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INTERVIEW

Japanese

MINOR THIRD

2021年03月号掲載

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Member:長嶋 水徳(Gt/Vo) koudai.(Ba) 田中超あすか(Dr/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

-ちなみに今、長嶋さんは長嶋水徳- serval DOG -名義でソロでも曲を発表していますが、ソロとバンドとで線引きしているところはありますか。

長嶋:結構ありますね、バンドではできないことをソロでやっていて。私は宅録が趣味なんですけど、毎日日記のように曲を書いてはSoundCloudにアップするみたいな時期があって。バンドではギターを轟音でかき鳴らしたいけども、ソロではもっと歌メロを意識したものを作りたいなという思いがありますね。そこの線引きはあって、ちがうものにしたいな、という感じです。

-ちょうど、MINOR THIRDが配信でのリリースをスタートしたのが昨年の3月くらいで、コロナ禍があって思うようにライヴができない時期だったと思うんです。せっかくリリースが進んでいくなかで、なかなかライヴ活動ができないもどかしさみたいなものは感じなかったですか。

長嶋:そういうことも感じたんですけど──

田中:結構いい休みだったなというのもあって。

長嶋:うん、ある意味いい休みだった(笑)。活動できないさみしさはあったんですけど、私たちはライヴ至上主義のバンドではないと思っているので。ただコロナ禍で逆にできたこともあって。Bedroom Radio ClubというYouTubeのラジオ・コンテンツに参加させてもらって、普段の私たちがしゃべっている動画を上げたりしていて。MINOR THIRDをちょっと身近に感じてもらえるような動きがあって。ライヴはできないけど、その間に新曲を書いたりもできたので。

田中:うん、意外とみんな楽しんでいたかなと思います。

koudai.:そうだね。

田中:バンド活動をしているときは、根詰めてやっていることが多かったので。ある意味ラフに、活動はできたかなっていう感じがしますね。

-ライヴを重ねてきての変化はありますか。

長嶋:2019年の後半くらいのライヴは私がヤバかったです。

田中:荒れてたね。

koudai.:同じ頃、あすかもお休み中だったりもしたしね。

田中:荒れてましたね。でもなんだかんだとサポートを入れてライヴ活動はやってたんだよね。

長嶋:当時は10代だったから、とにかく衝動が先立っていて。なんかもう殺してやるくらいの勢いだった。

-お客さんみんな敵だみたいな。

長嶋:ホントそんな感じでしたね。

-今は心持ちがちがいますか。

長嶋:今はちゃんとお客さんに聴かせたいという思いで、私も歌を歌うようになって。ヴォイス・トレーニングに通い始めて、歌をちゃんと聴かせたいなっていう思いが最近は強いですね。

田中:あとはメンバー内の雰囲気も変わった。変わったよね?

koudai.:変わったかな?

田中:10代を抜け出して20代になって、ある意味大人になったというか、丸くなったというのかわからないけど。

koudai.:柔らかくなったのかな。互いの信頼関係がさらに良くなったのかな。

-長嶋さんがボイトレをしたりして、歌をちゃんと聴かせようとなったのは、伝えたい相手みたいなものが見えてきた感覚があるんですか。

長嶋:ライヴで初めてMINOR THIRDを観る人に、ただヤバいバンドっていうのじゃなくて、歌も歌えてちゃんとしたバンドだよということを伝えたい気持ちが強くなりました。"未確認フェスティバル"とかに出ていた10代の頃は、衝動で突き動かされていただけなんだけど、楽曲の良さをもっと伝えるには歌が重要だなって思ったから。初見の人に伝えるためにもヴォイス・トレーニングに通おうと思って、始めました。

-そうですね。この曲が持ってる強いエネルギーやパワー、曲に流れるメッセージは、まだこういう音楽をどこかで待っている、求めている人に届いてほしいなって思うんですよね。

長嶋:届けたいなって思います。今回ミニ・アルバムを出すにあたっても、届けたいという思いが強くて。そのためには歌がちゃんと聞こえないと意味がないと思いました。

−そういった歌はもちろん、『THE NEGA』ではサウンド面の遊びやアレンジの面白さもありますね。「ゴクラクチョウカ」などはレゲエ調で、アレンジへのこだわりが見えますが、今回はサウンド的にトライしたことも多いですか。

田中:「ゴクラクチョウカ」では冒頭で初めてパーカッションに挑戦しました。レゲエっぽいサウンドにしたくて。それだとドラムだけじゃダメだなっていうので。パーカッション入れてみたくない? っていうので、やってみました。

-もともと「ゴクラクチョウカ」はレゲエっぽいアレンジにしようという感じだったんですか。

長嶋:これは、最初は私が弾き語りで持っていった曲で。

田中:そうだ。

長嶋:この曲をレコーディングするにあたって、私が改めてデモを作って、そのときにレゲエ調にしたんです。さらにレコーディングするときに、ガラッと雰囲気を変えてみたいよねっていうのでパーカッションを入れてみましたね。

