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INTERVIEW

Japanese

THE君に話すよ

2017年08月号掲載

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Member:片野 メランコリー(Vo/Gt) 小野くん(Ba/Cho) よてろう(Dr/Cho)

Interviewer:岡本 貴之

-そういう使命感みたいなものってどこから来てるんでしょう。曲を作りだしたときからそういうものがあったんですか。

片野:言われてみれば、最初からありましたね。16歳のときから。自分の感じたことを言葉にしなければいけないというのは、最初はバンドじゃなかったんですよ。小説を書いていて、いろんなところに送っていたんです。もともと、思ったことを言葉にしようというのはあったので、それが音楽に繋がるのはもう少しあとになってからでした。

-それはやっぱり、読んできた本とか聴いてきた音楽からの影響が大きいですか?

片野:あとは、映画もすごく根底にありますね。僕は"フォレスト・ガンプ/一期一会"がすごく好きで、曲を作るうえでいつもフラッシュバックするんです。自分の人格すら形成しているんじゃないかっていうくらいの作品で。その中で、ジェニーというヒロインが死んでしまって、主役のトム・ハンクスがお墓の前で言う言葉が残っていて。それは"僕たちは、ただ運命に流されていただけなのか それとも風に吹かれて漂っていただけなのか わからないけど、僕はどっちもあるような気がする。人生とはそういうものだ"みたいなセリフなんですけど。人生を話すときに、すべてそこに詰まっているような気がして。運命に抗う人もいれば運命に身を任せる人もいるし、でもどっちでもなくて、人生とは全部なんだなっていう。そこが自分の礎になっていますね。ちょっとわかりづらいかもしれないですけど。

-あの映画自体、すごくわかりやすい映画ではないですもんね。自分なりの解釈ができる映画というか。

片野:そうですね。ガンプっていう少しネジの抜けた男性と、生活自体のネジが抜けた女性が恋をして、死んでしまうっていう、ただそれだけの映画なんですけど。僕は人生のすべてをその中に感じてしまっているんです。

-では、メンバーのみなさんそれぞれが今回特に聴いてほしい1曲を挙げてもらえますか。

小野:「あなたの夜が終わったら」は、僕が入って初めてレコーディングした曲なんですけど、一番この曲に片野らしさが出ていると思っていて。すごく暗いんですけど(笑)、なんとなくそのときの片野の状況とかを考えて"あぁ、このことかな"って思うところもあったりして。この曲は"夜"っていうワードを多用するんですけど、すごく片野らしさが出ている曲なんじゃないかなって思っています。

よてろう:僕は「自転車とチョコレートドーナツ」ですね。去年の夏くらいだったと思うんですけど、アルバムを作ろうってなったとき、一番曲作りで苦戦していた時期にできた曲なんです。できた当初は、なんか納得がいかない状態だったんですけど、アルバムに入れるか入れないかって改めて聴き直したときに、すごく良かったんですよ。行き詰まってはいたんですけど、音楽に対してストイックだったなっていうのがあるんです。自分を含めてみんなの演奏がすごく良くてカッチリハマっていて、聴いていて気持ちいい曲です。

片野:僕は「少年ジャンプデストラクション」にすごく思い入れがあります。この曲は、友達に書いた曲で。自分自身が、大人になってしまっている現実というか、精神と肉体の乖離というか、自分はまだ子供だと思っているのに身体は大人になっていく状態というのは少なからず誰しも感じることだとは思うんですけど、自分は他の人に比べても全然子供だなと思う瞬間があって。友達にもそういう奴がいるんですけど、僕も彼も"週刊少年ジャンプ"がすごく好きで、今もふたりで話したりするんです。それは何年経ってもずっと変わらないと思っているんですけど、そいつは"いろんなことに疲れた"って言っていて。"どうにかしたいけど、どうにもできない"って。そんなふうに僕らは大人になってしまっているけれど、でも"少年ジャンプ"が好きだし、少年のままでいいじゃんって、その友達に向けて書いた曲です。

-お話をうかがっていると、常々人生とかについて考えを巡らせている感じがしますね。

片野:そうですね、常に考えてます。それって、精神衛生上あんまり良くないことだと思うんですよ。でも僕は、落ち込むこと自体も、人生の素晴らしさのひとつだと思っているんです。葛藤とか苦悩することって人間だからこそできることだと思うので、それすらも大事なもの、なくしたくないものだと思っていて。それはそのまま出していければなって。

-いろんな曲に"行こう"っていう歌詞が出てきますよね。どこに向かっている"行こう"なんですか?

片野:"ここじゃないどこか"です。ここがつらいなら、じゃあ進めばいいっていうことを思っていて。自分の中で暗い気持ちを持っていてもいいから、そのままでもいいから行こうっていう。だから進みたい先は、"ここじゃないどこか"。それが別に新たな絶望でも構わない、なんならその先が"死"でも構わないとすら思っていて。どこに向かうかということよりも、その先に進む意思自体が大事だと思っているんです。その気持ちを持って、別のところに行こうよ、という意味での"行こう"です。

-改めて『この耳鳴りに出会うまでのすべて』についてひと言ずつお願いします。

小野:『この耳鳴りに出会うまでのすべて』は、聴いて共感してくれる人が多いと思うから、聴いて考え込んでほしいですね、迷路に迷い込んでほしい(笑)。

よてろう:基本的には暗いといえば暗いんですけど(笑)、"行こう"っていう言葉みたいに、暗いだけで終わらないというか、"次に進もう"っていう一縷の希望みたいなものが入っていて、共感だけじゃなくて聴いてもらった人を変える力もあると思うので、いろんな人にこのアルバムが届いてほしいです。

片野:"この耳鳴り"というのがこのアルバムでも他のことでも別に構わないと思っていて。誰かに出会った衝撃だったりとか、自分の中で感情が沸き立った映画であったり、小説であったり、そういうものすべてを"この耳鳴り"という言葉にしているんです。それに出会うまでのすべて、というのは人生のことなんですけど、たくさんの出来事があるからこそ、"この耳鳴り"に出会えたし、それによって今変われるっていう意味なんです。この1枚を聴いて、今までの自分が経験したものすべてとか、これから出会うものについての期待や希望を感じてもらえたらなって思います。