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INTERVIEW

Japanese

藍色アポロ

 

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Member:ナガイ(Vo/Gt) みゃん(Gt) すず木 ひろ史(Ba) 石川 雄太(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-なるほど。そんな濃厚な1年半を経てリリースされるのが初の全国流通盤『312g』です。改めてどんな作品ができたと思いますか?

ナガイ:前作が去年の9月にリリースした2ndシングルの『その白さ』だったんですけど。そこからバンドが加速していって、そのなかでもがいてる感じが出てる作品だと思います。いろいろなバンドと出会って得たエッセンスも入ってて。

みゃん:それは大きいかもしれないね。

ナガイ:いかんせん自分たちはバンドとしても世間知らずだったからね。

みゃん:2ndシングルを作るまでは、対バンもしてない状態だったので。いろいろなバンドとやっていくなかで、自分のアイデンティティを相対的に発見していけたところもあって。そこに引っ張られすぎず、自分たちのものを突き詰めた感じですよね。

すず木:それぞれができることが増えてきたなっていうのもありますね。2枚のシングルと比べて、聴いてて楽しいアレンジがいっぱい出てきたと思います。

石川:全体を通してバラエティに富んだ感じになったけど、その根本には自分たちの大好きな音楽がベースになってるんですよね。

-曲作りはどんなふうに進めるんですか? さっきアナログって言ってたから、最初はナガイさんの弾き語り?

ナガイ:いや、デモは普通にパソコンで作ります。効率がいいから(笑)。

みゃん:ははは(笑)。さっき、それ頭をよぎったんだよなぁ。

-デモの段階では、全パートが入ってるんですか?

ナガイ:大枠が入ってますね。それを各々に送って、そこからつけ足したり、こうしたいっていうのを考えてきたりって感じです。

石川:ナガイのデモにはドラムの打ち込みも入ってるんですけど、こうきたらこうくる、みたいなテンプレが全然なくて。あ、こういうビートなんだ、こういうフィルなんだってのが毎回新鮮なんですよ。それがすごく楽しいんです。

-例えば、「shinto-arts」は......これ、読みは"シントーアーツ"ですか?

ナガイ:いや、読みは"浸透圧"で大丈夫です。

-この「shinto-arts」はノリやすいテンポ感を大切にしながら、シューゲイザーっぽく展開していく曲ですけど、どういうふうに組み立てていくんですか?

ナガイ:「shinto-arts」は、もやもやとした気持ちをぶつけてるんですけど。最後のサビに向けて、それをどう表現するかを考えて作った曲です。だいたいスタジオで作っていきますね。

すず木:ノリで"こうじゃない?"みたいな感じでね。ベースで言うと、そのシューゲイザーのところにタッピングをぶちこんだりしてるんです。僕はテクニカル系のベーシストが好きなので、そういう自分の要素もバンドに合う範囲で入れてますね。

みゃん:ギターはサビで開ける感じにしたいなと思って、あえてジャカジャカ弾かず、音感が長く、ジャーンって弾いたり。随所にこだわりがありますね。

-ちなみに"浸透圧"を"shinto-arts"という表記にしたのは、どうしてですか?

ナガイ:これ、本当は"浸透圧"っていう漢字の表記にしたかったんですけど、タイトルとして目立たないなと思って。もっとかっこいいものにしたいって考えていくなかで、浸透するアートだよなと。そこに伏線とかは特にないです(笑)。

みゃん:見栄えがいいっていう感じですね。

-1曲目の「限界高速」は爆発力のある曲ですね。

ナガイ:これはバンドを組んだ最初のほうに作った曲で。そのときは処理できずに、1回没にしてたんですよ。歌詞のイメージとしては、どこかに感情をぶつけたいのに、どこにぶつけていいかわからない男の子が走ってるような感じですね。Aメロとサビ、サビで終わりっていう。言いたいことを詰め込んだら、それぐらいで終わっちゃったんです。こんなに速い四つ打ちはなかったから、他の曲とはテンポ感やビートも違うし。自分たちなりに新しい曲ができたなと思います。

みゃん:この曲を作ってるときは、ギターで悩んでる時期だったんですよ。

石川:あ、そうだったんだ?

