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INTERVIEW

Japanese

月蝕會議

2021年10月号掲載

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Member:エンドウ.(Gt) Billy(Gt) 楠瀬 タクヤ(Dr) 鳥男(Ba)

Interviewer:秦 理絵

-あと「ムーンステーション」は、「眞夜中サロン」や「シュワーガール」とは違うパターンの作り方で、90分間っていう時間制限の中で作った曲ですよね。

タクヤ:そうです。思い出すたびにすごいことをしたなって。

エンドウ.:まずくじ引きでジャンルを決めて。そのときにアイドル曲を引いちゃったから、K-POPみたいなのを作ったんですよ。

鳥男:厳密に言うと、メロディ・ラインはサロンで募集したやつで、そのアレンジを90分間でやったんです。この曲はわりとオルタナっぽくやりたいなと思ってたから、K-POPっぽくしても良くならないっていうのはわかってるけど、でもやる、みたいな。

エンドウ.:それはそれで楽しんだんですけどね。アルバムに入れるってなったときに、あの曲もったいないよねって。もともと会員の人が出してくれたデモもギターでジャジャジャってやってるガレージっぽい感じだったので。その持ち味は生かしたかった。ちょっと汚したバンド・サウンドで荒っぽくやりたいよねっていうところでしたね。

タクヤ:メロディの行きたい方向にね。グランジーな一発録りの感じにしたかったんです。

エンドウ.:僕らはギミカルなこともできるので、打ち込みとかも含めていろいろやるんですけど。久々にバンドでシンプルなやつをやりたいよねっていう。僕らの欲望というか、欲求が結実した感じですね。

-月蝕會議の根底にあるのは、こういう骨太なバンド・サウンドであると。

鳥男:そうですね。社会的なムーブメントを見てても、今はバンド・サウンドに回帰しているのを沸々と感じてるんですよ。

-ここ数年はロック・バンドがヒット・チャートに入ることが少なくなっているけども。

エンドウ.:バンドくる? このあと。

鳥男:バンドっぽいプロダクションが増えてるとは思うんです。

Billy:普遍的ではあると思うんですよね。バンド・サウンドって。僕たちも大好きだし。だから、エンドウ.さんがこういう提案をしてくれたんだと思うんです。「ムーンステーション」では"あ、やっとバンドで音出せる"って嬉しくなりました。

-「Ne音テトラ」は東京ビジュアルアーツとコライトした曲ですね。どういうふうに作っていったんですか?

エンドウ.:これは僕らが4チームに分かれて、曲を作って対決をしようっていうことでしたね。その1位が「Ne音テトラ」だったんです。

-ちなみにどなたのチームの曲だったんですか?

鳥男:僕です。

-スタイリッシュでクールな曲調ですね。

鳥男:それも"夜好性"みたいなのが作りたいって生徒たちに言われたんです。コライトって、まずトップライン・メンバーとトラック・メンバーっていう分かれ方をすることが一般的だと思うんです。メロディを作る人とトラックを作る人ですね。僕らのチームはトラック・メンバーが多かったんですよ。いろいろなアイディアが集まったので、それをギュってまとめた感じですね。

エンドウ.:本当にチームによって全然違ったよね。僕はトラックメイカーがひとりもいないチームだったんですよ。ヴォーカル志望だけがいる。

タクヤ:僕のチームは文筆家志望がいました。

鳥男:文学っぽかったですよね。タクヤ先輩、演劇とかもいっぱいやってるからなって、プロデューサーのカラーが出るんですよ。

タクヤ:リーダーごとにね。

鳥男:あのときはプロデューサーとしてのエゴイズムみたいなものも、ちょっと別のチームで戦うことになって垣間見られました。そういう楽曲も供養していきたいっていうところで、今回はデモの楽曲をブラッシュアップしてっていうところですね。

-歌っているのはキリンさんと?

