね。自分で限界値を決めずに、自分に満足しないでこれからも歌っていきたいです。

明希:改めて10周年おめでとうございます。これからも頑張ってくださいね。

Machico:ありがとうございます。明希さんに祝っていただけるなんて、生きてて良かったー(笑)!!