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INTERVIEW

Japanese

君ノトナリ

2019年07月号掲載

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Member:鈴木 穂高(Vo/Gt/Key) 末永 優磨(Ba)

Interviewer:稲垣 遥

-前回のインタビューで鈴木さんが、BUMP OF CHICKENをよく聴いていたとおっしゃっていましたが、「彗星」からはそんな影響も感じられます。ライヴハウスでも染みると思うのですが、野外でも聴いてみたいような、開放感のある曲ですね。この曲はどのようにできていきましたか?

鈴木:この曲がまさにお題シリーズ1作目ですね。"BPM140~150の間のシングル曲を"といったお題でした。家の中で1日中BPM140のクリックを鳴らしていて、ぽろっとギターをつま弾いてたら"夜の帳が~"って出てきて、そこからは早かったですね。サビはもともと別のメロディだったんですが、プロデューサーに"さらに引っかかる箇所が欲しい"って言われて書き直しています。Aメロのギターのディレイのフレーズは、夜の街を駆け回っているイメージで入れたので、開放感や疾走感を感じてもらえたようで良かったです。たまたまですけど、僕らのリリースの次の週にBUMP OF CHICKENのリリースがあるので、フォロワーとしてはやっぱりなんだか嬉しいですね(笑)。

-前作以降、2017年、2018年と自主企画も行ってきて、ライヴで得られる手応えというのも大きくなってきたのではないですか?

鈴木:そうですね。まず大きい変化としては僕ら自身が"ライヴが楽しい"と思えるようになったことです。今までは心のどこかで"こなさなきゃいけない"みたいな使命感のような感覚があって、淡々と楽曲を演奏していたんですけど、自主企画やツアーを通してたくさんのバンド仲間と出会い、"ライヴ感"とは何かを掴み始めたような気がして。例えば、僕のMCは原稿を用意せず、その瞬間の感情を伝えるようにするとか。ライヴという生ものに対する気持ちや意識の変化がありました。

末永:ライヴのあとに対バン相手に"かっこ良かった!"って言ってもらえるようになりましたね。今まで、(対バン相手は)なんとなく"良かったよー"なんて当たり障りのないことを言ってくれている感じでしたけど、一緒にツアーを回ったりしたバンドに"観るたびにかっこ良くなっている"とか"今日は負けたわ、最高だった"とか言ってもらえたり、僕ら自身もライヴが終わったあとの達成感、"今日は出し切った"みたいなものがあったりして、今までとはライヴ1本に懸ける熱量が全然違いますね。

-「星をかった日」は、ミドル・テンポで音数が多くなく、リズムに重みを置いている感じがあって、サビ前のベースの音が心地いいです。ラスサビ前もベーシスト 末永さんにスポットが当たる部分かなと思いますが、こだわりはありましたか?

鈴木:僕がこの曲を書いたのは、三鷹の森ジブリ美術館にある土星座という劇場で公開されている"星をかった日"という作品に感動して、この作品に曲を書きたいと思ったのがきっかけです。もともとはギターレスでシンセ・ベース、ストリングス、ピアノ中心のアレンジだったんですが、バンド・サウンドにアレンジし直していくうちに洗練されていって今の形に落ち着きました。シンセ・ベースで弾いていたフレーズをエレキ・ベースで実際に弾くことになって、細かいタッチやニュアンスについては結構試行錯誤しましたね。

末永:そうですね。他の楽曲に比べて特にグルーヴィなプレイを意識しました。ベーシストとしての腕が試されるような曲ですね。

-「星をかった日」で鳴っている音はピアニカでしょうか? それがセンチメンタルな懐かしいムードにしていて、過去を思い返すようなこの曲に重要な役割を果たしているなと思いました。

鈴木:ピアニカですね。あのフレーズはもともとピアノとストリングスのユニゾンだったんですが、乾いたドラム、アコギやカッティングのギターの上で鳴る音色として、どこか懐かしい、色褪せた手紙のようなセンチメンタルな空気感が出て、ピッタリとハマったと思っています。

-「Twilight」は"あくびをうつして/君を近くに感じて"など、日常の幸せが温かく、そして美しく描かれているなと感じました。最近の若手シーンでは、生々しい描写やヴィヴィッドな切れ味のある言葉をあえて使うことも多いですが、君ノトナリはひたすらに美しい言葉選びをしている印象があります。そこにこだわりはありますか?

鈴木:僕、作詞作曲はいつも同時進行で、言葉とメロディがお互いを選び合って出てくるみたいな感覚があって、だからと言って単純に"歌詞"としてメロディありきで書いているというわけではないんですよね。"詩"という読み物のひとつの作品として意識しているからこそ、言葉の並びの美しさとかも気にしているのかも知れません。今こうしてできあがったものを聴くと、今作のアルバムは"失った大切なもの"について触れている曲が多いなぁと思いました。日々ダラダラと続いている日常って幸せなんだなぁと。そんな日々が続くことをきっと誰もがそういう平穏を心のどこかで願っているんじゃないかなぁって。例えば、僕、二度寝する瞬間がたまらなく幸せなんですよね。何か考えているようでいないようなまどろみの中でぼんやり幸せを感じるというか。「Twilight」は、そんな朦朧とする意識の中ですらも"あぁ、幸せだなぁ"って思ったり、対象物を大切に思うがゆえに、その対象物との別れを想像したときの胸の痛みすら愛おしく思ってしまったりするような、誰もが意識せずとも持ち合わせているそういう感覚、感情を詞に落とし込もうとしたらこういう言葉たちになりました。強いて言えば、僕が書く曲の中で最も生々しいんじゃないですかね。

-「真夏のオリオン」は、クラップ音が入っているなど、ライヴでも盛り上がりそうなポップで明るい1曲で、こちらもアルバムのアクセント的な曲になっていると思います。この曲はどのようにして生まれたのでしょうか?

