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INTERVIEW

Japanese

ヨルシカ

2017年07月号掲載

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Member:n-buna(Gt/Composer) suis(Vo)

Interviewer:秦 理絵

-人間的な活動をするっていうなかでヴォーカリストは必要だと思うんですけど、ベースとかドラムとか、他のパートのプレイヤーは必要ではなかったんですか?

n-buna:あんまり考えてなかったんですよね。バンド形態の活動というよりは、ひとつひとつ完成した作品を作りたいなと思ってたので......うーん、なんて言ったらいいんだろう。

-他のメンバーがいるとヨルシカの世界観がブレちゃいそうなのが嫌だったんですかね?

n-buna:あぁ、そうかもしれない。例えばバンドっていう概念で言ってしまったら、一般的にみんなで楽器を持って演奏するMVが思い浮かぶじゃないですか。そうじゃなくて、もう"ヨルシカ"っていう、それ自体が作品になるような。で、その下にいろいろな作品(楽曲)がある。余分なものを削ぎ落としていきたかったんですよね。

-となると、バンドというより一種のプロジェクトですよね。

n-buna:そうですね。僕の理想としてはヨルシカというひとつの概念の下にいろいろな作品があるっていうイメージなんです。そうやってヨルシカの作品がどんどん独り歩きして成長していってくれたら嬉しいです。

-じゃあ、バックの演奏はサポート・メンバーですか?

n-buna:レコーディングには、ライヴのときに関わってくれたベーシスト、ドラマー、ギタリストに参加してもらいました。やっぱりいままでの打ち込み主体だと人間的な表現とは合わないので。ドラムとベースも人間が演奏することでグルーヴが生まれるから、そこにヴォーカルの声が乗ることによって、人間的な部分を強調したいと思ったんです。

-なるほど。今回のミニ・アルバム『夏草が邪魔をする』を聴かせてもらうと、まるで物語を読んでるような作品だなと思いました。

n-buna:まさにそういう作品を作りたいと思ってたのでよかったです。

-まずアルバムを作るにあたって、そこが大きなコンセプトだったんですか?

n-buna:そうですね。最初から"夏草が邪魔をする"っていうタイトルのアルバムを作りたいっていうのはあって。夏の風景みたいなものから想像を膨らませていきました。僕の場合、作品の作り方としてひとつの風景を思い浮かべて、そこから発想を広げていくんです。

-"夏草が邪魔をする"っていうタイトルのアルバムを作りたい......というのは、もう少し具体的に言うと、どういうイメージだったんですか?

n-buna:テーマは夏なんですけど、例えば海辺でみんなが楽しげにしてるっていう感じじゃないんですよね。僕が作りたい夏っていうのは、純粋にきれいなものだけではなく、ちょっと陰のある景色なんです。はっきり目に見えるものだけじゃなくて、何か邪魔をしてるものがある、みたいな。それを今回は夏草に喩えて。いろいろな草があって、その向こうがなかなか見えない。それを見えなくするのは自分自身の中のものなのか、外的な要因なのか、純粋な風景なのかはわからないんですけど。そういうイメージです。

-"夏"っていうのはn-bunaさんのソロ作品でもよくテーマに掲げてますよね?

n-buna:夏が一番好きなんですよね。昔のことを思い出すのが夏なんです。

-作品には死の匂いも表現されてますけど、この季節に身近な人が亡くなったりしたんですか?

n-buna:そういうわけではないんですけど......死生観みたいなものを表現するのが好きなんですよね。それに関しては、僕はそういう作品が好きなんだと思います。

-アルバムは中盤のインスト曲「飛行」(Track.5)を挟んで、楽曲の視点が"生きている人"と"死んでしまった人"というふうに入れ替わりますよね。

n-buna:3曲目の「言って。」と7曲目の「雲と幽霊」は対比になってますね。

-この構想も最初からあったんですか?

n-buna:そうですね。『夏草が邪魔をする』っていうアルバムを作るにあたって、1曲目はインストで始まって、2曲目、3曲目にロック・チューンがあって、そのあとのインストで落ちて、それは静かながらも結構感情的に盛り上がる曲で、最後は切なくなるような曲で終わる7曲にしようっていう流れは考えてたんです。

-その頭の中にある完成予定図みたいなものに沿って曲を作っていくというか。

n-buna:はい。なので、アルバムの流れありきの曲ですね。

-レコーディングするうえで、suisさんにもそういう構想は伝えるんですか?

suis:いや、全然そういう話はなかったですね(笑)。

n-buna:僕は勝手に作るタイプなので。

suis:アルバムが完成するまでは、アルバム全体を通してのストーリーは私の中にはなかったんです。だからそこはn-buna君には悪いんですけど、1曲1曲で主人公が全員違うっていうイメージで歌ってるんです。

n-buna:逆にそれがいいと思うんですよ。僕が思ってるストーリーとか雰囲気を全部伝えてしまうと、無駄に感情移入しすぎてしまうというか。ヴォーカルはそのまま感じるように歌ってもらって、1曲1曲が単体で完成してる方がいいと思ったんです。