みゃん:イントロのあて方とか、音使いの点で。ナガイに言われたのが、"イメージどおりにあてはめるだけじゃなくてもいいんじゃないか"と。

-捻じれてるんですよね。

ナガイ:そうそうそう。

みゃん:そういうのを言われて、最初は単音カッティングみたいな、ダンス・ロックみたいな感じで作ってたんですけど、違うなと思って。すごく変則的なアルペジオで弾いてるんです。

ナガイ:ベースもAメロでちょっとゆったりした長音を入れてるとかね。そういう捻くれた感じがいいなと思うんですよ。

みゃん:それが藍色アポロらしさというか。そういうのが大事なんだなってのが見えたのが「限界高速」でした。

-今作の制作を振り返ると、"藍色アポロらしさはなんなのか"っていうのを、少しずつメンバーと摸索しながら進めていくような感じだったんですかね。

ナガイ:そうですね。今日はスタジオでこの曲のアレンジをやろうって決めるんですけど、そういうとき、僕は言葉で伝えるのが下手で。メンバーが自分の思ったとおりのものを持ってきてくれなかったときとか、すげぇギスギスするんです(笑)。

みゃん:スタジオの雰囲気とかもね。

ナガイ:僕が勝手に怒ってるだけなんですけど。今回、特にリード曲の「mind」とかは、今まで藍色アポロで出してこなかったような、僕が好きなものをあえてバンッて詰め込んだので、周りはすごく大変そうでした。いや、そうじゃない、こうなんだよって。特に石川は不満が溜まってたんじゃないかなと思います(笑)。

石川:何回かスタジオに行くのが怖かった(笑)。

一同:あははは!

-リード曲の「mind」は変拍子で進んでいくスロー・テンポですね。音像の中に、衝動とか虚無感みたいなものが漂っているというか。

ナガイ:「mind」は歌詞も他と違うんですよね。わりと内向きの曲なんですよ。自分の心情を書いたというか。今は大変な世の中で、思い悩んでる人が多いと思うし、自分がやりたいことを遮ってくるものがすごく多いと思うんですよ。そういったなかで、どういう曲を届けたらいいかを考えてて。自分なりの答えですね。ただ単に"元気出せ"とか、"大丈夫だよ"って言うんじゃなくて。

-ということは、書きたいテーマを先に決めて作っていったんですか?

ナガイ:そうです。ギターをジャカジャカ弾いて、このコードを使おうって決めたときに、これなら僕が日頃思ってる感情をぶつけられるんじゃないかって作りました。

すず木:最初はどうなるかわからなくて大変だったけどね。

みゃん:大変だったけど、楽しかった。自分たちが好きなバンドを聴き込んで、それを素直に出せた曲なんです。

-リード曲を「mind」にするかはかなり悩んだそうですけど、この曲でいこうっていう決め手になった理由は何かありますか?

ナガイ:完全な直感ですね。「mind」とか、「透明とアシ」あたりが最後のほうに同時ぐらいにできたんですけど。「mind」ができた瞬間に、それまで「色褪せる」だったり、「shinto-arts」だったりで迷ってたのがすべて崩れるぐらい、「mind」がリードだってなったので。今までの自分たちにない一面を見てもらえるっていうのも大きかったと思います。

-「透明とアシ」と「mind」が同時期にできたっていう話は納得感があります。「透明とアシ」も、「mind」と同じぐらいナガイさんの心情が出た曲だなと思うんですよ。

ナガイ:そうですね。でも、サウンドの表現は全然違うんです。

-ポップですもんね。

ナガイ:そこの良さに気づいてほしいなと思って、「透明とアシ」は最後にしたんです。すごく明るくてポップな曲なんですけど、それまでの4曲を踏まえて、結局こんな気持ちを持ってるんだよってところに気づいてほしいというか。

-未来への希望を持っていたいというような?

ナガイ:そうです。「mind」は内向きにそれを書いたんですけど、「透明とアシ」はそこから駆け上がってっていうイメージですよね。"跳躍"とか、"踏み込む"とか、そういう言葉が含まれてるので。もやもやとした感情から一歩抜け出したいなって思って書きました。

みゃん:それ、初めて聞いた。

ナガイ:普段は歌詞の話はしないからね。

みゃん:勝手に、カタカナの"アシ"っていう表記にしてるのは、いろいろな意味があるんだろうなとは思ってたけど。

ナガイ:legの足/脚にしちゃうとね、それだけの意味になっちゃうから。

みゃん:植物の葦なのかなとか考えられるもんね。

-歌詞の節々に解釈の余地を残した作品になったと思いますけど、ナガイさんとしては、全5曲を通して訴えるメッセージがあるとしたら、どんなものだと思いますか?

ナガイ:芯を持て、ブラすなっていうことですね。今僕たちの曲を聴いてくれてる人たちは高校生が多いと思うんですよ。多感な時期で、将来に対して悩みがちな年齢だと思うんです。そのなかでも、自分の信念とか、なんでもいいからやりたいことを持っていてほしいっていう想いはあります。少なくとも僕はそれで大丈夫だったので。

-最後に、"312g"というタイトルはなんの重さを表しているんですか?

ナガイ:それは言わないようにしてるんです。

みゃん:考察スレとかでいろいろ議論してほしいよね。

ナガイ:YouTubeのコメント欄で歌詞の考察をしてくれてる人がいて、めちゃくちゃ面白いんですよ。こういう捉え方してるんだって。そういうのが嬉しいんですよね。