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INTERVIEW

Japanese

葛葉

2022年03月号掲載

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今はクリエイター側の目線になりつつあるんです。 音楽に対する解像度が上がってきてるように感じるんですよね


-では、ここからは、3月9日にリリースされるミニ・アルバム『Sweet Bite』について聞かせてください。葛葉さんの多彩な歌の魅力が引き出された1枚になったと思いますが。

いろいろな方が完成度を高めてくれた作品なのかなと思いますね。現状の自分の力を最大限に引き出してもらえたんじゃないかなって。さっき言ったような自分の好きな曲を言って、どういう曲を歌いたいかっていうのを制作者の方に伝えたんです。それこそラルク(L'Arc~en~Ciel)とかシド、King Gnuの名前を出して。そしたら、「甘噛み」とか「Owl Night」みたいな、今までに出したことのない一面を感じられる曲も作ってくださったんです。

-「甘噛み」はシドのメンバーが作詞作曲を手掛けてますね。

マオ(Vo)さんと明希(Ba)さんが作ってくれて。本当に感動しました。シドのこともアニメの主題歌から知ったんですよ。だから、あのシドが! っていう。最初に曲を聴いたときは、歌いこなせるかな? っていう不安もありましたけど。女性目線の歌詞も新しくて、どう歌えばいいんだろう? っていうのをディレクターの方と話し合いながら歌ったんです。

-制作はどういう流れで進んでいったんですか? まず、葛葉さんからどういう楽曲を歌いたいかっていう提案をして、そのあとは?

1曲ずつデモ音源が届くので、それを聴かせてもらって。まず練習しますね。"どう歌おうか?"っていうのを考えるんですけど、そこは難しかったです。ちゃんと歌詞を読み取れないと歌えないので。そういうときは同じようなジャンルの楽曲を聴いて、インスピレーションを得るというか。あ、こういう歌詞のときはこういう歌い方をしてるんだな、みたいなのを学んで。レコーディングの日までに準備をしていくんです。

-レコーディングは何日かに分けてやるんですか?

1曲ずつ何日も何日もっていう感じでした。レコーディング・スタジオで歌うのが初体験で、最初は恥ずかしくてムズムズしながら歌ってたところもあったんです。俺、カーテンを閉めないと歌えないんですよ。必死なんで、そういう姿を見られるのが恥ずかしくて。途中でディレクターの方と仲良くなって、歌について教えてもらったり、慣れてきたりっていうのもあったので、自分では成長したのかなとは感じましたね。

-具体的にどういうところが成長できたと思いますか?

まず羞恥心の打破(笑)。あとは歌に対しての見解が変わったんです。今までは漠然と聴いてたんですよね。どう歌ったら、どう聴こえるとか、あんまり考えてなかったんですけど。今はクリエイター側の目線になりつつあるんです。まだ全然クリエイターの"ク"の字も経験はないんですけど。改めて音楽のすごいところがわかるようになったから、音楽に対する解像度が上がってきてるように感じるんですよね。

-おそらく"歌ってみた"のときは、どちらかというと、プレイヤー的な立ち位置だったと思うんですよ。でも、オリジナル曲を歌う経験をしたことで、シンガーにもクリエイターとしての視点が必要だっていうことに気づいたんでしょうね。

あー、たしかになぁ。まぁ、俺はプレイヤーよりももっと浅いところにいましたからね。本当にただのリスナーだったんです。昔は歌詞をちゃんと聴いてなかったんですよ。でも、そこを汲み取ることが大事だなってわかったし。そこは変わったかもしれないです。

-ちなみに最初にレコーディングしたのはどの曲だったんですか?

「Bad Bitter」です。トリッキーでオシャレな曲なんで、最初は歌いこなせるかな? って心配で。すごく難しかったですね。歌詞が斜に構えてるところがあるので、余裕ぶって歌ってるように見せてますけど、めっちゃ必死で歌ってました(笑)。

-そこを出発点に一曲一曲その楽曲の世界観を汲み取りながら、それに相応しい歌い方を見つけていくような作業が進んでいったんですね。

そうですね。例えば、2曲目の「Wonder Wanderers」だったら、ゴリゴリのロックの中でも負けない歌の迫力を出したいなっていうのがあって。"ついてこい!"っていう気持ちですかね。ここから聴いてくれる人を引き込めるような曲にしたかったんです。「Owl Night」なんかはアルバムの中で唯一しっとりしてる曲で繊細だったので、丁寧に歌うことを心掛けてます。夜にしかないきれいさ、というか。そこに寂しさもあるのかなっていうのを感じながら歌った曲です。最後の「debauchery」は、情景的には路地裏をフードを被って歩いてるような、ちょっと悪い感じですよね。歌詞の出だしが"毳毳(けばけば)しく"なんですけど、最初に見たときは読めなくて(笑)。そういう個性的な言葉選びも合わさって、ラスト・ナンバーに相応しい感じになってますね。

-5曲目の「エンドゲーム」の作詞作曲には元ぼくのりりっくのぼうよみのたなかさんが参加してますよね? ダンサブルで先鋭的なトラックがかっこいい。

そうなんですよ。"あの天才が作ってくれた"と思いました。レコーディングのときに、たなかさんがいらしてくれて。歌い方についていろいろ指導してくれたんです。"かっけぇっす"って褒めてくれたりもして、そのひと言だけでモチベーションになりました(笑)。自分の中では"エンドゲーム"っていうタイトルからも壮大な世界観を感じたので、スタイリッシュにかっこ良く歌おうと考えてた曲ですね。

-アルバムは全曲を通して、深夜から明け方にかけての楽曲が収録されているそうですけど、そういった"夜"の時間帯をテーマにしようと思ったのは?

これは提案してもらって、"あ、いいな"と思ったんですよね。僕は吸血鬼なので(笑)。

-はい(笑)。っていうのもあるし、夜って自分と向き合う時間だと思うんですよね。それが今回のミニ・アルバムで葛葉さんが描きたいことだったのかなって。

そうなんです。夜って人間の内面を表すのにぴったりだと思うんですよ。夜にも、いろいろあるじゃないですか、騒がしい夜もあれば、物静かな夜もある。夜はひとつじゃないですよね。このアルバムではそのなかで巻き起こる人間模様が描けたんじゃないかなと思ってるので。いろいろな人にとっての夜にあてはまるといいなと考えています。

-タイトルの"Sweet Bite"はどういう意味ですか?

僕のふたつ名が"甘噛みの狂犬"なんですよ。逆の意味みたいな言葉が並んでいるのが面白いなと思って付けたんですけど。今回のアルバムは自分の名刺的なところがあるので、このタイトルにしたいなと思ったんです。

-今後の展望としては、どんなことを考えていますか?

具体的なことは見えてないですね。まだ自分は発展途上だと考えているんです。もちろん作品として出すわけだから、発展途上のものを見せるのはどうなの? と思うし、ちゃんと完成したものを出さなきゃいけないんですけど。とりあえず今回のアルバムでは、現状の最大火力を出し続けるっていうことはできたのかなと思ってます。なので今度は作詞作曲もやってみたいですね。どんどん成長していく姿を見せていきたいです。