鳥男:声優の野津山幸宏君です。月蝕會議で楽曲提供をしてるご縁もあって。

エンドウ.:ラップもできるので、こういう音楽なのでやってもらおうかっていう。前回のアルバム(2019年リリースの『月蝕會議2018年度議事録』)で提供した"ヒプマイ"(ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-)の曲(「センセンフコク」)の石谷春貴君とはまた別の感じになりましたね。

-カバー曲のほうは、かなり大胆にアレンジを変えている曲もありますね。特に、ももクロ(ももいろクローバーZ)に提供した「ロードショー」は"リロードショー"に名前を変えて、かなり大胆にバンド・アレンジに生まれ変わりました。

エンドウ.:あれは、オリジナルのほうは2 UNLIMITEDのリフを引用してるんですよ。

タクヤ:そういうオーダーだったんですよね。"これを使って"って。

エンドウ.:でも、このイントロを月蝕會議でやるとこうだねっていう感じですね。

鳥男:これはかっけぇ! って思いました。きっと「ロードショー」はモノノフ(※ももいろクローバーZのファン)さんたちに受け入れてもらってる楽曲だと思うんですけど、そういう人たちにさらにアプローチするチャンスでもあるんじゃないかなって。"え、知ってる曲だけど、違う。でも、盛り上がる"っていうような、うまい月蝕會議の味が出てますよね。

エンドウ.:僕らが提供した曲って、僕らの曲ですけど、人様の曲じゃないですか。それをカバーさせてもらうときに、そのファンの顔がチラつくわけですよ。

タクヤ:"原曲のほうがいいし"って思われるのは嫌だよね。

エンドウ.:そう、ディスられるのも嫌だし、だけど、媚びるのも嫌だし。両方で面白がらせたいなっていうのはありましたね。

-"議事録"から何曲かピックアップして話していただいたのですが、2019年から2020年にかけての2年間というのは、バンドにとってどんな時間だったと振り返りますか?

タクヤ:この2年に限らずですけど、常々いい仕事をさせてもらってるなって思います。

鳥男:そうなんですよね。(仕事が)詰まりすぎやろっていうこともなく、逆に半年音沙汰ないですけどっていうこともなく。

エンドウ.:くすぶる時間もないしね。

鳥男:ちょうどいいんですよ。クリエイターとして生きていくって、僕は精神衛生がすごく大事だと思ってるんです。仕事が多ければ多いほどいいっていうわけじゃない。多くてもダメだし、少なくてもダメだし。っていうバランスを考えたときに、このメンバーでいることによって、自分ができないときに他のメンバーが担ってくれたり、他のメンバーができないタイミングで僕がやったり。みんな、どこまででも対応できるから......なんて言うんですかね。

Billy:チーム感がある。

鳥男:うん、すごくラク(笑)。

一同:あははは(笑)!

-お互いに補い合いながら曲を作っていけるわけですね。

エンドウ.:そうですね。このアルバム、(取材の時点で)まだ曲順を決めてないんですけど。そこも、"誰か決めてよ"ってサロン会員に言ってるんですよね。

-Billyさんはどうでしょうか?

Billy:制作に関しては、今言ってくれたとおりなんですけど、バンドとしての魅力がやっぱり出てきてますよね。ひとりひとりの根っこになってる確固たる音があって、スタジオで"せーの"で音を出したときに、"あ、月蝕會議の音ってこうだよな"っていうのがちゃんとある。そういうグループだなっていうのを再認識できるアルバムだなと思います。

タクヤ:めっちゃいいこと言う。それあるよね。

Billy:サウンドを聴いただけで、その人が何を哲学として今まで音楽をやってきたかっていうのが、会話で確かめなくてもだいたいわかる。それが面白いんですよ。僕たちはいろいろな音楽を作って納品するっていうこともやってるけど、バンドで育ってきてるので。年代も近いし、例えば"ZEBRAHEADのあの曲っぽく"っていう会話もできる。そのレスポンスの早さも居心地がいいんです。

-月蝕會議っていうのは、普段プロデューサーとして仕事に徹するクリエイターたちが、自分たちの欲望とか趣味嗜好を全開にできる場所でもあるのかもしれないですね。

タクヤ:それ聞いて思い出したけど、セルフ・カバーするにあたって、コンテンツさん側に気を使うミックスから、バンドを押し出すミックスになってるんですよ。そこからも、うちらのバンドっぽさがよりわかるかもしれないですね。同じ曲でも。

Billy:忖度なしだからね(笑)。

タクヤ:声優さんが歌う曲だったら、声優さんの声が第一でしょっていうミックスをしていくんですけど。月蝕會議で出すにあたっては、ちょっとバンドの音デカくない? っていうものでいいので。そういう違いはありますね。