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INTERVIEW

Japanese

postman

2019年04月号掲載

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Member:寺本 颯輝(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-そうですね。前作よりも自分の心情をさらけ出しているなとも思いますし。

前は取り繕うところがあったな、と思うところもありますね。自分が言われて嬉しい言葉を書いているだけでは、表現の幅は狭くなってしまうし、自分の都合のいいようにしか考えられなくなってしまうと、結果的に自分にとっていい方向に動けなかったりもする。今回は自分の弱い部分を"弱い"としっかり認めて、それに対して肯定も否定もちゃんとしたかった。正直なアルバムですね。

-なぜそういうモードになれたのでしょう?

去年全国流通盤を出してやっとスタート地点に立ったことで、いろんな地方のお客さんやバンド、レーベルの方々......たくさんの人に出会ったんです。いろんな人、いろんな場所、いろんな状況を知ることで、より深く物事を考えるようになって、そしたら弱い自分や醜い自分、いろんな自分にも出会っていって。より深く考えることの正しさを知りました。僕は今20歳なので、同世代も自分自身のことについて考えることが多いと思うんです。音楽を聴いてただ"楽しい"だけではなく、音楽がどういう力や意味を持っているかを考えて聴いていただけると嬉しいですね。

-"夜"は深く考えるのにお誂え向きの時間ですしね。

自分でもびっくりするくらいどんどん"Night bloomer"というタイトルに合う曲ができていって。単純な"夜"というものではなく、自分にある"夜"という概念を表すことができたなと思っています。"自分の中にある日付が変わる"みたいな......殻や常識を破るとか、そういうことをちょうどしたい時期だったんだろうなと。

-と言いますと?

全国流通盤を出してpostmanの音楽が多くの人に広まったのはいいんですけど、"postmanってこういうイメージだよね"というイメージが少しずつできあがってきてしまったのがちょっといやだったんです。だから、そのイメージどおりにいかないようなアルバムを作りたいという意識がどんどん芽生えていって。

-そうですね。postmanの楽曲は一聴するとまっすぐな印象を与えますが、そこはかとなく反骨精神を感じる部分があります。

(笑)結構ひねくれてると思います。曲順も最初は「GOD」を1曲目にしようとしてたくらいで。

-ははは(笑)。「GOD」のギター・リフはハード・ロック・テイストで、こんなアプローチもするのかと驚きました。

父親が聴いて"これ超いいね!"って言ってました(笑)。一切デモも作らず、歌詞で歌いたいことも決めないで、スタジオでセッションしていくなかでできて、レコーディング直前に歌詞を書いた曲なんですけど、そういう流れで1曲かたちにできた経験が初めてだったんです。一番刺激的で新しい作り方だったのはこの曲ですね。「(A) throb」で問題提起をして、「夜明けを待たずに」で結論を出したところに"まだこんなのもあるよ"というのを見せられたらなって。

-たしかに、この曲だけ"夜"のニュアンスもなくて。

ほかの7曲で歌っている"夜を越える"、"枠を壊す"という概念を別の観点から表現できたと思ってますね。運命のような決められているものは、枠と同じだと思うんです。運命に逆らうなかで、一番壮大で想像がつかないものは神だなと思って、このタイトルを付けました。だから最後の曲としてもいい役割になったと思います。こういう曲がpostmanにあることをみんなに知ってほしいですね。

-うんうん。バンド力で生まれたサウンドが、寺本さんの心を焚きつけた部分もあるんでしょうね。

そうですね。最後のギター・ソロとか"あっ、こんなソロ弾けるんだ"と思ったし、俺もRED HOT CHILI PEPPERSやRAGE AGAINST THE MACHINEみたいなバンドも好きなんで、そういうことができるスキルがようやくついてきたところもあります。「夜明けを待たずに」とは違う意味合いで、バンドにとって大事な曲になりました。これからこういう曲ももっと作っていきたいですね。

-どの曲も、楽器隊が歌詞で伝えたいことを理解したうえで、歌詞のメッセージを届けようとしているのが伝わってきます。

3人とも自分自身が思う楽曲に合うフレーズや音色を考えたり、曲のカラーを汲み取っていったり。プレイヤーとしてだけではなく、表現者としての目線や考え方も持っていると思います。だから前作以上に4人全員の自分から生み出したカラーが濃く出てるかなと思うし、そこから気づくこともたくさんあったんです。

-気づくこと?

「紫陽花」は弾き語りから作った曲で、あえて展開が少ない、ずっと同じテンション感の曲にしたいなと思って。それでコンセプトやイメージを伝えたらメンバーが"そのコンセプトならこういう表現方法もアリだよね"と提案してくれたり、俺が明確に表現できないことをスッと"それってこういう意味だよね"とか"こういう人に聴いてほしいね"と言葉にしてくれたりして、"そうか、自分はこういうふうに歌いたかったんだな"と思ったりしたんです。「(A) throb」は(兼本が)タイトルと掛けてギターを鼓動のように一定の音にしたり、歌詞の内容を汲んでディレイのリバースを使ったりしていて......なるほど、とびっくりしましたね。

-3人ともまさしく、"ほんとこいついい奴なんですよ!"というよくある台詞に出てくる"いい奴"なんでしょうね。

あははは(笑)。やっぱりもともとのスタートが友達なんで、バンド活動のひとつひとつが作業的ではないんですよね。

-話していただいたことすべてが、『Night bloomer』が色彩豊かで1本筋の通った作品になった理由という気がしました。このCDをきっかけにさらに幅広く、いろんな人と出会えるようになるのでしょうね。

うん、そうですね。だから『Night bloomer』を出してからどんな日々になるのか、すごく楽しみなんです。この前サーキット・イベントの公開リハで「GOD」を演奏したら、postmanを観ようと思って会場に入ってきた人が、場所を間違えたと思ったらしくて(笑)。僕らとしては"よしよし!"って感じでした(笑)。もっとイメージを壊して、超越して、それでも"postmanいいね"と言われるくらいになりたいですね。