末永:僕の家で穂高と遊んでいるときに、僕の左利き用のベースを穂高が逆さにして弾き始めて、そうしたら作曲者 穂高の才能が目覚めて、"アイドル・ソング作るわ"とか言って、そのまま逆さにベース弾きながら歌い出したんですよ。穂高が帰ってから数分後にアコギで弾き語ったこの曲が送られてきて、最高にいい曲だったんで、"あぁ、こいつ天才だ"って思いましたね(笑)。

鈴木:(笑)僕史上最速で書けた曲ですね。ライヴで演奏するのもお客さんの反応も楽しみですし、海辺で女性アイドルに歌ってほしいですね。マジで。

-今回、制作において大変だった曲や、思い出深い曲はありますか?

鈴木:「夜光声」ですかね。ワンコーラスが書けてからしばらく、フル・コーラスを書こうとしたり、バンド・アレンジを考えたりしていたんですけど、そのうち、"もしかしたらこの曲はこの弾き語りワンコーラスの状態が一番いいんじゃないかな"と思うようになって、プロデューサーにも話したら"同じこと考えてた。その方向でいこう"ってなって。今までワンコーラスだけの曲って書いたことなくて、なんとなく"フル・コーラス書かなきゃいけないんだ"っていう使命感が心のどこかにあったので、ここでも自分の作曲スタイルが新しいステージに到達した気がしました。あと僕、レコーディング期間中手首を骨折していて、サポーターしながらギター弾いてはアイシングを繰り返していたんです。中でもその「夜光声」は全編アコギの指弾きなので、力の入り方で細かいニュアンスが全然変わってしまわないように意識しました。

末永:僕は「CLOVER」に苦戦しました。何度も何度も録り直しましたね。それはもう何十回と(笑)。ただ落ち込むというよりは、もっと良くできるみたいな気持ちで。愛ある温かいこの曲を作った穂高に僕自身すごく救われました。録り終えたときの達成感は一番ありましたね。


無人宇宙船ボイジャーのゴールデン・レコードのように、君ノトナリの"GOLDEN RECORD"を誰かが見つけ、アクションを返してほしい


-また、今作のタイトルは"GOLDEN RECORD"と言いつつ、ジャケットはシックなデザインというのも意表をつかれましたが、こちらは何か意図があったのでしょうか。

鈴木:タイトルの"GOLDEN RECORD"は無人宇宙船ボイジャーのゴールデン・レコードから付けています。君ノトナリという宇宙船が積んだ"GOLDEN RECORD"を誰かが見つけ、そしてアクションを返してくれることを祈って名付けました。ジャケットは、"物置を整理していたら見つかった古書"をイメージしています。初めからすぐ側にあって、ただ見つけてもらえる日を待っているみたいな。ディスクの面のデザインにも全部意味があるんですが、それはボイジャーのゴールデン・レコードのように解読してもらえる日を待っていようと思います(笑)。

-改めて、『GOLDEN RECORD』はおふたりにとって、どんな作品になりましたか?

鈴木:初めてのフル・アルバムにしてベスト・アルバムのようだなぁと。これがこれまでの、そしてこれからの君ノトナリだという決意表明でもあり、自己紹介でもある1枚になったと思います。

末永:君ノトナリ、レーベル関係者やプロデューサー、作品に携わるすべての人たちと、このアルバムができるまで、最高のものを探し出せるまで、本当に長い時間をかけてようやく見つけ出すことができました。初のフル・アルバムなので、また新たに君ノトナリの存在を知っていただけるのではないかなぁと。一曲一曲に全力を注ぎ込んだという意味でもベスト・アルバムだと思います。

-アルバム完成後の7月6日にはワンマン・ライヴを開催されますが、意気込みを聞かせてください。

鈴木:まずは日付を延期することなく行えることを、サポート・メンバーをはじめとする関係者に感謝したいです。あとはもう当日を楽しむことに尽きるかな。同じ空間にいる人たち全員が幸せな気持ちになる日にしたいです。

末永:ワンマンということで、僕らだけを観に来る、僕らを応援してくれているひとりひとりの方に今できる最高の音楽を届けたいですね。

-では最後に、今後の目標を教えてください。

鈴木:早速ですが、このアルバムを超える作品を作り続けたいです。常にベストを更新していきたいですね。会場の規模も大きくしていきたいです。

末永:このアルバムをたくさんの方に、海外の方にも届けられたらなと思っています。君ノトナリを見つけてもらいたいですね!