-この曲はベースも際立ちますね。他の曲とはちがう存在感を見せるベース・ラインで。

koudai.:他の曲では歪ませたりとか、地を這うような強めのアタックのあるサウンドなんですけど、この曲ではクリーンな音で作っているので。あとはメロディックなフレーズをずっと弾いているのもあって、キラッとしたベースの存在になっていますね。

-さっき言ってた喜怒哀楽の"怒"が強い音楽だと、若さ迸るパンキッシュなイメージを持たれがちだと思うんですが、こういうサウンドの幅広さであるとか、アレンジの遊びを持っているというのは大事だなって思います。宅録好きの長嶋さんが、アレンジの面でどんどんアイディア広がってしまう感じもあるんですかね。

長嶋:そうですね。ハイハットをどこに入れるかとか、どこでオープンするかも細かく指定したりしますね。ベースに関しては、私自身もベースは弾くんですけど、koudai.とはちがってピック弾きでパンクっぽいベースなので。ベース・ラインは、koudai.に委ねていますね。

koudai.:ただ、自分はずっとベースを弾いていたし、専門学校で習ったからこその技術とかはあるんですけど。水徳が作るベース・ラインのいいところで、ここは絶対に変えたくないなという部分は、水徳の作ったもので弾くようにしていますね。ベース弾きじゃない人が作ったからこその、いいところがあって。そこは尊重して弾いている感じです。

-「もう何もかも暗がり」は間奏パートのジャムっぽいところもグッときますが、クライマックスへと向かう流れがドラマチックでカタルシスがありますね。ドラマ性が高い曲です。

長嶋:このラスサビにすべてを、命を賭けてますね。この曲は"未確認フェスティバル"が終わったあとに作った曲で、19歳のときに作っているんですけど。イントロにあるようなギター・リフをメインとした曲がひとつ欲しいなと思って作っていたんです。

-閉塞感のある内容になっていますが、作った当時の心境がこの歌詞に練り込まれてますか。

長嶋:さっき尾崎 豊さんが好きだと言ったんですけど、尾崎 豊さんの"NOTES: 僕を知らない僕 1981-1992"という、日記やライヴの反省を綴ったものとかが詰まった本があるんですけど。「もう何もかも暗がり」に"騙されてるみたいだろ?/騙されてるみたいだろ?"っていうリフレインがあるんですけど、尾崎 豊さんのその本を読んでいて、それに近いものがあって。あの方の残してるものにも、"騙されてるみたいだろ"っていうリフレインをずっと書き綴っている文章があるんです。尾崎 豊さんの曲には、アスファルトとかクラクションという言葉が結構出てくるんですけど、「もう何もかも暗がり」でもそういう光景が出てきて。この曲は尾崎 豊さんの影響をすごく受けている曲ですね。

-曲になるというのは、何か自分のどこかと重なったということでしょうね。

長嶋:そうだと思います。"未確認フェスティバル"が終わって、今後MINOR THIRDはどうなっていくんだろうという不安、黒い靄みたいなものがずっとあって。暗い道を走っていくのかなみたいな不安があったんですよね。その心境と重なってこの曲はできました。

-テンポこそスローな曲ですが、ものすごく歌を豪速球で投げられている感触がありました。「セッションが苦手な僕でも」では、ヒリヒリとした緊張感がある曲ですね。

長嶋:この曲はMINOR THIRDを結成するにあたって、最初に私が作った曲で。この曲から始まったんです。"未確認フェスティバル"もこの曲で通ったっていう感じだったよね?

koudai.:そうだね。

長嶋:これは私のちょっと文学的な歌詞の世界観と、でもサビでは開ける感じをミックスしたもので、不思議な曲だとは思うんですけど。初期の大作っていう感じだと思います。

-そう聞くといろんなバンドの変化もわかって、この歌詞ってすごく言葉を尽くしてる感じがあるんですよね。他の曲ではもう少しキャッチーさや、ワンセンテンスで刺すような強さがあるなと思っていて、そういうことではこの曲での饒舌さはある種、貴重なものです。

長嶋:そうですね、文学も好きだったので。この曲の歌詞は、差異、ズレのことを歌っていて。このセッションには、音楽だけではなくて、人と人との関わり合いという意味でのセッションも含まれているんですけど。人との関わり合いの中で起きるズレみたいなもの、心のズレや軋轢を歌っている曲で、それがなくなったときに初めて、音楽っていうものが鳴るんだろうなっていう歌詞で終わるんです。この曲は結構、私が今まで蓄えてきたものを使った、ポップを意識したというよりは、詞を意識した曲で。これは本当に初期の私の作品だなという気がしています。

-曲ができたときも手応えはあった。

長嶋:そうですね。この曲はサビからできたんです。サビからできたとき、このサビいけんじゃね? っていうので、手応えはありましたね。

koudai.:最初に曲がきたとき、高校のときとは全然ちがうなって。こういう感じなんだっていうのは1曲目にきて、たしかに思いました。最初にやったときはボロボロだったけど、できあがったときはこんな感じになるんだと思って感動しましたね。